#3053/5495 長編
★タイトル (NKG ) 95/ 4/30 21:57 (196)
バイバイ〜世代(2/4) らいと・ひる
★内容
02 POCKET GIRL [ノンコ] 【坂上紀子】
「ねぇ、ノンコ。覚えてる?あたしがノンコに最初に出会った日のこと」
城高へ行く途中の道のりで、ミリィがそんな事を聞いてきた。
「覚えてるよぉ。入学式の十日ぐらい前だっけ、入学する前に見学行こうってアン
コに誘われて校門の前から学校を眺めてたら、制服姿のミリィとユミが現れて」
「そうそう。たまたま学校指定の洋品店でサイズ合わせしてて、ついでだから制服
着たまたま学校見学行こうってあたしがユミを誘ったんだ。ちょうど校門の前でノ
ンコたちに会って……そしたら、ノンコったらあたしたちのこと先輩だと思って、
挨拶してくるんだもん」
「だってぇ、ミリィはともかくぅ、ユミってけっこう大人っぽいし背だって高いで
しょ。間違えてもおかしくないよぉ」
「あたしとユミって悪ガキなとこあるから、そのまま先輩のフリしちゃったんだよ
ね。あとで大笑いしちゃったけど」
「それで入学式の日、クラス分けが発表されてその教室に行ったらミリィとユミが
いるんだもん。びっくりしたんだよぉ」
「ノンコったら真顔で『留年したんですかぁ?』なんて聞いてくるから、吹き出し
ちゃったのよね」
「だって、あの時はほんとうにそう思いこんでたんだもん」
「お詫びにってあたしとユミがお茶とケーキおごってっさ。それからよね、一緒に
行動するようになって仲良くなっていったのは」
「うん、仲良くなるのに時間もかからなかった」
「ある意味じゃ、あたしとノンコって似てるからね」
『似てるよね』と言われて、多分、他人にはわたしとミリィとの共通点なんて簡
単にはわからないと思う。基本的には性格は違うわけだから。
でも、『マイペース』という意味ではすごく似ていると思う。
「わたしもミリィも、自分のペースがあって、それを何があっても守り続けてるも
んね」
「あたしの場合、それがときどきわがままとして面に出ちゃうんだけど。そこがノ
ンコとの違いなんだ」
「わたしだってわがまま言ってるじゃん」
「ノンコの場合は素直な感情の表れで、そこに贅沢が入ってない。あたしなんか理
想高いから、もろわがままなのよ」
「そうかなぁ」
ミリィはわがままだと他の二人はよく言う。だけど、わたしはそれほどわがまま
には思えない。だってそれがこの子のかわいさなんだから。
「ノンコの心のポケットの広さが、そのままあんたの優しさなのよ。わがままなん
て言ったらバチがあたる」
優しいのはミリィの方だ、今までのトラブルのもとだってほとんど彼女のおせっ
かいからきている。他の人を想う心が過剰すぎるのが欠点なのよね。
人よりも感情の波が激しくて、それだけに人を好きになるという気持ちがものす
ごく純粋で、ときどきうらやましくなる。
仲間うちでの一番のムードメーカー。
ミリィと過ごした時間、楽しかったよ。わたし、絶対忘れないからね。
02 SMILE GIRL [アンコ] 【朝倉杏子】
しばらく無言で目的地へと歩くわたしたち。
やっぱ、ユミったら緊張しまくっているのだろう。何か気の利くような言葉を言い
たいのだが、下手に何か言うのも考えものだ。
なにせ、わたしの方はすでに合格していて、のほほんと余裕をかましているのだか
ら。
「アンコ寒いね」
いきなりのユミの言葉にドキっとした。差し障りのない言葉の中に緊張感が漂う。
「そ…そうだね。帰りにお茶して行こうね」
かなりひきつった笑みをユミに向けてしまった。わたしとしたことが、不覚を。
「アンコもつらかったでしょ。合格見に行くの」
「う……ん」
冷や汗もんだよこれは。
「ひゃ!!」
いきなりユミが、わたしの背中に冷たくなった手をつっこむものだから、思わず気
の抜けたような悲鳴をあげてしまった。
「な……なによ!」
「アンコ、寒さで笑顔が凍りついてるよ。んふっ」
「うー、ユミのいじわる」
ユミはわたしの心の中はお見通しって感じで軽く笑った。
「わたしはさぁ……けっこう平気っちゃぁ平気なんだよ」
「……ユミ」
かなり無理してるように聞こえるけど気のせいなの?
