AWC のぞいてみれば 8                観代祐司


        
#3073/5495 長編
★タイトル (ZBM     )  95/ 5/ 6  10:48  (186)
のぞいてみれば 8                観代祐司
★内容

【42】

「警察も知っているんですか」
「上部の人達はね」
「・・・」
「だからどちらの方向に動いても、手が回っちゃうから、忠告したんですよ」
「・・・お父さんは、実際どんな研究をしてるんですか」
「それはちょっと言えないな」
「真実を教えてくれるって言ったじゃないですか」
「それは結婚してくれるのならの話です」
「・・・」
「結婚してくださるんですか」

少し間をおくが、意を決したような、でも小さな声で。
「・・・ええ」
お父さん。深く息をつく。
ありさ紅茶を持って入ってくる。
お盆の上のティーカップ。机の上に置き朋子に差し出す。
そしてお父さんの前にも。
「ありさくん。喜びなさい。今日から先生が新しいお母さんだ」
「ええ!?先生。嘘でしょ」
「本当よ」
お父さん紅茶を一口飲むと。
「わたしの子供をあずけている教師の発言とは思えませんな」
「・・・」
「そんな見え透いた嘘をつくなんて」
「美穂ちゃんは無事に帰していたたけるんでしょうね」
「・・・なるほど」
「帰してくださるんですか」
「いいでしょ」
というと立ち上がり、戸棚の引き出しから。一枚の紙を取り出す。
そして、朋子の前に差し出す。
朋子受け取り、驚く。
ありさ「婚姻届?」
「君の書く所だけでいいよ」
「お父さん、そんな物いつのまに?」
お父さんボールペンを机の上に置く。
「まさか先生が来るなんと思っていなかったけど、市役所にいく用事があったから
 ついでにもらっといたんだ」
「先生、書いちゃダメだよ。お父さんの冗談なんだから」
朋子、しばらく迷っているがペンを取る。

【43】

カローラの中の2人。
観代、手がわなわなと震えている。
「後で燃やしてやる」

【44】

心配そうな顔のありさ。
少し驚いているお父さん。
朋子ペンを置く。
「美穂ちゃんに会わせてちょうだい」

「いいでしょう」
お父さん立ち上がる。
朋子もバックを持って立ち上がる。
お父さん応接間のドアを開けて出ていく。
朋子もその後につづく。
「先生」
ありさ、朋子の持っているバックを肩から外す。
「バックは置いていってね」
朋子、ためらうが仕方なくいうとおりにする。

同・実験室の入り口
お父さん、カードをさして暗証番号を押す。
ドアが開くと中に入っていくお父さん。

【45】

カローラの中
「音からすると電磁式のオートロックのようですね。これは、ドアを開けて中に
 入るのは無理ですよ。結構大仕掛ですね。びっくりですよ。この分だと、窓も
 強化ガラスでしょうね」
「なんとか入る方法はないのか」
「主電源を切って、入り口をバールでこじ開けるか。後は車でつっこむしか無い
 ですね」
観代、下山の顔を見つめる。
下山察して。
「いっ、いやですよ。まだローンだって終わってないんですから」
「何もつっこめとは言ってない。主電源が切れるか?」
「それは、出来ますよ。たぶん。あの線が元ですから。アレをたどっていけば。
 ブレーカーがあるはずです」
「よし、じゃ。そろそろ行こうか」
「えっ?わたしは嫌ですよ。これ以上非合法なことは出来ません。不法侵入に
 器物破損。これ以上やったら。裁判をしてもこちらの方が不利になってしまいます。
「裁判なんかないよ」
「え」
「おまえも聞いてただろ。あっちは警察と手を組んでいるんだ。あんたらがいくら
 証拠を入手しても、製薬会社関連の事実なんて消されちまうんだ。
 だとしたら後はマスコミを利用して一般市民に直接事実を知らせるしかない。
 それには、決定的な証拠が欲しいんだよ。写真が欲しいんだ」
「でも、わたしたちはクライアントに事実を報告できればそれだけで・・・」
「つべこべ言ってないで協力しろ人の命が懸かってるんだ」
観代と下山、車から出てくる。
カメラと、車に積んであった修理道具を持っている観代
ポケットの中でかちかち音がする。
「なんですか、それ」
「ちょっとした小道具だよ」

