#3601/5495 長編
★タイトル (BYB ) 96/12/13 21:19 ( 79)
雪原のワルキューレ48 つきかげ
★内容
動いた。礼拝堂の清浄な青ざめた光の中で、動く闇のような鋼の巨人が巨大な剣を振り
上げる。
風を巻き起こし、巨大な剣がフレヤの目の前を走った。フレヤは上体を僅かに後ろへ
反らし、その剣をかわす。風が、黄金色に輝くフレヤの髪を揺らせた。冬の青空のよう
な青い瞳を悽愴に輝かせながら、フレヤは再び剣を抜く。凍り付くように冷たく輝く鋼
の剣を、高々と掲げ、美貌の巨人は闇色の機動甲冑と対峙した。
動きだした暗黒のような鋼の巨人は、フレヤと同じように上段に剣を構えようとする
。しかし、上段の構えをとる前に、フレヤは無造作にジゼルの間合いの中へと踏み込ん
でいた。
冬の日差しのように冷たく輝く鋼の刃が、風を起こし振り降ろされる。ジゼルは躱し
きれぬと知り、自らの剣でフレヤの剣を受けようとした。
キン、と甲高い音を立て、ジゼルの剣はへし折れる。そのままフレヤの剣は闇を切り
裂く光のように、漆黒の甲冑を縦に切った。
前面を二つに断ち割られた黒い甲冑は、背後に倒れる。ジゼルは機動甲冑の中で絶命
した。フレヤは優しく微笑む。
裁きを下し終えた大天使のように、白衣の巨人は漆黒の鋼の巨人の上に立ち尽くす。
礼拝堂の蒼ざめた光は、サファイアのようにフレヤの瞳を輝かせた。復讐を終えた巨人
は、そっとその瞳を閉ざし、瞑目する。死者の魂を冥界へ送る戦場乙女ワルキューレの
ように。
ブラックソウルは、ヴェリンダの背後で言った。
「道を作れ、ヴェリンダ」
魔族の女王は、漆黒の手をあげエキドナに向かって翳す。白い光の道が、ヴェリンダ
の手からエキドナの背のドルーズの額に向かって走った。
それを見届けたブラックソウルの左手が、ふっと揺れる。その瞬間、紅い血を閉じこ
めたような闇の色の水晶剣が、白い光を裂いて飛んだ。
ドルーズの白い額が割れ、鮮血に染まる。エキドナが、空間が軋むような叫びを上げ
た。凶星が天空に出現したかのような光が、エキドナを包む。
光が消え去った後に、黒衣の魔導師と分離した竜の女王の姿があった。エキドナは若
い獣のように身を捩らせ宙を舞い、高々と叫んぶ。
「自由だ、私は自由だ!」
ドルーズは頭部を斬られ、地面に横たわっている。エキドナは笑い、叫んだ。「嬢ち
ゃん、礼を言うよ。すべての契約は終わり、私は自由の身となった。私は帰る。我が故
郷へ」
ヴェリンダは慈母のような笑みを浮かべ、頷く。
「お前を縛っていた、呪縛の魔法の施行者は死んだ。行くがいい、竜の女王」
エキドナは身を踊らせ、地面に開いた宇宙へ向かい、飛び込んでいった。足元に開い
ていた輝く光の渦は消え、異界への扉は再び閉ざされる。後には影のように横たわる、
ドルーズの死体だけが残った。
死者と化したドルーズの血塗れの頭が、すっと持ち上がる。ドルーズの死体が立ち上
がった。ブラックソウルが、静かに語りかける。
「あんたは死者だった。最初からね。あんたは死人となっても尚、世界を破壊しようと
する程、この世界を憎んでいた。しかし、エキドナが帰った今、あんたに力は残ってい
ない」
ドルーズの死体は、無言で立ち尽くしている。虚空に穿たれた黒い穴のような瞳が、
呆然とブラックソウルを見つめていた。
「冥界へいくがいい。多分あんたの憎しみより、おれの憎しみのほうが大きかった。そ
ういうことだよ、ドルーズ殿」
ドルーズの死体の顔に、笑みのようなものが浮かんだ。そのまま死体は崩れ落ちる。
今度は、動かなかった。
ブラックソウルは気配を感じ振り向く。そこには白衣の巨人、フレヤが立っている。
その傍らには、死神のような黒衣に身をつ