AWC 雪原のワルキューレ43     つきかげ


        
#3596/5495 長編
★タイトル (BYB     )  96/12/13  21:13  ( 76)
雪原のワルキューレ43     つきかげ
★内容
す。そこにいる者は、すべてクラウスに注目していた。
「黄金の林檎は何百億年も昔に、地上へもたらされた。あれは星船の動力源として使用

されていたが、元々は死の神サトスによって殺された、神々の母なる女神フライア神の

心臓だ」
  クラウスは、ロキに微笑みかける。
「このことの意味は、ロキ殿そなたが一番よく、ご存知であろう」
「そうだ。フライア神は、生命を育み、進化させる力を持つ」ロキは聖地で祈りを捧げ

る、修験者のように静かに語った。
「その心臓が地上にもたらされたということは、地上に過剰な生命を育む力が、もたら

されたということだ。すべての生命現象は加速され、破綻していく」
「違う」クラウスは、重々しく言った。
「生命というものが、そもそもこの宇宙では異形の破綻した存在なのだ」
  クラウスは静かな怒りを秘めた目で、ロキを見る。
「ヌース教の教義では、そうなっているはず」
「否定はしない」ロキは、冷たい瞳でクラウスを見る。
「生命現象は、我々魔族も、人間も、あらゆる動物、植物も含め、宇宙の神聖な調和を

乱す存在なのだ。グーヌ神が神々の定めに逆らい、黄金の林檎を地上へ持ち込んだがゆ

えに、生命は産まれた。この呪われた存在である生命を否定し抹殺しようとするのが、

ヌース教であり、その生命を地上にもたらす源である黄金の林檎を天上へ、正確には金

星にある次元牢の中へ戻すのが、ヌース神により人間に与えられた使命」
「黄金の林檎は危険だ」
  ロキが静かに言う。クラウスは、首を振った。
「そなたの役割は、神々の定めによるもの。私はそなたに協力を惜しまぬつもりだ。誤

解されるな。しかし、当の人間であるラフレールは迷っていたのだ。地上から黄金の林

檎を持ち去れば、総ての生命は死滅すると知っていたからな」
  クラウスは苦笑した。
「ラフレールはこう言った。この黄金の林檎を私に預かってもらえぬかとな。できうれ

ば、永遠にと」
「しかし、」ロキが言った。「断ったのだな」
  クラウスは、あざ笑った。
「できるわけが、無い。天使達が殺戮をもたらす為に、天上から降りてきた、あのヌー

ス神とグーヌ神の戦争、あれをもう一度起こせというのか」
  クラウスは首を振った。
「私はガルンほど、狂気にとりつかれてはいないよ。ガルンが助力を求めた時に断った

ように、ラフレールの申し出も断った。黄金の林檎を天上に返すか否かは、人間が決め

ることだ。私が受け取れば、ヌース神とグーヌ神の取り交わした約定に逆らうことにな

る」
  クラウスは金色に燃える瞳で、ブラックソウルを見た。
「もし、貴様ら人間が、真に考えるという行為を行ったなら、必ずラフレールと同じ苦

悩に行き着くはずだ。にも関わらず、おまえ達は愚鈍にヌース神の教えに従うばかりだ

。だから家畜でしかないんだよ、おまえ達は」
  ブラックソウルは、肩を竦める。
「我々にとって、どうでもいいことなのだよ、生命の死滅など。黄金の林檎を天上に返

すのが、何千年先になるかは判らないが、その時に少なくともおれは、生きてはいない

からな。我々に必要なのは、大義だ。ヌース神は、それを与えた。宇宙の神聖な調和を

取り戻すという、大義をね」
  クラウスは、ヴェリンダを見る。
「この者の言う通りだ。人間は、瞬くような短い生を生きる。この者たちと我々魔族が

共に暮らすなど不可能です」
  クラウスの目には、哀しみがあった。
「人間の世界を、ご覧になるといい。まるで病に侵され、肉体が崩壊してゆく動物のよ

うに、一時たりとも同じ姿をとどめることが無い。狂気のスピードにとりつかれ、無限

の変化と生成を行ってゆく。あなたは、




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