#2737/5495 長編
★タイトル (XVB ) 94/ 8/ 6 14:43 (176)
総盆踊りの話(2) $フィン
★内容
チチチチチ、夜が明けると雀が鳴きわめく朝がやってきます。鶏が卵を生み、子供を
何人も抱えるお歯黒おばさんがろくでもない亭主の弁当をつくる朝が来ました。普通の
人には何でもない朝でも、ある特定の人には特別の朝になるということもあります。
外は民衆の声がきゃきゃきゃきゃと明るく聞こえてくるのに少年剣士の心はブルーで
ありました。
なぜなら、人は表向きは正義だとか環境保護とかご大層な名目を掲げているのですが
、生きていくのには植物を食べ他の生ある動物を食べる食物連鎖に縛られるしか脳のな
い
エゴイズム人間の集まりでございます。
そんなこんなで、外の民衆がどんなに楽しかろうと自分かよろしくない環境に陥りま
すると精神的ブルーになるのは当然といえましょう。
それに少年剣士の置かれた環境もお悪く、異様な臭気が漂っておりますし、部屋の飾
りには南蛮より取り寄せた得体の知れないものがたくさんあります。三角の椅子、針が
入っている棺桶、首が入るだけの穴とその上には巨大な野菜包丁などなど、わけのわか
らないものを見て自分に試されるのじゃないかと思うととても不安になってしまいます
。 そのような環境の中、少年剣士はどのようなお姿かといえば白いふわふわのお布団
の
上に口には猿ぐつわ、すっぽんぽんのお身体、両手・両足には縄の戒め、その縄の端は
柱にくくりつけられ、夏の日にばてた蛙のようで哀れなものでありました。
がらり、戸が開いた。昨夜の浪人が片手に布袋を持って入ってきました。
「ううううう」少年剣士はその人物に必死になって何かを言おうとしています。
「昨日はよく眠れましたか」浪人は少年剣士の顔を見、にこりと笑います。
「ううううう」猿ぐつわをされているために何も言えない少年剣士。
「そうですか、よく眠れたようですね。あなたは綺麗な髪をしていますね」少年剣士
の柔らかい髪を軽くなぜました。
「うっ! ううううう」首を振り必死になって抵抗する少年剣士。
「ん。何か言いたいことがあるようですね、それをとってあげましょう」浪人は猿ぐ
つわをはずしました。
「おのれは何を考えている。ぼくは恐れ多くも大型新番組幹部であるぞ。図が高い。
ひかえおろう」すっぽんぽんの蛙姿になりつつも誇りだけは忘れない、さすがは若き英
雄、お国の宝、少年剣士。
「その誇り高い性格ますます気に入りました。これでこそわたしの待ち望んでいた方
です」浪人は満足そうにうなずきました。
「これを見てください」浪人は自分の持っていた刀を少年剣士の眼の前に置きました
。 「危ない」少年剣士は口だけは達者に叫ぶが、四方八方の戒めのために逃げること
も
かないません。
「よく見てほしいものです」
「ああっ、これは・・・」少年剣士の眼に尊敬の色が現れました。
「すごい、すごい、すごい、すごいです。尊敬してしまいます。これをどこで手に入
れたのですか。これは百年前に絶滅したラドン派一門の最高傑作といわれた名刀『総盆
踊り』ではないですか」眼がきらきら光っています。
ぎしぎしぎしぎしぎし、四方八方に張られている柱がなりだし、少年剣士は両手・両
足縄で締め付けられているのをも忘れ感動で暴れまわります。
ぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅ、暴れまわればまわるほど少年剣士の両手・両足から暖かい血
が吹きこぼれています。
ああ、なんということなのでしょう。恐るべし名刀『総盆踊り』。今まで冷静だった
少年剣士の頭の血を頂点にまで高め、刃に触れずともこの美しい少年剣士の身を傷つけ
るとは、これでは狸の子孫が恐れて刀狩りをするのもうなずけます。
「面白い方ですね。あれほどわたしを嫌っていたのに、すぐに尊敬されるのですね」
