AWC 私の邪魔をしないでよ!(3)     いっちゃん


        
#3298/5495 長編
★タイトル (PVN     )  96/ 6/ 3   6:27  (143)
私の邪魔をしないでよ!(3)     いっちゃん
★内容

三、ニニル、明日に散る・・・・・・
 
「姉さん――熱あるの?」
 ニニルは真剣に言ってから、抜けた声でシーラに聞く。シーラは前かが
みになり肩から長い髪がさらさらと前に流れ落ちる。そんな彼女の額に暖
かい手が置かれた。
「熱はないみたいだな」
 するとシーラは、顔を赤らめながら此方をじーっと見ている。
「うっ――ごめんっ、そ……そんな気はなかったんだぁ!! 
だか……らっ、えっ!?」
 シーラは、後ずさりしているニニルの手を素早く取る。その手を見てニ
ニルは赤面する。攻撃してこないなんてどうしたんだ、などと暢気に思い
ながらもシーラの顔に視線を移す。
「ニニル……ずっとこのままで、い・さ・せ・て」
「ねっ……姉さんっ!!」
 焦るニニルとは裏腹に、シーラは静かにニニルの胸の中で目をつぶる。
(……こんなことが……生きててよかったぁー!!)
 だーと涙を流しながらニニルは、シーラを抱きしめる。部屋の中に沈黙
が訪れる。お互いに幸せを噛みしめながら、抱きしめあう。
「ニニルさま――」
 シーラの腕がニニルの首に回る。
「えっ……」
 気がつくと、シーラの顔が真ん前にあった。どんどん顔が近づいてきて
いる。
――――ドワフゥッ!!
 突然、かまいたちが扉を切り裂く。一瞬にして扉は崩れ落ち、粉塵の落
ちきったあとに現れたのはミーオンだった。
彼女は、此方を見てひどく怒気で溢れていた。ニニルはぐっとシーラを抱
きしめ直す、真剣な面もちでミーオンを一直線に見ていた。
「間に合ったぁー、ちょっとぉ!! ミーオンっ! 
私の身体で何してるのよっ!!」
 そう叫ぶとミーオンは、ずかずかと部屋に入ってきて、二人を力づくで
引き離す。
「ミーオン何するんだよっ!! いいところだったのに……」
「そうですわっ!! もうすぐニニルさまと……」
激怒する二人を差し置いて、ミーオンは、わなわなと手を震わせながら此
方に詰め寄ってくる。そして、ニニルの鼻に細い指を突きつけ
「ニニル――絶縁よ……」
 相変わらず手を震わせながら、ミーオンは冷たく言う。それに対しニニ
ルは、シーラを抱きしめている両手のうち右手だけを使って髪をかき上げ
口を開く。
「それは、嬉しいね」
 心底嬉しそうな声をニニルは出した。
「ふーん……そんなこと言っていいのね」
 すぐに、ニニルは縦に首を振る。ミーオンは、何が嬉しいのかにこにこ
としている。
 シーラはニニルの顔をジーと見ていた。
「ニニルぅ、こんな女ほっといて早く続きを」
「あ……うん」
 二人はミーオンをお構いなしに元の体制に戻る。
「魔導砲!!」
 両手を突き出したミーオンは、ニニルに対して魔導を発動させる。
「ゲホッ! なっ! それは姉さんの魔導術……もしかして」
 ぼろぼろになったニニルは、ミーオンを指さし言う。彼女は両手を腰に
当てながら口を開く。ワザとニニルだけに当たるように魔導を発動させた
ようだ。
「気づいたみたいね」
「お前・・・・・・姉さんの術を盗んだなっ!!」
 すぐさまミーオンは、ずっこけ、ニニルを叩く。それからシーラを指さ
し、
「ニニル、そこのシーラは偽物よ」
 ミーオンの言っている意味が分からないニニルは、おろおろしている。
ミーオンはそれを見てから、嘆息して続ける。
「言い方が悪かったわ。つまりね、わたし……シーラとミーオンの精神
が入れ替わっちゃったのよっ!!」
「そんなの信じられないよ」
 ニニルがミーオンに対し疑いの眼差しを投げかける。
「そうよね。じゃあ、実行してあげるわっ!!」
 そう言うとミーオンは、ポケットあたりをごそごそと探り、茶色い小瓶
を取り出し此方に突き出す。シーラはそれを見て青白くなっている。
「さっ! これを飲んで」
 瓶の蓋に入れられた液体をニニルに渡し続ける。
「毒は入ってないわ」
 ニニルは、疑いの眼差しを全く変ない。ミーオンは無理矢理、鼻をつま
み液体を飲みほさせる。
うげっという声が部屋に響く。ミーオンもその液体を飲むと、小さくぶつ
ぶつと呪文らしきモノを唱える。ニニルは目の前が真っ白になり、たちま
ち二人のまわりを白い光が包む。
 白い光が消え、また二人はその場に立っている。
「わぁっ!」
 ミーオンは、自分のの身体をぺたぺた触りながら青ざめた。
「分かったでしょ! これでっ」
 ニニルは両手を腰に当てるとミーオンを見下ろした。ミーオンは、ニニ
ルを見上げながら、コクコクとうなずいた。
「さっ……ミーオン、わたしの身体返してもらうわよっ!」
 ミーオン(ニニルの精神が入っている)は、自分が女言葉使ってるのを
見て、喉あたりを押さえ、げっと声をあげる。
 シーラは、一歩後ずさると呆然とニニルを見つめ、
「ばれてしまっては仕方ありませんわ……次はあの薬を改造して、元に
戻れなくしてやりますわ」
 それを聞きニニルは、にこっと微笑みながら
「あっ、ちなみに地下室にあった研究室の資料すべて魔導銃で焼いたわ。
あなた資料がなければ、何にも出来ないって聞いたからね」
 シーラはそれを聞き、口を開こうとしたが、その前にニニルの声が先に
割り込む。
「ちょっとまった、それは『罪』にならないわ。なぜなら《魔術警察》
からの依頼なんだもの、ミーオンの研究書類は、すべて処分してくれって
ね。何か結構、あんた研究には《魔術警察》も対策組を作るぐらいに手間
取ってたみたいよ」
 ウィンクするニニルを見てミーオンはあごを落としている。
「じゃあ、元に戻すわよ。ちゃんと研究資料は目を通してきたんだから」
 ニニルはそう言うと何やら呪を切る。三人は身体が宙に浮く感じがし、
瞬時にして入れ替わりを終えた。


