#3599/5495 長編
★タイトル (BYB ) 96/12/13 21:17 ( 73)
雪原のワルキューレ46 つきかげ
★内容
クソウル達を包む。光は、目に見えぬ鏡に反射したように、弾け飛んだ。
魔族の女王、ヴェリンダ・ヴェックが一歩踏み出す。その漆黒の美貌には、古の宮廷
画家が描いた肖像画の美女のような、気高く穏やかな笑みが浮かべられている。
「そなたごときにできることが、魔族の主にできぬと思っているのか、家畜の魔導師」
「そこまで慢心してはいませんよ、魔族の支配者」
ドルーズは、楽しげに言った。
「どうやら、あなた方を殺す理由ができたようだ」
そして、黒い竜の翼が、ドルーズの背に出現した。夜明けの太陽を覆う暗雲のように
、黒い翼がドルーズの背後に広がる。巨大な蛇のような尾が、床で身を捩らた。最後に
、黒衣の下から銀色の髪の女の頭部が、姿を現わす。堂々たる威厳を持った竜族の主が
ドルーズの体内から出現した。
ドルーズが眠りに落ちる乙女のようにそっと瞳を閉じた時、神々を相手にする高級娼
婦のような美貌のエキドナが目を見開く。
「久しぶりだな、ヴェリンダ嬢や」
竜族の女王が魔族の女王に、挨拶を送った。闇の波動が、礼拝堂の空気を揺らす。天
使達が死に絶えた夜に地上へ降り注いだ月の光のように、銀色に輝く髪をゆらせ、エキ
ドナは笑った。
「可愛い旦那を見つけたようだな、嬢ちゃん」
「そしてあなたは、家畜の使い魔?お互い変わったものね、老いたる竜よ」
エキドナは、艶かしく笑った。
「まず、あんたの愛しい旦那を味あわせてもらうよ。とっても旨そうだね、あんたの旦
那は」
夜明けの太陽が夜の闇を引き裂くように、ヴェリンダの黄金の瞳が輝いた。
「竜よ、おまえが本来属していた世界へ帰るがいい!」
エキドナの足元に、光の渦が出現した。光年の彼方に横たわる真白き銀河の渦のよう
に、異次元への扉が礼拝堂の床に広がる。
エキドナは巨大な翼を羽ばたかせ、足元に広がった宇宙の上を飛ぶ。エキドナはした
たかな街娼のように、笑った。
「嬢ちゃんにできるかい?私を消し去るなど」
聖なる乙女のように神々しい笑みを浮かべた、黒い膚の女王が答えた。
「魔族が呼びだした竜を、呼びだした元へ返すだけ。たやすい話よ」
目に見えぬ力が、二人を包む。その戦いは、互角に見えた。
ケインは、右手でエルフの絹糸を操っている。ケインとその胴につかまったジークは
、ゆっくりとナイトフレイム宮殿の吹き抜けの底へと向かっていた。
あたかも魔界の海底へと沈んでいくように、邪悪な瘴気は力を増していく。二人は邪
神の住処と言われる、吹き抜けの底へと辿りついた。
そこは巨大な縦穴の底であり、二人は大きな砲身の底へ入り込んだように感じる。足
元には幾重にも、なんらかの魔法に関係していると思われる、巨大な円形の模様が描か
れていた。
「ねえ、」ジークは、その円の中心を指さした。そこには、黄金に輝く像が置かれてい
る。
「あれじゃないの、この宮殿のお宝っていうのは」
二人はそのゴラースの神像らしい、半神半獣の金の像へと近づく。黄金の像は人間の
頭くらいの大きさで、台の上に置かれている。その緻密な細工で造られた彫像は、本当
に動きだしそうに見えるほどリアルであった。
「高く売れそうだな」
ケインは、にっこり笑った。苦労した甲斐も、あったというものだ。その神像であれ
ば、城をひとつ買えるくらいの値段で、売れそうな気がした。
「どれ」ケインが慌てて止める前に、無造作にジークが手を伸ばして神像を手に取った
。
「馬鹿、この手のものには、大抵罠がしかけてあって」