AWC のぞいてみれば 3                観代祐司


        
#3068/5495 長編
★タイトル (ZBM     )  95/ 5/ 6  10:19  (187)
のぞいてみれば 3                観代祐司
★内容

【15】

学校、会議室。
朋子がひとりで椅子に座っている。
ドアが開く。
「じゃ、後から行くから。うん」
外に居る友達に明るく答えると会議室に入ってくるありさ。
それをみて少し戸惑う朋子。
「先生なんですか?」
「・・・そこに座って」
言われるまま椅子に座るありさ
「美穂ちゃんのことだけど・・・昨日の夜両親から捜索願いが出されて、
 いま警察のかたが来てるの」
「まだ何処に行ったかわからないんですか」
「ええ、その事なんだけど・・・水城さん。何か知っているんじゃない」
「えっ?私がですか」
「そう」
「知らないですよ。どうしてですか」
「誰にも言わないから、先生だけには本当のことを言ってほしいの」
「ちょっと、先生が何を言ってるのか解らないんですけど・・・」
「お願い」
「・・・」
「水城さん・・・わたし、あなたの力になりたいのよ。だから、
 何か、心配事か何かあったら、先生に話してくれないかなあ」
「・・・」
「先生は担任だけど、ずっとみんなのこと妹だと思ってきたのよ」
「・・・」
「先生に話しておきたいこと・・・ない?」
「先生、・・・どうしたんですか。何かあったんですか?」
「本当にない?」
「べつに」
「そう・・・」
少し悲しそうな表情で下を向くと、服のポケットからブローチを取り出す。
そして机の上に置く。
「美穂ちゃんが着けていたブローチなんだけど、これがあなたの家の近くの工場の
 焼却炉で見つかったの、美穂ちゃんが着ていた服と一緒に」
「えー?」
「そこの工場長がそれらを焼却炉に入れたのは、あなただって言ってるんだけど」
「うそ、人違いですよ、わたしそんな所入ったことないですから」
「ほんと」
「絶対にわたしゃないです」
「ほんとに」
「本当です」
「信じていいのね」
首を縦に振るありさ。
ため息をつく朋子。
「ありがとう、いいわ」
ありさ立ち上がり、ゆっくりとドアの所にいく。
ドアを開けると振り返り
「センセ。担任の生徒が行方不明になって気を落しているのは解るけど・・・」
と言うと出ていく。
朋子頭を抱えてしまう。

【16】

朋子のアパート。

まだ頭を抱えている朋子。台所から観代(29)がコーヒーを両手に持って
あらわれる。
「ごめんね」
「ばかだなあ、おまえ。そんなことやってるとおまえの方が警察に呼ばれるはめに
 なるぞ、その証拠の服と袋を警察に渡したほうがいいんじゃないか。
 そうすれば、その子が嘘ついてるかそうじゃないかだってはっきりするじゃないか」
「そうだけど」
「初めての担任だから自分のクラスの子を信じたい気持ちもわからんでもないけど、
 それとこれとは話が別だ。白か黒かは、はっきりした方がいい」
「うん・・・でも、事件にしたくないの」
「んなこといってもなぁ」
「美穂ちゃんが家に帰ればいいんでしょ。そうすれば事件にはならないわ。
 確信の無いことで美穂ちゃんも、水城さんも傷つけたくないのよ。
 水城さんが何か知ってることは間違いないと思う。でも、彼女の話し方を
 見てると、警察がててくるようなことじゃないと思うの」

「朋子はさあ、その行方不明の女の子。何処に居ると思う」
「水城さんの家・・・」
「じゃその水城って子が、女の子をかくまってる」
「うん」
「何のために」
「わからない」
「もしかくまってるとしても、服や下着を捨てる必要があるか」
「・・・」
「それに、白い車だ。もしその子がなんらかの理由で、女の子を家に居させてるとして
 高校生が車を運転するはずがないだろう」
「・・・」
「こりゃちょっと、朋子が思ってるような解決は期待できないんじゃないか」

