#2758/5495 長編
★タイトル (HHG ) 94/ 9/12 0: 8 (191)
エティーマン 第1話
★内容
第1話 エティーマン誕生
山口県熊毛郡のとある町に廃墟と化した工場があった。ある日、落雷が
その工場に落ち、事務所にあったパソコンに電気が流れ込み起動してしま
ったのだ。
モニターから生物のような物が映し出され、事務所全体に異様な妖気が
漂っていた。
「うふふふふふふふ、1万5千年の長き時を越え、ついに復活したぞ。我
ら電魔一族が再びこの地上を支配するのだぁーっ」
モニターの周囲には無数の人魂のような物が集まっていた。その一つが
電魔の姿になると、モニターに映し出されている黒い影に向かって跪く。
「ご復活おめでとう御座います。電魔王サーバ様」
「かつてアトランティスを支配していた我ら一族であったが、アトランテ
ィス人の反乱により、異次元の世界に閉じこめられ全ての力を失ってしま
った。しかし、少しづつ力を蓄え、今再び地上世界に戻ってきたのだ。し
かし余が復活した媒体は、〇ECのパソコン、PC98である。余の力を
高め、世界を支配するほどの力を得るためには、この媒体と同じPC98
を世界中に広め、その媒体に集まるエネルギーを余の身体に注ぎ込まねば
ならん」
電魔は顔を上げ、ニヤッと笑みを浮かべた。
「分かっております、そのための計画はすでに整っております」
「うむ、任せたぞメディア将軍エーエヌン」
「ははーっ」
そう返事して頭を下げたエーエヌンは、すくっと立ち上がり、後ろへ振
り向くと大声で叫ぶように言った。
「い出よ、勇者ファー」
するとその声に答えるかのように、人魂の一つがエーエヌンの前に進み
出ると、電魔の姿になりエーエヌンの前に片膝をつき頭を下げた。
「お召しにより参上しました。メディア将軍エーエヌン様」
「勇者ファー、お前は手下を連れて東京にある秋葉原という街へ行き、そ
こにいる人間に乗り移り、情報を集めてくるのだ」
「ははーっ」
頭を下げた勇者ファーは、次の瞬間、その姿を消していた。
鬼堂明は、DOS/Vパソコンの部品を買いに秋葉原へ来ていた。電気
街を回り、思ったよりも早く目的の部品を購入出来たため、少し時間を持
て余していた。
「まだ帰るには少し早いな、もう少し見て回るか・・・」
腕時計を身ながら鬼堂明はそう呟くと、再び電気街に消えていった。
DOS/Vユーザーである鬼堂明は、国民機と呼ばれているPC98に
あまり興味はなく、いつもなら近寄ることすらなかったのだが、この日は
少し違っていた。目的の部品を手に入れているし、PC98がDOS/V
に肉薄するほどコストパフォーマンスが上がっていると友達から聞いたこ
ともあってか、たまにはPC98を見てもいいなと思い、ラジオ館にある
〇ECのショールームに来ていた。
「ふーん、なかなか高性能になっているな。完成されすぎて、俺みたいな
マニアには何となく物足りない気がするぞ」
鬼堂明はPC98のキーボードを操作しながら、ブツブツと独り言を言
っていた。その時、背中に異様な悪寒を感じた。
「なんだ、この悪寒は・・・」
思わず後ろに振り向いた鬼堂明は、ショールームにいる人々が蝋人形の
ように全く動かないことに、何が起こったのか理解できず、ただ呆然と辺
りを見回すだけだった。
「な・・・何が起こったんだ・・・・」
そう思ったのもつかの間、身体に強いショックを受け鬼堂明は床に倒れ
てしまった。
「ううう・・・何者かが・・・俺の身体に入ってくる・・・い・・意識が
乗っ取られていく・・・」
鬼堂明の身体に電魔が進入し、身体と意識を乗っ取ろうとしているのだ。
「や・・止めろ・・・貴様なんかに乗っ取られて・・・たまるか・・・」
