AWC 代償   第二部 17    リーベルG


        
#4094/5495 長編
★タイトル (FJM     )  97/ 8/17   0:20  (173)
代償   第二部 17    リーベルG
★内容

                17

 短い眠りから目覚めた途端、志穂は激しい飢餓に襲われ、思わずうめき声を洩
らした。喉もからからだったが、それ以上に飢えの方が切実だった。
 よろよろと上半身を起こすと、鉄格子の前に紙コップが置いてあるのが見えた。
志穂は這うようにそちらに進むと、紙コップをつかんで中身をのぞきこんだ。麦
茶の匂いがした。
 急いで口をつけると、ぐっと一息で飲み干した。毒か何か入っているかもしれ
ない、と躊躇したのは、ほんの一瞬だった。たとえ入っていたのが泥水だったと
しても飲んでしまっただろう。だがそれは、生ぬるくはなっていたが、ありふれ
た麦茶だった。
 ふうっとため息をついた志穂は、食べ物を探し始め、そして愕然となった。自
分が今感じている飢餓が、消化器系のそれではないことに気付いたのだ。
 身体ががたがた震えていた。周囲の空気は湿度が多く蒸し暑いというのに。
 さっきのあれだ。志穂は恐怖とともに記憶を甦らせた。麻薬の禁断症状なんだ。
あたしは本当に覚醒剤中毒なんだ。
 身体中がむず痒くなっている。まるで無数の蟻が全身にたかっているようだ。
いつのまにか両手をブラウスの下にもぐりこませて、背中や腹をぼりぼりと掻き
むしっている。手を離そうとするが、意志の力が身体に届いていない。
 全身の細胞がきしんでいる。血球のひとつひとつが叫んでいる。筋肉繊維が一
本ずつ切れる音が聞こえる。
 このままだと……志穂の脳裏に鮮烈な恐怖が焼き付いた。このままだと、あた
しの身体は少しずつ腐っていく。腐って、肌が土色になって、ウジがわき、ぼろ
ぼろと崩れてしまう。鼻がもげ、目が白い尾を引きながら落ちる。乳房はしぼみ
全身がしわくちゃになってしまう。
 志穂は絶叫した。
 床を転げ回りながら絶叫した。
 身体が床や壁にぶつかるたびに、数倍に増幅された苦痛が襲いかかった。
 先ほどの決心はきれいに消滅していた。この苦しみを止めてくれるのなら、た
とえ悪魔に魂を売っても構わないとさえ思った。一回分の薬と引き替えなら、百
人の男にでも身体を投げ出しても後悔しないだろう。
「苦しそうね、天野さん」
 静かな声が耳に届き、志穂は死に物狂いでそちらに這い寄った。
「ちょうだい!」鉄格子をつかんで叫ぶ。「お願い!ちょうだい!薬をちょうだ
い!」
「残念だけど私は持ってないのよ」由希が言った。「だけど、あっちの人たちが
持ってるそうよ。お願いしてみたら?」
「お願い!薬、ちょうだい!」
 スキンヘッドの男が近づいてきた。にやにや笑いながら、手に持った注射器を
掲げてみせる。
「こいつが欲しいのか?」
「お願い!」志穂は喉をかきむしった。「お願い!死にそうなの!」