「あ・・・」少年剣士は自分のしたことに気がつき、顔を赤らめました。
「いいのですよ。この刀を見てすぐに『総盆踊り』とわかるだけの目があるか確かめ
たかったからですから」
「・・・・・」少年は黙っています。
「もっと見ていてもいいのですよ」浪人はもう一度刀を少年剣士の眼の前に置きまし
た。
「んんんんん」少年はよく見ようと極限まで刃先に近づました。
ぽろり少年剣士のまつげが落ちます。刃に触れずとも斬れる名刀『総盆踊り』のオー
ラの力がまつげを少年剣士の身体から離すこともできるのです。
「刃先が黒いということは、この刀は満足していない」
「ご名答です」
「ぼくをどうしようというのだ」少年剣士の顔に脅えの色が走ります。
「ああ、おびえることはないですよ。わたしはあなたを斬ろうということはこれぽっ
ちも考えてないですから、それに斬るのなら昨日の晩にしてます」
「それじゃ・・・」
「名刀『総盆踊り』は扱いにくい刀であるのは知っていますね。昔は血を与えるだけ
でよかったのですが、今では他のものをこの刀がほしがっているのです」
「他のもの」
「そうです。それを与えないと夜な夜な鳴くのです」
「チリーン、チリーンとね」にやりと笑う。
「本当ですか」少年剣士は引き込まれたように首をあげました。
「冗談ですよ」
白けた空気があたりに漂う。
「早くこれをとけ。さもないと仲間が探しだしておまえを打ちにくるぞ」
少年が精いっぱいの虚勢を張っているのがわかり、浪人は笑いました。
「駄目です。せっかくわたし好みの方を見つけたのに、このまま逃がすわけにはいき
ません」
「ぼくをこんな格好にしてどうしようという気なのか」
「それはですね、おりいってあなたにお願いがあるのです」浪人は着ていた着物を脱
ぎました。
着物を脱ぐと中からは想像もできなかったほどの鍛えられた肉体、だがそれも嫌みを
感じさせない、完璧に美しい肉体でありました。
「どうです。あなたも綺麗ですが、わたしもそんなに悪いものではないでしょう」浪
人は少年剣士の裸体を見て笑いました。
「ぼくはあなたとやる気はない」
「そうですか、わたしもノーマルな方を選んだつもりですので、その点は心配ありま
せん。ですが、理由があってあなたにはここにとどまってほしいのです」
少年剣士の横に座り。ふっと息を吐く。
「何をするのですっ」敏感に感じて叫び声をあげる。
「やはり感じやすい方のようですね・・・ちょっと遊んで見ただけですよ」浪人は軽
く笑いかけました。
浪人はあらかじめ用意していた南蛮渡来のビンを取り出してきました。
「終わったら帰してあげますよ」ぺたぺたぺた、はけで南蛮渡来のビンから黒いどろ
りとした液体を少年剣士に塗ります。
「あああああっ」何が起こるのかわからず、少年剣士は身をよじって悶えます。
「大丈夫ですよ。これは毒でもなんでもないものですから、ちょっとした興奮剤です
から」
「ああああああああ」少年剣士は眉をゆがめます。
「ふっふっふっ、どうです」浪人の顔が今までの聖人君子、理解ある大人、普通の日
常人の顔が消え、かわりに不気味な顔が見えます。
「苦しいですか、それとも気持ちいいですか」
どちらとも言わずこくりとうなずく少年剣士。
「そうでしょう。どちらとも言えないというところでしょうね。それは、南蛮渡来の
秘薬でのなんでも人の中枢神経とかいうものに影響するそうです」
「ではわたしも」浪人は残っている液体を身体中にぺたぺたと塗りつけます。
「あっ」浪人が顔を歪めました。
「いっ」少年剣士は声をあげた。
「ううううう」浪人は腰を振り、少年剣士が白い布団の上、弓なりになり、同時に同
じ言葉を放ちます。
ぷちっ、ぷちっ、ぷちっ、ぷちっ、少年剣士を縛りつけていた縄は切れました。
それからのことは恐ろしくてわたくしの口から申すことははばかれますが、差し障り
のないことだけ、少しだけならよろしゅうございます。