必死に抵抗し、もがき苦しんでいた鬼堂明だったが、ビクッと身体を痙
攣させたのを最後に、全く動かなくなってしまった。
「どうやら、人間の身体の乗っ取りに成功したようだな」
姿を現した2匹の電魔の一匹が、隣にいる電魔に話しかけた。
「さすが勇者ファーだ、やることにそつがないぜ」
もう一匹の電魔が感心した口調で返事をした。
「さて俺達も、適当な人間を見つけて身体を乗っ取るとするか」
「そうだな」
鬼堂明の身体の乗っ取りが成功したと感じた電魔達は、辺りを見回しど
の人間の身体を乗っ取るか選別していた。
気に入った人間を見つけた電魔達が人間の身体に入ろうとしたとき、全
く動かなかった鬼堂明がヌウッと立ち上がった。それに気付いた電魔達は、
人間の身体に入るのを中断し鬼堂明の側へ行った。
「へへへどうだい、人間の中に入った感じは」
電魔の一人が不気味な笑みを浮かべながら聞いた。
「化け物・・・何でこんな所に化け物がいるんだ」
困惑したような表情で鬼堂明がそう言ったため、電魔達はジョークを言
っているものと勘違いしたらしく、鬼堂明の肩をポンポンと叩き大きな溜
息を漏らした。
「おいおい、何の冗談だ勇者ファー」
「さわるな!」
肩に乗せてある手を弾き飛ばした鬼堂明はゆっくりと後退した。その表
情から冗談ではないと感じた電魔達は、一転して攻撃態勢に入った。
「ま・・・まさか・・・人間に意識を乗っ取られたのか・・・・」
魔物達は驚いた表情で、お互いの顔を見合った。
「馬鹿な・・・勇者ファーほどの者が・・・たかが人間ごときに意識を乗
っ取られるなど、絶対にありえん」
「だが、俺達を見て驚いている。奴が勇者ファーならあんな反応は示さな
いはずだ」
「それもそうだ、だとすればどうする」
「計画は失敗だ。我ら一族の秘密を守るために、勇者ファーを殺さねばな
るまい」
「俺達に出来るか、相手は勇者ファーだぞ」
「今なら殺れる、奴が電魔の力気付いていない今ならな」
「わかった」
電魔達は鬼堂明に襲いかかった。心が動揺している鬼堂明は、本能的に
その攻撃をかわしていたが、胸に深い傷を受け床に倒れた。激痛によって
我に返った鬼堂明は、右手で胸を押さえ、ドクドクと流れる鮮血を見て死
の恐怖を感じた。
「う・・・うわぁぁぁぁぁぁ」
「諦めろ小僧、誰も助けてはくれねぇよ」
叫びながら後ずさり後退りする鬼堂明。電魔達は鋭い爪を掲げゆっくり
と近付いて行く。
「死ね小僧」
電魔達は鋭い爪を振り上げた。
「い、いやだぁぁぁぁぁーっ」
鬼堂明がそう叫んだ時、身体から衝撃波が放射され二匹の電魔が後方へ
吹っ飛んだ。
「なにっ」
「ま・・・まさか、勇者ファーの力が目覚めたのか」
ゆっくりと立ち上がった鬼堂明は、ジロッと電魔達を睨み付けた。
「そうだ、思い出したぞ。俺は勇者ファーに身体と意識を乗っ取られそう
になった、しかし、俺は逆に奴の意識を乗っ取ったんだ」
床に倒れた2匹の電魔は、素早く立ち上がると再び戦闘態勢を取った。
「勇者ファーともあろう男が人間ごときに負けるとは、なんて無様な」
電魔の一匹が吐き捨てるように言った。
「俺には分かる、お前達電魔が何を企んでいるかが、俺を乗っ取ろうとし
た電魔の意識が俺の頭に流れ込んでくるんだ」
それを聞いていた電魔が、笑みを浮かべながら口を開いた。
「貴様にそれが分かったところで、もはやどうすることも出来んぞ。勇者
ファー」
「ふふふふ、俺はファーではない。お前達電魔を越えたエティーマンだ」
鬼堂明が笑みを浮かべ、叫ぶように言った。
「エティーマンだと」
「そうだ、貴様らがPC98を媒体にせねばその力を発揮できない電魔。
だが俺は違う、勇者ファーが乗っ取ろうとした俺はPC98のユーザーで