「わかんないよ。・・・どうなってるのか、わたしはどうしたらいいのか」
観代、少し考えているが、
「家が病院ってのも気になるなあ・・・よし、俺の方の情報網でちょっと
 調べてみるわ。何かわかったら連絡するから、あんまり無茶な事しないでくれよ。
 おまえときどき我を忘れて行動することがあるから。生徒のことも大事だけど
 おれ達の将来のことだってあるんだから」
と、肩を抱き寄せる。
「うん・・・わかってる」

【17】

実験室
ありさ入ってくる。
「お父さん!!」
怒っている。
「お父さんが勝手な事するから、あたし大変だったんだからね。
 お父さんが何をやろうとかまわないけど、あたしの生活の邪魔しないでよ」
顕微鏡を覗いていたお父さん。顔を上げて、
「若いときからそんなに怒ってばっかだとしわが出来易いって聞くぞ」
「そんな冗談いってる場合じゃないよ、先生に知られちゃったんだからね」
「先生って、あの高田先生か?・・・彼氏いるのか」
「いるよ」
不機嫌そうな顔になり顕微鏡を覗く。
「お父さん!」
「怒った顔が死んだかーさんにそっくりだ」
「えっ」
ありさ、言葉がつまる。
話をかえようと、
「どうなの、うまく行ってるの」
「なんとか培養に成功したからな。あとは、経過を待つだけだ」
「そう」
ゆっくり歩きながら実験室の奥に入っていく。
奥の実験室にはコンピューターやわけのわからない機械が並んでいる。
そして、その正面に試験官のお化けのような物が3つ。液体の充満したその容器に
よくは見えないが何やら入っているようだ。
ありさそれを見上げて、
「言えないよな。やっぱ・・・こんなの先生が見たら暴れだしちゃうもんね」

【18】

教室 2B

朋子が現国の授業をしている。生徒が本を読んで、朋子が生徒のまわりを歩いている。
朋子ありさが気になってしょうがない。ときどき見るが、ありさは下を向いて
活字を追っている。
その朋子の仕草を見て、不審に思う西尾。
「ハイありがとう・・・じゃ次を・・・西尾さん」
「あっ、はい」
西尾読み始める、その斜め前の席は、まだ空いている。

2時限目の終了のチャイム。
「はい、きょうはこれまで」
「起立!」
ありさが元気よく号令をかける。
「礼!」
生徒達礼をする
礼をして教室からでようとする朋子に、
「先生」
ありさ声を掛け近づいてくる。
「進路調査のアンケート集まりました」
と、紙の束を渡す。
「あ、ありがとう・・・」

【19】

喫茶店・ルノアール 夜。

同・中
観代が茶封筒を持って入ってくる。

「人体実験!?」
テーブルに手を突いて立ち上がる。
「水城さんが?」
周りの客が何事だと、振り返る。
「お、おい」
周りの目を気にして、朋子を座らせる。
「水城って言う医者、医師を一時休業して薬品会社の研究員をしていた時が
 あるんだ。 その薬品会社ってのが・・・何処だと思う?それがあの大神薬品
 なんだ。」
「大神薬品て、あの?」
「そう。入院患者に未登録の薬品を投与して人体実験をして、副作用で8人が
 死亡した。大神事件の」
「・・・でも、医院長と薬品会社の研究員は逮捕されたんでしょ。水城さんのお父さん
 とは、直接は関係ないんじゃない」
「いいや、人体実験をしていたグループに彼の名前もあったんだ」
「うそ?・・・じゃ、どうして」
「彼は、薬品の開発担当で、人体実験への関与を否定したんだ。薬品は作ったが
 それがどのような使われ方をしたか知らなかったらしい。けど研究担当の責任者が
 そんなこと考えられるか」

「事件があった後すぐにその会社はやめたんだが、まだ、その会社に時々出入り
 しているらしいんだ」

「ちょ、ちょっと待ってよ。じゃあ、水城さんのお父さんが薬品の研究の為に
 美穂ちゃんを誘拐したっていうの」
「そう考えればすべてが納得いく」
「そんな、事ある分けないじゃない。3流小説じゃないんだよいくら何でも・・・」
「まあ、俺もそんな、単純な行動をとるとは思えないんだけど」

                             4につづく。




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