AWC 雪原のワルキューレ7     つきかげ


        
#3560/5495 長編
★タイトル (BYB     )  96/12/13  19:34  ( 78)
雪原のワルキューレ7     つきかげ
★内容
ない澄んだ青い瞳をみると、ケインは怒る気を無くした。
「お前が言ったように話はつけて来たぞ、ジーク。明日の正午、黒い炎団の首領は俺た

ちと会う」
「で、そいつは間違いなく、ナイトフレイム宮殿への入り口を、知ってるんだろうな」

「会って話してみないと、判らん。こっちが信用していない以上に、向こうはこっちを

信用していない」
「むふう」
  ジークは溜息をついた。
「ラハンの弟子が、話をしたいと言ったんだろ」
「こっちのほうじゃ、そのラハンいう武闘家は有名らしいが、看板だけじゃ信用されん

だろう」
「まあ、いい、明日になったら判らしてやるよ、あ、おねぇちゃん、鳥の丸焼き追加ね

」そう言うと、ジークは酒の壷から杯を満たし、さらに酒をあおった。
  明日になったら、その丸い胴が倍に膨れて、肉団子と化してるんじゃねぇか、お前は

と、ケインは言いたかったが、黙って目を逸らした。
「そのナイトフレイムに宝物があるというのは、間違いないんだろうな、ジーク」
「大丈夫だよ、ケイン」
「言っておくが、今のペースでお前が喰い続ければ、あと2日で俺たちは文無しだぜ」

  ジークは一瞬目を丸くして、その後ゲラゲラ笑いだした。
「そんな心配してんのぉ、馬鹿だなぁケイン。そうなったら、そのへんで強盗やりゃあ

いいじゃん」
(こいつ)ケインは、心の中で呟いた。(初めて会ったころは、元王子だとか、実は高

貴の生まれだとかぬかしやがったが、俺よりたちが悪いぜ)
  ケインの思いを知ってか知らずか、ジークは天使のように穏やかな笑みをみせた。
「これ旨いぜ、ケイン。喰ってみろよ」

  空は、黒々と頭上に広がっており、幾万もの海獣の群れに覆いつくされているかのよ

うだ。陽が沈んだのち、半ば氷ついた、銀の矢のような雨が降り始めた。
  ジゼルの城の、北側は山が聳えており、南にゴーラの町が開けている。そして東西は

、切り立った崖となっていた。
  西の空に、生新しい傷口のような残照が消えていったころ、幾千の刃のような雨を含

んだ風が吹き荒れ、嵐となった。ジゼルの城の西側の崖には、牢獄が造られている。城

の地下から、隘路を辿って下るしか行き着くすべのない牢獄であった。
  その崖をくり貫いて造られた牢獄のひとつに、明かりが灯っている。そこには当直の

兵が二人いた。食事の終わった後、当直兵の一人であるジーンは、荒れた天気の外を眺

めている。
  相棒のもう一人は今夜の宿直に備え、仮眠を奥でとっていた。この牢獄に捕らわれて

いる囚人の事を考えると、安らかな眠りを得られるとは思えない。
  ジーンは壁に立てかけられている、剣を見た。その剣は、この牢獄の囚人の持ち物で

ある。ドワーフの細工であるらしく、2メートル以上ある剣の刀身は、繊細といってい

いほど肌理が細かい。剣は抜き身の状態で置かれており、刀刃が真冬の日差しのごとく

、冴えた煌めきを見せている。
  その剣を見るジーンの瞳には、脅えがあった。その剣は、鋼鉄のメイスに近いものが

あり、巨大な鉄材のように頑丈そうである。それだけに、その重量は凄まじいものがあ

り、ここに持ち込まれる時も、三人がかりであった。
  その切っ先には刃はなく平になっており、、ツーハンデッドソードによくあるように

、剣の先端部の幅が少し広くなり、戦斧を思わす形になっている。この巨大で重い剣を

、この牢獄の囚人は片手で振り回し、鎧を身につけた屈強の兵士を紙人形のように、斬

り裂いたと聞いた。
  そんな技ができる巨人となると、お伽話のオーガや、神話の雷神トールのような怪物

ということになる。ジーンはその女巨人を直接見てはいなかったが、その姿を想像し、

ぞっとした。男のオーガや、トロール




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