#2785/5495 長編
★タイトル (HHG ) 94/10/ 2 21:46 (176)
エティーマン 第3話
★内容
第3話 チャチャベンチの恐怖・・・後編・・・
流砂地獄から何とか脱出しようともがくが、鬼堂明の身体はすでに胸まで
沈んでいた。
「このままではどうすることも出来ん・・・仕方がない、エティーマンに変
身だ」
変身せず何とか脱出しようと試みたが、とても人間の力では不可能だとそ
う決心した鬼堂明は変身のポーズを取った。だが、それはエティーマンの身
体がウイルスに侵されることを意味しているのだ。
「エティーーーーーっ」
鬼堂明の身体が光り輝いたかと思うと、その姿がエティーマンに変わって
いた。変身を終えると両手を背中に回し翼を広げる。
「CDウイーーーーング」
バッと翼を広げ、砂地獄から脱出した。
「ぐっ」
ほんの少し飛行したエティーマンは、砂漠へ着地すると片膝を付き胸を押さえた。
「クックックックッ、変身して砂地獄から脱出するとは、自ら墓穴を掘った
ようだな」
また何処からともなく、不気味な声が聞こえてくる。
「何処だ、姿を現せブイエムーン」
エティーマンは空に向かって叫んだ。
「どうかねウイルスの味は、ウイルスは少しずつお前の身体を侵し能力と体
力を奪っていく、いつまで変身した姿でいられるか見物だな」
「卑怯だぞブイエムーン」
「俺は逃げも隠れもせんよ。エティーマン、お前の力を持ってすれば俺が何
処にいるか分かるはずだ。もっとも早く突き止めないと、能力を全て失って
からでは、俺の居所が永遠に掴めなくなるぞ、クーーーックックックッ」
不気味な笑い声を最後に、ブイエムーンの声が完全に消えてしまった。
「ブイエムーンめ、俺をいたぶり殺す気か・・・」
電魔空間というテリトリーの中では、ブイエムーンは絶対の力を持ってい
る。それだからこそ、いつでもエティーマンを殺せるという余裕があるのだ
ろう。ブイエムーンは、罠にかかった獲物を楽しみながら殺そうとしている
のだ。
電魔は、特別な能力を使っているときに体内から独特の電波を放出してい
る、その電波の発信源を探ればブイエムーンの居所が掴めるはず。勇者ファ
ーの知識が鬼堂明にそう教えていた。再び空中に舞い上がったエティーマン
は、能力の全てをブイエムーンの居所を探した。
「居た、あそこか・・・」
ブイエムーンの居所を突き止めたエティーマンは、全速力でその場所に向
かった。
ブイエムーンは小高い丘にいた。その丘には魔力によって身動きが出来な
い状態で多くの人々が捕らえられており、その中に鹿島美紀の姿があった。
丘の下には、魂を侵されブイエムーンの操り人形となった多くの人間達がう
ごめいている。
「化け物、私たちをどうする気」
毅然とした表情で鹿島美紀が言った。ブイエムーンは身動きの出来ない男
の身体を掴んで引きずり出すと、鹿島美紀の方へ顔を向けた。
「クックックックッ、君たちを改心させてやろうとしているのだ。丘の下に
いる人たちのようにね」
「私は何も改心する気はないわ」
そう言いながらブイエムーンを睨み付ける。
「気の強いお嬢さんだ、改心させがいがあるね。なぁーに苦しいのはホンの
少しだけだよ、君たちが98ユーザーになるって心で思えばすぐに楽になる
んだから、だだし、いつまでも強情を張っていると苦しみが長引くだけだ」
「私はマックが好きなの、絶対にあなたの思い道理になるもんですか」
「それはどうかな。俺の洗脳技チャチャベンチにかかれば、どんなに意志の
固い人間でも俺の操り人形になってしまうのだ。たとえば、この男のように
な」
そう言うと、引きずり出した男に目を向けた。
「ひっ」
男は怯えた表情でブルブルと震えている。その男の顎を手で掴み上げると、
醜い顔を近づけて話しかけた。
「お前の好きなパソコンは何だ、言って見ろ」
「ぼ・・僕が使っている・・・マ・・マシンは68です」
男は声を震わせて答える。
「そうか、では今から98ユーザーに改心するのだ」
「わ・分かりました・・ぼ・僕は、今日から98ユーザーになり・・ます」
素直に従わなければ何をされるか分からないと思った男は、ブイエムーン
の言葉に従った。金を出せばパソコンを買い換えられるのだ、その程度のこ
とで意地を張り、命を失う愚かな事を普通の人間ならまずしないだろう。
「嘘だ、俺が恐いからそう言っているだけだろ」
「ほ・・・本当です。信じてください」
「お前の言っていることが本当かどうか、チャチャベンチにかければ分かる
ぞ。心の底から98ユーザーになると思っていれば苦しい思いをしなくてす
むのだからな」
男は顔を引き攣らせながら懇願した。
「や・・・やめて・・」
だがブイエムーンは、男の願いを無視して右手を大きく振り上げた。
「チャチャベーーンチ」
物凄い速度で男の両頬をパパパパパパパンと叩いた。あまりの早さにブイ
エムーンの手が目に捕らえられないほどだ。数秒後、ブイエムーンの手が止
まった。
「5.5秒で改心したか、口から出任せを言いやがって」