「先にこいつをしゃぶりなよ。そうしたらやるぜ。いくらでもな」
 言葉とともに、そそり立った男根が格子の間から突き出された。
 数時間前だったら、それに唾でも吐きかけて侮蔑の言葉を投げただろう。今は
違った。
 志穂は躊躇うことなく膝をつくと、それを口いっぱいに頬張った。必死で舌を
動かし、熱い肉棒を口の中で転がす。
「ふうー」スキンヘッドは満足そうに呻いた。「うまいじゃねえか。ほら、もっ
と舌使え。先っちょをぺろぺろ舐めるんだよ。アイスみたいにな」
 言われた通りに奉仕しながら、志穂は禁断症状による苦痛の呻き声を洩らした。
それに呼応するように、スキンヘッドが腰を動かし始めた。
「ふう、ふう。いいぞ、いいぞ。いくぞ。口の中に出すから全部飲めよ。一滴で
もこぼしたら、シャブやらねえからな。いいな?いっぱい出してやるからな。お
とついからずっと溜めてたやつをやるぞ」
 スキンヘッドが志穂の頭を鷲掴みにした。志穂が思わず顔をしかめた瞬間、口
の中に驚くほど大量の熱い液体がほとばしった。異臭を放つどろりとした精液が
喉に流れ込む。
 一部が気管に入り、たちまち呼吸器の反発作用が起こった。白濁した液体をま
き散らしながら、志穂は激しく咳き込んだ。
「このばかやろう!」スキンヘッドが怒鳴った。「かかったじゃねえか!ちゃん
と飲めって言っただろうが!」
 志穂は返事をするどころではなかったが、口を押さえながら怯えた表情でスキ
ンヘッドを見た。男の暴力的な声や態度に怯えたのではない。薬をもらえないの
ではないか、という恐怖が、他の全てを上回っていた。
「お?どうしてくれんだよ!」
「ご、ごめんなさい」志穂は涙を流した。「許してください」
「おれの身体にかかったじゃねえか。わざとやったんだろう」
「ちがいます。ごめんなさい。お願いします。許してください」
「悪いと思ってるのか?」
「はい」
「じゃあ、おれの身体をきれいにしろ」スキンヘッドは尊大に命じた。「お前の
口で舐めるんだ」
 スキンヘッドが合図すると、田辺が進み出て、鉄格子の扉を開いた。
「早く出てこいよ」
 志穂は外に出た。解放感などは全く感じない。
 スキンヘッドはソファにごろりと横になった。一物はまだ屹立したままである。
自らが放った精液がぬらぬらと光っている。
「ほら舐めろ。きれいにしないとやらないぞ」
 志穂はソファの脇に膝をつくと、再びスキンヘッドの男根を口に含んだ。むっ
とするような匂いが鼻を襲い、嘔吐がこみあげてくるが、覚醒剤のもたらす禁断
症状を超えるほどではなかった。
「一滴残らず舐めろよ」
 舌でどろどろした精液をすくい取るという、正気ならば耐えられないような作
業を強制される恥辱に、新たな涙がこぼれ落ちる。だが、死にたいほどの屈辱だ
とは思わなかった。熱心にやればそれだけ早く薬がもらえる。その思いがあらゆ
る感情に打ち勝っていた。
「ほらこぼすんじゃねえ」
 スキンヘッドが志穂の髪をつかんで揺すぶった。志穂は音を立てて舐め取った
精液を吸った。

