#3598/5495 長編
★タイトル (BYB ) 96/12/13 21:15 ( 77)
雪原のワルキューレ45 つきかげ
★内容
鋼の巨人達は、光を受けその姿が霞み始める。異界への扉が開こうとしていた。
ドルーズはその様を、嘲るような笑みを浮かべて見ている。再びドルーズの手が天を
指し、振り降ろされた。六つ目の光の球が、クラウスの眼前に出現する。
「おおっ」
クラウスは咆哮した。白い光が弾け、闇を纏ったような黒い鋼の巨人が姿を現す。
漆黒の巨人を目の前にし、クラウスは最後の力を振り絞った。空間が歪み、無限に変
化していく光の渦が巻き起こる。漆黒の巨人は、光の渦を断ち切るように、巨大な鋼の
剣を振るった。
黄金に輝く髪を頂いたクラウスの頭が、地に墜ちる。輝く月が、黒い太陽の前で地の
底へと沈んでいくように。
潮が退くように、張りつめていた緊張が解かれた。空間に満ちていたエネルギーは、
すでに消えている。聖拝堂には、元の静寂が戻った。
鋼の巨人達は、フレヤのほうを向く。白衣のフレヤは、剣を抜いた。漆黒の巨大な甲
冑の前面が開き、人間の女が姿を現す。ジゼルであった。ジゼルは荒野を駆ける獣のよ
うに気高い瞳で、フレヤを見る。
「女トロール、お前を見せ物小屋に送るのは諦めた。ここで殺してやるよ」
「機動甲冑とは、呆れたものを持ち出したな、虫けらの女王」
機動甲冑は、それ自体が亜生命体である。鉄の表皮を持つ、ある種の甲虫が巨大に進
化した姿であった。それは、古の王国の秘技が産みだした、古代兵器である。
四百年前の、暗黒王ガルンの侵攻により、王国が崩壊した為、古代の秘技も失われて
しまった。しかし、古代兵器のいくつかは、オーラの武器庫に残っている。ジゼルの乗
っているのは、そうした物の一つであった。
人工進化により創り出された古代兵器は、自分自身の意志は持たず、乗り手の意志に
従うこととなる。その体内に持つ空洞に乗り手を納めた機動甲冑は、繊細な触手を乗り
手の体へ這わす。触手は乗り手の皮膚に溶け込み、その神経電流を機動甲冑へ伝える。
機動甲冑の脳は乗り手の意志を感じとり、あたかも乗り手の四肢のように自在に動くの
だ。
ジゼルは、夜を纏ったような黒衣で、漆黒の機動甲冑の中に収まっている。ジゼルは
、狼のように笑った。
「こんな大層なものは趣味に合わぬ、しかし、貴様と戦うには必要だからな」
フレヤは哄笑した。
「それで互角になったつもりか、矮小な体にはりぼてを纏った姿は滑稽なだけだぞ」
「すぐに黙らせてやるよ、女トロール」
黒い装甲が降り、ジゼルは再び機動甲冑の中へと戻った。青灰色の鋼の巨人達が、フ
レヤを囲む。フレヤは楽しげに微笑んだ。
「お前をここで殺せるとは、礼を言いたくなる程だよ、虫の女王」
ジゼル達の動きを無視し、ブラックソウルはドルーズへ近づく。その後ろには、影の
ようにヴェリンダが従っている。
「ゴラースを、物質転送装置として操るか。見事だな、ドルーズ殿。あんたは確かにラ
フレール以来の天才だよ」
黒衣の魔導師は、白い美貌を満足げに歪め、優雅に一礼した。
「この物質転送装置を使えば、オーラの水晶塔に武装兵団を転送することも可能。王国
を再び混乱の時代へ逆行させることも、たやすい。あんたとジゼルの望みはそういうこ
とだろう、ドルーズ殿」
ドルーズは無言である。ブラックソウルは、困ったように笑う。
「余計な仕事が、増えてしまったな。おれは、あんたを見くびっていたよ。しかし、あ
んたは殺さなくてはならないようだ」
「あなたの闇水晶の剣は、私の体に届きませんよ」
ドルーズは、優しく言った。
「おれ達を、どこかへ転送してしまうこともできるわけだな。おれが、あんたを殺す前
に。だがな」
ブラックソウルは、仄昏い笑みを見せた。
「本当にできると思うか?」
言い終えると同時に、目映い光がブラッ