二人で踊っていたのでございます。
それもただの踊りではございません。
なんとあの白い神話の時代、ホトトギスを焼き鳥にして喰ったと言われます超きつい
男、音田のぶなが公が南蛮の魔術と魔界の魔術を練り合わせてつくったといわれます秘
められた踊りを踊っていたのでございます。
その名も『秘技股間踊り』この術を行い失敗するもの数知れず、失敗したものには死
亡するものもいるかと思えば、術者たちの大事な股間のものがなくなり、乳が出るとい
う女性化現象を伝染病となってあたり一面に巻き起こすという恐ろしい踊りでございま
す。
噂によりますと南蛮でも同じ踊りを踊って成功したとかしなかったとか、南蛮のかす
ていら屋さんで聞いたお話ですから誠がどうかわかりません。
踊りの方はといえば、浪人は一心ふらんに腰を振りつづけ、少年剣士も同じく無我夢
中で腰を振り続けます。
二人の踊りは正確に踊りの作法にのっとっておりました。股間のものを立ちあげる角
度を必要ですし、上昇する以上に下降させることはもっと大切で根気のいる仕事であり
ます。
下を向けたまま、右に左にと曲げることもありますし、上昇中にくいくいと膨張しな
ければいけないこともありました。そんなこんなで非常に危険で非常に難しくて、一部
のものが眉をひそめ、もはや神話になりつつある『秘技股間踊り』と言われるものでご
ざいます。
「ふうううう」浪人は長いお江戸時間にして一刻の間、その精神と肉体、特に腰のま
わりに過酷な労働を強した後、大きくためいきをついて、ふらりと床に倒れ眠りました
。 「ふうううう」少年剣士も同じくためいきをついて、ふらりと床に倒れ眠りました
。
二人の間にはあの名刀『総盆踊り』が二人の体液を刀内に吸収しております。
さらに一刻後、浪人はむくりと起きだし、銀色に輝く『総盆踊り』を見ると満足げに
うなずきました。
「これは予想以上のできになるかもしれないな」眠り続ける少年剣士の顔を見て、笑
いを浮かべます。
あれほど激烈に踊ったというのに確かな足どりで裸の少年剣士に、近づきました。
まだ興奮で赤く染まってぷちぷちしている少年剣士の頬をぺろーりぺろーりとなめま
す。
頬をなめていた舌が額に伸びたとき、一瞬動きがとまり、浪人は眉を歪めました。
するすると伸びていた舌をとりあえず体内に収めました。
「うむ、これは?」浪人は立ち上がり部屋の中を歩きだしました。
「こまった。薬が効き過ぎたのかも知れない。どうしたものか」あぐらをかいて、少
年剣士の寝顔を見ていたが、考えていてもらちがあかないことに気がつき少年剣士の身
体を診察することにしたようです。
眉を歪めたまま、少年剣士の全身を舌で丹念にぺろーりぺろーりとなめ回し始めまし
た。
ぺちゃぺちゃぺちゃぺちゃ・・・湿った音が部屋の中にこだまする。
ぺろーり、ぺろーり、ぺろーり。
「ふむ、ここはどうだろう」ぺろーり。
「ここかな」ぺろーり。
「どうしたものか・・・」舌を出したまま、腕を組んで思案しています。
「まあ、どうとでもなるだろう・・・、ほらっ、起きてください」浪人は少年剣士の
後ろにまわり、かつを入れた。
「ううううっ」少年剣士は悩ましげな唇をあけて、浪人を見ました。
「・・・・・」少年剣士と浪人の視線が絡み合いました。
少年剣士は微笑む。
「ここはどこ、ぼくはだれ」小鳥のさえずりにも似た声で少年少年は目をくりくりさ
せて聞きました。
少年の問に対し浪人は驚いた顔をしました。
「わたしを見てはいけない」手で顔を隠しました。
「あなたはだぁれ」元少年剣士は何の疑いを持たず、浪人のそばにより聞きます。
「あなたの名前ですか。 実はわたしも知らないのです」浪人は元少年剣士の問に答
えます。
「あなたはだぁれ」元少年剣士は無垢な微笑みは浮かべて、浪人を見つめています。
「わたしは赤壁左門上之介というものです」浪人は寂しげな笑顔を元少年剣士に向け
て答えました。