「結果がどうあれ、後悔するようなことにはならないだろうと思ってるからさ。ただ
ね、ちっとばかりフクザツな気分なんだわ」
「わたしもそうだった」
冷や冷やしながらぼそりと呟く。だって、すでに結果の出ているわたしの言葉でい
つユミを傷つけないともかぎりらない。
「アンコの方が大変だったんだよね。今になってわかるなんてバカだわ。ゴメンね」
「な…なに謝ってるのよ」
「けっこう、わたしも無責任なこと言ってるじゃん。アンコ傷つけちゃったりしたこ
ともあったし」
「あのことはいいのよ。わたしだって悪かったんだから」
「だからさ、そんなに気を遣わなくてもいいんだよ」
「気遣ってるかなぁ」
「がちがちに緊張してるくせに。アンコはただの付き添いでしょが」
あーあ、なんてことだ。逆にユミに気を遣わせてしまうとは、今日のわたしはどう
かしてるな。
「あー、アンコちゃん反省。ユミお姉さまにはかないませんわ」
「アンコ、だんだんミリィに似てきてるぞ」
「やだなぁ、わたしはノーマルだってばさ」
あー、まだ顔がひきつってる、困ったな。
ほんと、ユミにはかなわないわ。
02 MELODY GIRL [ユミ] 【三浦有魅】
ひきつりながらも笑顔を維持するアンコ。
それでも、けっこうかわいいと感じられるのが羨ましいところ。
でも、本人にとっては大切な心の魔法なのだろう。
彼女の笑顔が、彼女自身の強くなりたいという願望の表れであることを、いつの
頃からかわたしは気づいていた。そしてそれが、アンコにとってもまわりの者にと
っても良い方向へとプラスになることも。
『昔はかわいくなかった』なんて過去を悔やんでいる彼女だけど、わたしは一番
の笑顔を見つけたアンコにたまに嫉妬する時もある。でも、それは醜い嫉妬ではな
くて純粋に憧れている部分の表れなのかもしれない。
彼女と出会ってわたしが一番変わったと思うことは、前よりクヨクヨしなくなっ
た事だろう。ミリィのノーテンキさには、たまに疲れて気分が滅入ってしまうが、
アンコといると逆に勇気さえ湧いてくる。たぶん、あの特上スマイルにそんな魔法
が宿っているのかもしれない。わたしには真似ができないけど、あの子と仲良くな
れたことはちょっとした幸せにつながっている。
「ユミ、校門が見えるよ」
ふいにアンコが立ち止まる。
「うん、大丈夫だから行こう」
わたしを気遣ってくれるアンコ。やっぱりしょうがないのかな、気を遣われるの
は。今のわたしの状態って『壊れ物注意』そのまんまかもしれないし。
「ユミ……」
「やだなぁ、ほんとに大丈夫だってば」
言葉では余裕を見せながらも、心の中では緊張感が漂う。
合格すれば、アンコやノンコばかりかミリィともお別れ。不合格ならばいままで
の想いが崩壊してしまう。どっちにしたって、それなりの覚悟は必要。
しばらく心の中で葛藤するが、『ふぁいと』と自分自身に言い聞かせながら、一
歩踏み出す。
「アンコ、ここで待ってて。ちょっくら見てくる」
「うん」
アンコはいつもの優しい特上スマイルをくれた。
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☆ ☆
☆ 『ここのナポレオンパイがまた格別なのよねぇ』:美鈴 ☆
☆ 『そっかな、わたしはあっさりしたチーズケーキの方が好きだよ』:杏子 ☆
☆ 『わたしはどっちも好きだなぁ。 ☆
☆ でも、スペシャルパフェの方が食べごたえがあるよ』:紀子 ☆
☆ 『わたしゃ、お茶とお煎餅の方が……』:有魅 ☆
☆ 『……生クリームの嫌いな乙女なんてあんただけよ(^^;) 』:美鈴 ☆
☆ ☆
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【Bye-Bye Generation - March -】
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03 TWILIGHT GIRL [ミリィ] 【楢崎美鈴】
卒業式を終えたあたしたちは、そのまま帰らずに再び校舎へと入った。
パーティ幹事のアンコが選んだ会場は、思い出のいっぱい詰まった3−Cの教室だ
ったのだ。
「ユミったら目が真っ赤よ」
あたしは真っ先にユミの涙目を指摘する。四人の中で一番大人びていながら、一番
の泣き虫なんだから。
「ミリィだってそうじゃない」
「あたしの場合はもう条件反射的なもんが多いから、ユミより立ち直り早いのよ」
…なんて、わざと強がって見せる。ユミとは付き合いが長いから見透かされている
かもしれないけど。
「ノンコもアンコもけっこう落ちついてるね」
ユミはそう言いながら、涙目をごしごしとこする。
「わたしはねぇ、前の日に一人で泣きはらしちゃったから」
ノンコはいつものマイペースな口調。
「わたしの場合はさ、もしかしたら涙が枯れちゃってるのかもしれないんだ。ちっち
ゃい頃大泣きしすぎたからね」
アンコは照れたような醒めたような、それでいて悲しいようなよくわからない微笑
みをあたしたちに向けた。彼女自身は付属でこのままあがるわけで、すぐ隣の高等部
へ移るだけ。残る立場が一番つらいのかもしれない。フクザツすぎる心境の百分の一
くらいはわかっているつもりなんだけど。
「それはアンコが強くなったからよ。涙なんてそうそう流しちゃいけないんだから」
ユミのいやに大人びた言葉。泣き虫っていう意味じゃ、あたしと同類なのだが、こ
うも性格が違うとはね。
「そうね……わたしの場合、泣いたら最後、どんどん、どんどん弱くなってしまうも
ん」
アンコがしみじみとそう話す。
なんか、言葉を交わすごと過ぎていく時間が、痛いくらいに心に突き刺さる。別れ
の時を前に敏感な心が悲鳴をあげそう。
「そういや、よく教室なんか使わせてもらえたよね」
ユミが話題を変えようと、何事もなかったようにそうアンコに問いかける。みんな
の声から、ぼろぼろと思い出がこぼれてるのを感じる。
せつなすぎるこの想い、やっぱりあたしって幼いのかな。
−「担任の市原センセが校長センセにかけあってくれたのよ。ほら、わたし以外みん
な他の学校へいくわけだからさ」
−「市原先生って優しいもんね。わたしの進路のことでも親身になって相談にのって
くれたし」
−「そうよねぇ。ユミの進路変更ってわたしの転校よりフクザツな事情だったし」
−「わたしもさ、出来も良くないのに付属へ上がるなんてわがままいちゃって迷惑か
けたんだよね」
−「同姓からも好かれるよね、あの先生。ねぇミリィ」
−「ねぇ、ミリィ」
−「ミリィちゃんたらどうしたのかな?」
あれっ、誰かあたしのこと呼んだの?
みんなきょとんとした顔であたしの顔を見ている。