「あ〜やっぱり、自分の身体が一番ね……」
 天井を見ながら両手を組み、感動をしているシーラはちらりと横を見な
がら続ける。
「ニニルとは絶交したんだもんねぇ〜嬉しいって、本人も嫌味ったらしく
言ってくれたしっ♪ なんかこう肩の重荷が下りたって感じだわ」
 ニニルは床に両手をついて涙を流している。シーラは、ぺろっと舌を出
す。ニニルは気づいていないみたいだが……
「そんなにわたくしとキス出来なかったのが悲しかったんですか?
なら、今からしましょう! わたしは構いませんわ!!」
 部屋の向こうでニニルの顔色を下から伺いながら、ミーオンは、ニニル
の涙に自分勝手な解釈をして目を輝かせる。
「お前なんかとは絶対にしないっ!  
 お前のせいで僕の人生はぼろぼろだよっ!! そりゃー、ちょっとはい
い思いしたけどさっ……」
 キッチリとミーオンの言葉には耳を傾けていたのか、ニニルはいきなり
顔を上げて叫んだ。それを聞きミーオンは、落ち込むこともなく何か決心
したように、すくっと立ち上がり右腕を高く挙げる。
「これからは、実験に実験を重ねて、あなたを奪ってみせますわっ! 
必ずっ!! シーラお義姉さま覚悟していてくださいませっ!!」
「迷惑だっ!!」
 ミーオンの言葉を聞き、ニニルはすぐさま叫ぶ。シーラはミーオンに
の前に立ちはだかり、にこにこ顔で口を開く、
「あらっ ニニルなんて持っていってもいいのよ。それで世間が平和に
なるんだから安いモノよっ、どうぞ、どうぞ」
「ホントですかぁ」
 うなずくシーラを見てから、ミーオンの視線はすぐにニニルの方へ向く。
「ニニル様っ♪」
「姉さん……弟を売るようなこと言わないでよ」
「あれっ? あんた、わたしの弟だったけ?」
「そ……そんなぁー」
「さっ! ニニル様っわたくしと一緒に夜明けのティーをいたしましょっ」
「するかぁぁぁ!!」
 ニニルの怒鳴り声が宿中に響いた。 

こうして、また、無駄にシーラの一日は過ぎていった。

                              おわり




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