 由希と他の男たちは、それぞれの表情でその光景を眺めていた。
 克也はどこか醒めた目で、タバコをゆっくりふかしていた。少女の恥辱よりも、
だらしなく広がったスキンヘッドの方にうんざりしているようだ。
 田辺はにやにやしながら、缶ピールを飲んでいた。志穂の苦しみなど全く意に
介していない。
 他の二人の男は、少し前まで次の順番をじゃんけんで決めていたが、今はどの
ように志穂の身体を弄ぶかという内容を話し合っている。
 そして由希は、涙と精液で汚れた志穂の顔から、片時も視線を外そうとしなか
った。志穂の苦痛の全ての瞬間を心に焼き付けておこうとするように。由希の顔
に刻まれた様々な表情の断片は、もしかしたら由希が志穂に負けないぐらいの苦
しみを味わっているかもしれないことを暗示していた。
 克也がタバコを灰皿でもみ消すと、小声で由希に呼びかけた。
「由希さん、大丈夫か?」
「ええ」
 返した言葉は短く素っ気なかった。そして由希は見つめ続けた。

 ようやく男の身体がきれいになったとき、志穂は疲労困憊の極にあった。肩ど
ころか全身で呼吸をしており、かすんだ目にはほとんど何も映っていなかった。
禁断症状による人格が崩壊しそうな苦痛だけが鮮明だった。
「お、おねが……い」志穂は喘ぎながらかろうじて声を絞り出した。「クスリち
ょう……だい」
「さあてどうしようかなあ」スキンヘッドはにやにやと応じた。「おい、どうし
たらいいと思う?」
 男たちの誰かが何かを答えたらしいが、志穂はその内容を理解するどころでは
なかった。それが否定でないことを全身全霊で祈るだけだった。
「しょうがねえな。ほらよ」
 目の前に注射器が差し出された。
 志穂は悲鳴のような声をあげながら、それをつかんだ。
「自分で打ちな」
 注射器を落とさないようにするだけで、全力を傾注しなければならなかった。
時々、意識が瞬断しそうになるんを必死で引き留める。
 どこに打てばいいのかを、時間をかけて探っている時間はなかった。志穂は、
握りしめた注射器の針を叩きつけるように腕に突き立てると、ぐっとピストンを
押し込んだ。
 効果は数秒で現れた。
 あれほどの苦痛が拭い去られたように、きれいに消滅した。それどころか、性
的なそれに近い爽快感が全身を駆け抜けた。霞がかかっていた頭はすっきりし、
全身の感覚が研ぎ澄まされている。
 だが、歓喜のすぐ後に、自分の行為の記憶が甦り、志穂は唐突に激しい嘔吐を
感じて口を押さえた。
「次はおれの番だぜ、ねえちゃん」
 横からの声とともに、志穂の身体は乱暴にソファに押し倒された。パンチパー
マの男がのしかかっている。
「いや、やめて!」
 志穂はもがいたが、男は手慣れた様子で志穂の抵抗を封じると、ブラウスを引
き裂いた。
「おい、手もってろよ」
「さっさとやれよ」志穂の両手をつかんだ入れ墨男が言った。「後がつかえてる
んだからよ」
「ばか。せっかく冷たいやつ効いてるんだぜ。じっくりやってやらなきゃ可哀想
だろうが」
 志穂は悲鳴をあげた。男たちは構わず志穂の身体をむさぼりはじめた。


 牢に戻された志穂は、崩れるように床に寝転がった。扉が閉まる音に続いて、
パンか何かが入っているらしいコンビニの袋が投げ込まれたが、そちらを見る気
力もなかった。
 志穂の身体は5時間以上にわたって、順番に男たちに弄ばれた。抵抗を諦めた
後、志穂はできるだけ無反応を通して、相手を失望させてやろうと試みた。しか
し覚醒剤のせいで全身が鋭敏になっていたため、その試みは長くは続かなかった。
 意に反して唇の隙間から洩れる官能の喘ぎ声は、志穂の屈辱感を倍増させ、そ
れ以上に絶望感を与えた。自分がとてつもなく淫乱になったようで悔しかった。
男たちは、その志穂の恥辱を充分に承知しているらしく、わざと行為を長引かせ
ては、何度も絶頂に達する志穂を嘲笑った。
 軽い足音が響き、由希の声が聞こえた。
「ずいぶん楽しんだみたいねえ。もっと苦しんでもらいたかったのに。やっぱり
男の身体に慣れてる子は違うわね。藤澤美奈代はやられたとき処女だったのに」
「変態……」志穂はかろうじて唇を動かして声を出した。「しんじまえ」
「まだ元気ね。いつまで続くか楽しみだわ」
「殺してやる……殺してやる!」
「今に殺してくれって哀願するようになるわよ」見なくても由希が嘲笑している
のはわかった。「そうなったときに、今の言葉を思い出すのね」
「あっちいってよ……」
「退屈だろうと思ってね。あんたにこれを読んであげるわ」
 志穂はのろのろと由希の方を見た。由希は古ぼけたノートを持っていた。
「加代の日記よ。あの子が自殺したとき、警察には隠しておいたのよ。あの子が
どんなに苦しんだかを、あんたにも知ってもらいたいのよ」
 由希は椅子に座ると、ノートをめくった。
「このあたりがいいわね。9月12日木曜日晴れ。とても悲しいできごとがあっ
た……」





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