【46】

朋子容器を見上げながらゆっくりと近づく。
見上げた容器の中には美穂の姿。
切なそうな顔の朋子。
美穂の入った容器の隣に。30代の男と女が入った容器が1つづつ。
そして難しそうな機械が並ぶ。
「調合して出来た薬品を体内に注射して、1日に1度腕の細胞を採取して
 機能を調べる。
 もっとも、わたしが行なっているのは他から比べれば、良心的なものだがね。
 他にはもっと残酷な実験をやってる奴も居るからな」
「・・・」
「この子のおかげで、なんとか新しい薬品が成功しそうだ」
「・・・美穂ちゃん」
「この薬が、実用化されればまた何千何万の人達の命が救われる
 ありさの母と同じ病気で苦しんでいる人達が助かるんだ」
「みずきさんのおかあさんの・・・」
「病院で使っている薬の半分はこうして作られている。知らないところでみんな
 の役に立っているんだ。世の中は、表向きの平和な世界の裏で、それをささえて
 いる裏の世界の人間が沢山いるんだよ。医学業界に限らずね。だから、そういう
 人達を非人動的だとか良心の欠片もないとか攻めるのは止めてほしい」

「・・・もういいんでしょ。美穂ちゃんをだしてあげて」
「それは出来ない」
「え?・・・・話が違うじゃない」

【47】

実験室の裏の古い倉庫。屋根ずたいに電線が延びてここには入っている。
じょうまいをニッパで壊して中に入る観代と下山。
中には、使わなくなった医療機械が山になっている。
懐中電灯の明かりを頼りに、奥に進む。
酸素ボンベや各種薬品の空箱。その横にアルミで出来た2メートル四方の容器がある。
観代、それがなんとなく気になる。下山はブレーカーを探してさらに奥に。
上方向に観音開きになっている容器。
「ありましたよブレーカー」
下山の声
観代、容器の中身が気になって、のぼり蓋を開けて中を覗く。
「うわーっ!!」
そう叫ぶと、容器から落ちる観代
「どうしたんですか」
奥の方からやってくる下山。
「この容器がどうかしたんですか」
容器に上ると中を懐中電灯で照らす。
そこには2体の裸の死体が投げ込まれている。
「うっ」
口を押さえる。下山吐きそうになる。
たまらずに降りてくる。
観代「ばかやろう、変な理屈付けても駄々の人殺しじゃねえか」
「これは?・・・うっ!・・・こんなことって、うっ」
「よし、俺は実験室に向かうから、3分たったらブレーカーを30秒切ってくれ、
 えっ?ぼくがですか。ダメですよ。こんな所には居られません。もうこれだけ
 証拠があればいいじゃないですか。帰りましょう」
「ばかやろう。朋子の命が危ねえんだ、いいな」
というと倉庫を出ていく。
「そんなー」

【48】

実験室・中

机の横の赤いライトが光る。モニターを点け見る。
お父さん「おやっ、鼠が2匹」

朋子手を握り締めにらんでいる。
「これだけ知られたんじゃ、ここから出すわけには行かない」
「・・・そんな」
「約束したとおり、全てを話した。そしてこの子も、今は出すことは出来ないが、
 ちゃんと帰すことを約束しよう。・・・だが、君はここから出すわけには
 いかない」
「・・・だましたのね」
「何を言うんだ、約束通りじゃないか」
「・・・」
「まあ、君がその気になってくれれば、出られないこともない。ただし、
 それなりの手続きを取らなくてはいけない。君がこちらの人間だと証明し
 契約を交わせばだ」
「・・・」
隣で椅子に座っているありさに、
「水城さん」
「ごめんね。だから言ったでしょ。深入りするなって」
「だからさっきも、話しただろう。ここは裏の世界なんだ。表の常識は通用しない
 んだよ」
「・・・」
                         9につづく。




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