AWC 私の邪魔をしないでよ!    いっちゃん


        
#3296/5495 長編
★タイトル (PVN     )  96/ 6/ 3   6:21  (141)
私の邪魔をしないでよ!    いっちゃん
★内容
アヴル番外編・特別編
  『私の邪魔をしないでよ!』

 一 出た!!あの女

「出来ましたわ」
 茶色い小瓶に頑丈な蓋をはめながら女は言った。いや、女と言うより
は少女の方が妥当なところだろう――
 気品ある顔立ち、ウェーブのかかった黒髪も似合っていた。
 ここは……少々異臭がして、何個もの液体、錠剤の入った瓶や、秤、
そして、十数冊の本が彼女の前の机上で四方八方に散らばっていた。
 窓一つない部屋は牢屋とさえ感じられるほど狭暗く、外の音など全く
聞こえはしなかった。ただ、静寂 があるだけ……そんな感じだ。
(人間こんな所にいたらだめになる……長時間いるのは辛すぎるわ)
 そんなことを考えながら彼女は、最後に蓋をした瓶だけを片手に持ち、
疲れ果てた顔をして、部屋の扉の方へに足早に向かう。
 扉を抜け暗く、細く、寂しい廊下に彼女は消えていった。

 ニニルは道の真ん中で立ち止まり、空を見ながら大きく伸びをし、外
の空気を肺いっぱいに吸う。それから彼は、束ねた金髪を風になびかせ
ながら軽快な足取りで道をまっすぐに進む。
 ここは、公園通りと呼ぶにふさわしく、左右に大きく手を伸ばす木々
の葉が、冬の冷たい風に負けず、青々と茂っている。その木を左右に挟  
む道には、その木漏れ日が輝いていた――
「シーラ姉さん!!」
 しばらく進んだあとニニルはふと、後ろを振り返りシーラに声をかけ
る。シーラは、木を見ながらゆっくりと歩いていたが、ニニルの声に気
づき前を見た。ニコニコしているだけの所を見ると、何も言うことがな
いみたいである。呼んでみただけのようだ。シーラは、そんなニニルに
対して微笑みだけを返した――冷たい風がシーラの横を通り、腰まであ
る鳶色の髪をなでた――歳にして十九、いつも全体的に暗い色の服を、
彼女は好んで着ていた。決して美人とは言えないが幼さが残る分、可愛
さがあった。
 しばらく進んだシーラは、何かに気づき歩みをぱっと止めた、何か考
えたと思えばまた歩き出す。それを三回繰り返した後、また立ち止まっ
て下を向く。
(つけられてる!)
 そう思ったとき、シーラはすぐ後ろに向き直る、そして顔一面に驚き
の色を浮かべ次の行動に移ろうとする一瞬のうちに、腹に膝蹴りを入れ
られ、くの字になって前方に倒れ込む。しかし何かに瞬時にして支えら
れた後、意識が薄れていくのを感じていた。そして、シーラは風が消え
るようにぱっと消えた。
 そのすぐ後、ニニルは何かに気づくように後方を見た――が誰もいな
く、落ち葉が風に乗って砂塵と一緒に、地面で渦状 に回転しているだけ
だった。