はない、DOS/Vユーザの中でもパワーユーザーと呼ばれるマニアなの
だ。その知識を生かし、勇者ファーの能力を改良し、DOS/Vのアーキ
テクチャを取り入れたのだ」
「何だと・・・・」
「見よ、これがエティーマンだ」
そう叫んだ鬼堂明は変身のポーズを取った。すると身体が光り始める。
「エーティーーーーーーっ」
最後の雄叫びを上げた鬼堂明の身体が変化し、エティーマンになってい
た。PC98のアーキティクチャとDOS/Vのアーキテクチャが融合し
たその力は、ペンティアムパワーとPCI,アクセラパワーなどを持った
電魔として生まれ変わったのだ。その姿を見た電魔たちは驚き一瞬後退り
したが、このまま逃げ帰る訳にはいかなかった。そんな事をすれば、メデ
ィア将軍エーエヌンによる確実な死が待っているだけだ。
「く・・くそーっ」
電魔の一匹が鋭い爪を振り上げエティーマンに襲いかかった。
「Cバスチョーーップ」
その爪をかわしたエティーマンは、その電魔の胸に水平チョップをぶち
込んだ。
「ぐぇーーーっ」
電魔はもんどりうって倒れた。エティーマンはそのチャンスを逃さず、
とどめを刺すべくキックを急所に打ち込もうとしたが、もう一匹の電魔が
口を開き、長い舌を放ってエティーマンの首に巻き付けた。
「うむむむむっ」
ぎりぎりと首を絞めながら電魔がいった。
「ぐへへへ、そうはさせん」
もがき苦しむエティーマン。首に巻き付いた舌がエティーマンの首を更
に絞め上げる。
「形勢逆転だな、エティーマン」
動きを封じられたエティーマンの隙をついて立ち上がった電魔が、鋭い
爪を振り上げゆっくりと近付いて行く。
「PCIカッターーーーっ」
エティーマンの腰についているベルトのような所から光輝くカッターが
無数に飛び出し、迫りくる電魔の身体を引き裂き、首に巻き付いている舌
も切断した。
「ぐわぁぁぁぁぁっ」
電魔は悲鳴を上げながら絶命した。
「ひぃぃぃぃぃぃっ」
勝てないと悟ったもう一匹の電魔は悲鳴を上げながら窓から飛び出した。
「逃すかっ」
キッと飛び出した窓に鋭い視線を向けたエティーマンは、両手を背中に
当て背中の翼を出した。
「CDウイーーング」
エティーマンも窓から飛び出し、電魔の後を追った。逃げ切れないと思
ったのか、電魔は空中に停止すると、渾身の力を込めた攻撃をしかける。
「うおおおおっっっっ、死ねエティーマン」
迫りくる電魔に鋭い視線を向けたエティーマンは、両腕を胸に当てエネ
ルギーを体中に貯め込んだ。
「アクセラビーーーム」
両腕を天に向かって振り上げ、貯め込んだエネルギーを放出した。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ」
電魔は一瞬にして、その身体を消滅させてしまった。
ふうーっと一呼吸付いたエティーマンは、近くのビルの屋上に降り、鬼
堂明の姿に戻った。
「この世界を守るために、電魔一族の野望はこの俺がなんとしても阻止し
てみせる」
鬼堂明は心に固く誓うのであった。
・・・次回予告・・・
メディア将軍エーエヌンは、人間世界にベンチ魔獣ブイエムーンを送り
込み本格的な侵略を開始した。その日を境に、町中で人が消えてしまう事
件が多発する。そんなある日マックユーザーであり、鬼堂明の恋人である
美紀が、彼の目の前でモニターに引きずり込まれてしまったのだ。この事
件の犯人がベンチ魔獣ブイエムーンの仕業だと気付いた鬼堂明は、美紀を
助けるべくブイエムーンのテリトリーである、電魔世界へ乗り込んむ。だ
がそこには、ブイエムーンの卑劣な罠が待ちかまえていた。果たして鬼堂
明は、無事に美紀を助けることが出来るのか・・・・次回、第2話、チャ
チャベンチの恐怖・・前編・・、お楽しみに。