男は両頬をお多福のように腫らし、無気力な表情になってしまっていた。
ブイエムーンはその男の呪縛を解くと、背中を蹴飛ばして丘の斜面を転がし
た。
「なんて酷いことをするの」
ブイエムーンを睨み付け、鹿島美紀が吐き捨てるように言った。
「酷い・・・いい響きだねぇーっ。俺に意見をした君には、もっと残酷な場
面を見せてやろう」
そう言いながら鹿島美紀の身体を掴んで引きずり出す。
エティーマンは、ブイエムーンが居る丘が視野に入ったところで落下して
しまった。ウイルスによって身体を侵され飛行能力を失ったのだ。
「早く・・早く行かなければ・・・俺の能力が失われる前に、美紀ちゃんを
助け出すんだ」
立ち上がったエティーマンは全速力で走り出した。だが、行く手を遮るよ
うに、ブイエムーンに操られた数百名にも上る人々が立ちはだかり、エティ
ーマンに襲いかかってきた。
「この人達は、ただブイエムーンに操られているだけなんだ、傷付けるわけにはいかな
い」
襲いかかる人たちを振り払っていたエティーマンだが、あまりにも数が多く前に進め
ない。
「くそ、これではきりがないぜ」
エティーマンは彼らを傷つけず一気に倒す方法を考えついた。武器の一つ
であるCバスアローの攻撃レベルを落とし、操られた人々を気絶させようと
言うのだ。
「Cバスアローーーっ」
超音波武器であるCバスアローを放つと、丘の下にいる操られた人たちは
一斉に倒れた。
「うむっ・・・へ・・変身が・・・」
ウイルスはエティーマンの能力を全て奪ってしまったのだ。全ての能力を
失ったエティーマンは姿を維持できず、鬼堂明の姿に戻ってしまった。
「こんな事ぐらいで俺は負けん。必ず美紀ちゃんを助けるんだ」
鬼堂明は再び走り出した。丘の麓に着くと、ブイエムーンが鹿島美紀の身
体を掴んでいる姿が目に飛び込んできた。
「美紀ちゃん」
鬼堂明は大声で叫ぶ。その声に気付いた鹿島美紀が答えた。
「明くん」
「クウーックックックッ、よく来た鬼堂明。だがその身体で、どうやってこ
の娘を助けると言うんだ」
鬼堂明を睨み、ブイエムーンが口を開く。鬼堂明は丘を駆け上って行くが
、斜面に倒れていた男が足を掴んで鬼堂明を倒した。
「なにっ」
男は鬼堂明の背中に回り込み、両腕で首を締め上げる。
「うむむむむっ」
「明くーん」
ブイエムーンの腕を振りほどこうと鹿島美紀は必死にもがくが、どうする
事も出来ない。
「クックックックッ、無駄だ。お前のナイトはもうじき死ぬ。さあ、鬼堂明
の死ぬ姿を見ながら、俺のチャチャベンチを受けるのだ」
「いっ・・・いやーっ」
鹿島美紀は気を失ってしまった。そんなことはお構いなしにブイエムーン
は右腕を上げ、振り下ろそうとしたとき、何処からともなく光の玉が現れ、
それを阻止した。
「うぐっ、なんだこれは・・・」
後ろを振り返ったブイエムーンは驚きの表情を隠せなかった。倒れている
人たちの身体から光の玉が現れ、鬼堂明を包んでいたからだ。
「お前の企みもここまでだブイエムーン」
光の玉に包まれた鬼堂明が立ち上がると、エティーマンに姿を変えた。
「何だと」
「意識と肉体を支配しても、心までは支配することが出来ないと言うことだ。
この光は、貴様に操られた人間の心、その心がお前の電魔空間から俺を解放
させてくれたのだ」
「うむむむむむっ、こうなればこの女だけでも殺してやるわーっ」
自分の能力が通じないと悟ったブイエムーンは、鹿島美紀を殺そうとした。
しかし、鹿島美紀を掴んでいる筈の腕にはその姿がなかった。顔を上げると、
前方に鹿島美紀を抱いたエティーマンが立っていた。
「そ・・そんな馬鹿な・・・」
「アクセラビーーーーム」
「ぐわぁぁぁぁぁ」
悲鳴を上げ、ブイエムーンの身体は消滅してしまった。
鹿島美紀が目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。目の前に鬼堂明が居
りマックを操作している。故障していたのが嘘のようにマックは軽快に動作
していた。
「明くん・・・あたし・・・」
「どうしたんだ美紀ちゃん、恐い夢でも見たのか」
夢・・・あれは夢だったのか・・・ホッとした鹿島美紀は、マックに目を
やった。
「直ったのね、私のマック」
「とっくの昔に直したさ、あとは、美紀ちゃんの寝顔を見ていたのさ」
鬼堂明はからかうように言った。
「もう、明くんたら。嫌い」
そう言ってほっぺを膨らませ、顔を背けた。
・・・・次回予告・・・
突然町の人たちが暴れ出し、電化製品などを壊し始めた、鬼堂明は電魔の
仕業と直感しその原因を突き止めた。それは妖魔メルコーンが放った、呪わ
れたメモリーが人々の心を狂わせていたのだ。鹿島美紀が危ない、鬼堂明は
美紀の家に向かった。だが、鹿島美紀もまた呪われたメモリーによって心を
狂わせられていたのだ。鬼堂明は妖魔メルコーンを倒すことが出来るのだろ
うか・・・・次回、第4話、妖魔メルコーン、呪いのメモリー・・・お楽し
みに。