「あらぁ〜お気づきになりまして?」
 シーラが目を開けると横から甲高い声がした。
(聞いたことあるような――この声……いたっ)
 頭の中で何か考えると脳髄に頭痛が走る。まるで――頭脳をハンマー
で叩かれているようだ……心臓の鼓動が強くなる。やたらふかふかの
ベッドにまた身を任せようとしたとき、ばっと羽毛布団をはね除け横に
座っている娘をまじまじと見る。
「――ミーオン」
 嘆息混じりにシーラはつぶやく。その娘は、強いウェーブのかかった
黒髪に、沢山のフリルのついたワンピースがとても似合っていて、美少
女の類に入れるその容姿は、まさに良家のお嬢様そのものだった。
 ミーオンは、口の前で拳を作り目を輝かせながら此方を見ている。
(相変わらず一般常識が分かってないみたいね……これじゃあ立派な
誘拐、監禁ぢゃあないの)
 こめかみ辺りに、人差し指を指しながら嘆息する。それから部屋を
一通り見る、明かり窓一つと、高級そうな家具が数個置いてあって、
シーラが寝ているベッドの横には、縦に細長い腰ぐらいの高さの棚があ
り、水差しとなにやら薬ののったトレーが乗っている。扉の前にはガー
ドマンらしき男が一人立っていた。
「お義姉さま。少々手荒ですみませんでした」
 ミーオンは、しなを作りながら視線を下に向ける。
 この娘、本当に自分のしたことの重要性分かってるの、と思いながら
も、シーラはミーオンの話に耳を傾 ける。
「でも……こうでもしなければニニル様がわたくしの物にならないで
しょう?」
 いきなりシーラの手を握る。しかし、シーラはその手をすぐに振り払
う。
「なに考えてるの!?」
「なにって……もちろんニニル様と――」
「もー!! それは分かってるのよっ! あなたがわたしをここに呼び
出すなんて、わたしかニニルと何かしようって言うんでしょ!!」
 大きな声にびっくりしたのか、ミーオンは目をまんまるくしている。
しかし、いきなり立ち上がり、片方の手でシーラを指さし、もう片方を
腰にあて、口を開く。
「もしかして、ニニル様のこと好きなんですの?」
「んなわけないでしょ……で何かするんでしょ!?」
「ほほほーのほー!! よく分かりましたわねっ! 
流石ニニル様のお姉さまっ!! そうですわっ、今日お呼びしたのはあ
なたに少々役だっていただこうと思いまして……ね」
 言わなくったって分かるわよ、とシーラは思ったがあえて口にしなか
った。
 その間、ミーオンはごそごそとワンピースのポケットを探る。そして
そこから茶色の瓶を取り出した。
「これ、なんだか分かりまして?」
 瓶をシーラの目の前に持ってくる。中には、なにやら液体が入ってる。
「なによこれ」
「よくぞ聞いてくれましたっ! これはねヒトの精神を入れ替えること
が出来るのよ。研究に研究を重ねやっと完成したの……あっもちろん、
テストはしてあるわ、完璧よ」
 ミーオンは、両手を腰に当て胸を反らし威張っている。
「もしかして――」
「そう……わたくしとあなたの精神を入れ替えるの」
「あんた、自分が何してるか分かってるのっ!?」
 シーラの言うことをミーオンは、聞かなかった振りをしているのか何
も答えない。 
「そんなことして後が恐いわよ」
 シーラは怒りの色を顔一面に表している。
「うっ……ほほほ、大丈夫ですわーニニル様はわたくしが大事にします
わ、出来れば自分の体で幸せになりたいのですが、やはり愛するヒトの
ためその人の好む姿で……ポッ」
 もう何も言う気がなくなったシーラはベッドの上でそっぽ向く。
 せめて動ければ、とシーラは体を動かそうとしたが、意思とは反し体
は言うことを聞いてはくれなかった。それを見てミーオンはトレーの上
の『薬』とラベルに書かれた瓶を指さし口を開く。
「無駄よ。そこの薬しびれ薬なんですもの、あと五分は動けませんわ。
さっ、始めましょ」
 焦りの色を顔全面に示すシーラに対し、ミーオンは冷静に瓶の蓋を開
けその中の液体を布に付けこちらへ近づいてくる。
 もうだめだっ、と思った瞬間に額に液体を塗られる。ミーオンもその
液体を額に塗り、シーラの唇に当たりそうなほど顔を近づけてくる。
どうやら額同士を合わせるだけのようだ……ほっ、とするのもつかの
間、ミーオンは、なにやら呪文らしきモノを唱える。
 とその後、目の前が真っ白になって、次に明るい光のようなモノが、
シーラとミーオンを包みそれは徐々に大きくになっていった。



   ◇◆◇◆◇◆◇◆

「ん……」
 ミーオンは床に倒れていた。しかし目を覚まし、ゆっくり起きあがろ
うとしたが、頭痛が走り頭を抱えてしゃがむ。少しじっとそのままいる
のだった。 
(えっ!!)
 しかし、しゃがんで自分の服をぺたぺた触って、すぐに立ち上がり、
近くにあった鏡に姿を映す。
(あらら……上手くいっちゃったみたい――)
 鏡をじっと見て、下を向き、深く嘆息してから何かに気づくように鏡
の中にうつるベッドをみる。
「いないっ!!」
 後方に素早く振り返り、ミーオンはその場でボーゼンとした。
 かちっ、ボーンボーン――
そして、部屋の中の時計がちょうど二時三十分を指した。





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