#3425/5495 長編
★タイトル (XVB ) 96/ 9/17 19:32 ( 97)
月狂いの夜3 $フィン
★内容
彼女は精神派月狂いでした。彼女はおれといて気が緩んだのでしょう。ついうっか
り満月の夜におれの前でルナ力を使ってしまったのです。彼女はわざとおれの前でル
ナ力を見せたと云うのですか。ははは・・・そんな馬鹿なことあるものですか。彼女
はたまたま偶然にルナ力を使ったところをおれに見られてしまったのです。馬鹿な女
です。彼女はおれにルナ力をみせつけて何をさせようとしたのです? 何も得るもの
なんてありません。おれが月狂いを見逃すとでも思っていたのでしゅうか。それとも
彼女は何か魂胆があってのことだと云うのですか。
彼女はおれにルナ力を見せたのは訳がある。わからないのかって、おれにはわかり
ません。彼女がおれの前であんなものを見せるつもりになったのか。おれは彼女のル
ナ力を見たくなかった。彼女を殺したくなかった。
おれは即座に彼女の首を絞めました。あのとき少しでも抵抗してさえいれば、おれ
は彼女を逃がしていたでしょう。でも彼女は抵抗しなかった。おれの手の中で死んで
いく彼女は信じられぬほど哀しい眼でおれをみつめていました。最後まで、何かを訴
えかける眼でおれを見ていました。・・・やめましょう、こんなうっとおしい話は。
そうです。マスタ−の云うとおりです。おれは対月狂い用の兵器です。おれが最初
に殺した月狂いが彼女です。それがどうしたと云うのです。彼女はいつか死ぬべき運
命にあった月狂いなのですよ。おれでなくてもいつかは政府にばれてしまいます。び
くびくと北の僻地で怯えて暮らしていくよりは、ばっさり処分されてしまった方がい
いと思います。
月狂いは死ななければなりません。彼女は月狂いです。おれは月狂いを見逃すこと
ができなかった。だからおれは彼女を殺した。それでいいじゃないですか。
おれのどこが間違っているのです。悪いのは月狂いであった彼女なのです。
あ、悪い。またグラス割れちゃいました。おれの眼の前にグラス置いていただけな
のに、割れるなんて変ですね。
今度はマスターが話してくれる番ですね。おれの眼から涙が流れている? ははは
そんなことあるはずないじゃありませんか。おれが彼女のために泣いているのだって、
冗談いっちゃ困ります。
おれは月狂いを心底憎んでいます。月狂いさえいなければ、不幸なことは起こるこ
とがない。おれは月狂いを見つけしだい殺していきました。母親に抱かれている月狂
いの赤子もいました。おれはすがりつく母親を投げとばし、月狂いの赤子を踏み潰し
たこともあります。足で赤子の頭をぐしゃと潰したことがありますか。あれは溜まり
ませんよ。
月狂いは社会の害になる。彼らは大きくなるに従い、芽を摘み取ることが難しくな
る。だからどんな小さな芽でも踏みつぶさなければいけないのです。おれは政府から
そう教えられてきました。おれはそれを実行してきました。おれの手には血みどろの
月狂い、おれの足には月狂いの怨念が宿っています。たった一年のうちに数十人もの
精神派月狂いを狩り、葬ったおれがたった一人の月狂いのために涙を流せると思いま
すか。
それにこれはおれの涙じゃないです。これはおれの涙腺の調節が少し弱くなってい
るだけです。マスターともあろう人がわからないのですか。笑ってしまいますね。は
はは・・・
面白い話だったのに、マスターためいきなんてついてどうしたのです。マスターも
涙なんか流してどうしたのです。自分のことわかっているのかだって、おれわかって
いますよ。おれが今まで殺してきたのは月狂いです。おれは一つも法は破っていませ
ん。それどころか人間を脅かす月狂いを殺すことが正義なのです。正義のためにつく
しているおれのどこが悪いと云うのですか。
おれのどこがぜんぜんわかっていないと云うのです。失礼な。じゃ、マスターはお
れのことを云えるとでも? ほう、そうですか。おれと同じように一年前のルナ事件
でいなくなった友人がいると、その男がおれと何の関係があると云うのですか。黙っ
て聞いていろと云うのですか。いいでしょ。面白い、じゃあ話してください。
その友人は人間と月狂いとの共存を話し合うために、その友人はエリア8のロード
まで出掛けたのですね。馬鹿じゃないですかその男は。政府がそんなことぐらいで簡
単に、ルナティックたちならまだしも、月狂いを迎え入れるはずはないじゃないです
か。
わかっている? わかっているのなら、マスターはとめたのでしょうね。当然とめ
たのに友人は笑って少しの可能性でも賭けてみると云って出掛けてしまったのですか。
本当に馬鹿な男です。それで? その友人は戻ってきたのですか。戻ってこなかった。
どうしておれの顔見ているのです。気がつかないって何を。何をです? はっきり
云ってください。
ははは・・・面白い、これは面白い。ほんとに面白い、こんな面白い冗談初めて聞
きました。あなたの馬鹿な友人がこのおれだと云うのですか。そんなことあるはずな
いでしょう。
薄々おれが自分のこと感づいているから、これほどまでに否定するのだと・・・お
れは月狂いが嫌いなだけです。それじゃ何故それほどまでに月狂いを憎悪するのだと
・・・月狂いは死ぬべきです。不幸なのは人間の方・・・月狂いさえいなければ人間
は滅びることはない。
マスターやめろ、おれの深層に入ってくるな。これ以上入ってくるとおまえ死ぬぞ
やめろ、やめろと云っているのだ。
おれは・・・月狂い・・・そんなはずはない! おまえは騙されている。そうか、
こいつを誘い出すためここに月狂いがいるとタレ込んだのはおまえなのだな。もっと
早く気づくべきだった。悠長に月狂いの証拠を見つけだそうとしたのが間違いだった。
マスターもうやめてください。おれはもう駄目です。おれはたくさんの月狂いを殺
してきました。これ以上・・・月狂いは殺してしまえ!
マスターこれ以上入ってくると本当に死んでしまいます。おれの中から出ていって
ください。そうだ、おまえは出ていけ。出ていかないと本当に死ぬぞ。月狂いは死ぬ
べきだ。マスター死んではいけない。死んでしまうぞ。わはははは・・・死ね! 死
ね! 死ね! 月狂いはみんな死んでしまえ!
おれ思い出しました。
マスター? 生きてますよね。
ふぃん