#2665/5495 長編
★タイトル (XVB ) 94/ 7/ 3 14:22 (191)
僕たちの鎮魂歌(1) $フィン
★内容
おかしいね。
哀しいはずなのに笑っているよ。
おかしいね。
嬉しいはずなのに涙がでてくるよ。
僕は笑い、泣きながら、僕たちの鎮魂歌をいつまでも吹き続けていた。
夏休みは終わったというのに一向に衰える気配のない太陽の陽射しは、僕たちの白
いワイシャツに汗という名の染みをつける昼。
座っているだけで汗が滴り落ちるといったこともなく、涼しげになり響く風鈴の音
で秋の訪れを感じる夜。
そんな夏でもない秋でもない中途半端な月、9月から僕たちの物語は始まった。
僕はちょっとした用事で遅くなり、家についたとき厭味なほど照りつけていたいじ
わるな太陽が隠れ、空には綺麗な星々が輝いている。
僕は家に入り、スポーツバックと学生カバンを持って僕たちの部屋に入ろうとドア
を開けた。
部屋は暗かった。
あれ? どうしたのだろう。
僕は首をひねった。
確かに僕より先に家に帰ったはずなのに、部屋には灯がついていない。
寝ているのかな、まさか、こんな時間にね。
それでも僕は、寝ている場合のことを考えて静かに、できるだけ物音を立てないよ
うに注意して部屋に入ることにした。
闇の中に人影が見える。
「だれ?」僕は声をかけた。
その人影はたぶん僕の思っている人物だと思うのだけど、逆光になって誰なのかよ
くわからない。
泥棒が僕の部屋にいる可能性もある。
でも、泥棒だと僕が声をかけて、少しも動こうとしないのはおかしい。
僕はもう一度、今度はゆっくりと落ち着いて中にいる人影に聞こえるように声をか
けた。
「徹、いるんだろ?」
僕は右足を踏み出した。
僕の右半身が、僕たちの部屋に入る。
「孝、つけるな!」強くて、怒っているような徹の声。
「僕なにか悪いことした? 今日帰るのは遅くなったのは女の子と少し話していた
だけだよ。徹も知っているだろう。それにいつものように相手にしなかったよ」
変だ? 長い間一緒にいたけどこんな徹始めてだ。
「ごめん、怒鳴ったりして、孝が悪いんじゃない。そう、どこも悪くないんだ」少
し声を落としてどこか自嘲めいている徹。
「身体の具合悪いの? ママに頼んでお医者さん呼んできて貰おうか?」僕は話し
かけながら、いつもとは様子が違う徹を見てどうすればいいのかわからず戸惑ってい
た。
闇の中で僕の問い掛けに徹が首を振っている。
「孝・・・今は一人にしておいてくれないか」
「うん、徹、食事は?」僕は聞いた。
「今はいらない」
「そう、ママには寝ているって僕から言っておくね」
「ありがとう。おまえっていい弟だな」
「じゃあ、また後でくるよ」僕は徹にそう言って、一階にいるママの所に行った。
「あら、孝ちゃん、徹ちゃんは?」ママが二階から降りてきた僕に声をかけた。
「知らない、寝ていたようだけど」ごめんママ、僕って悪い子だね、徹は寝てなく
て、ちょっと具合が悪いだけなの。どこが悪いのか僕にはわからないけど・・・。
「じゃあ、孝ちゃんだけでも夕食先に食べちゃいなさい。ママはこれからPTAの
会合に行きますから、ちゃんと戸締まりするのですよ。知らない人が来てもドアを開
けるのじゃないのですよ」
「わかっているよ、ママ。もう僕たち子供じゃないのだから、僕たちそれぐらいわ
かっているよ」
ママは僕を見て笑った。
ママの口から白い綺麗な歯が見える。ママって綺麗だな。僕のクラスメートのママ
を見たことがあったけど、ママと同じぐらいの年なんて信じられないぐらいのおばさ
んしてたよ。
僕は微笑んでいるママを見ながら、ママが僕たちのママでよかったなと感じていた。
「それから、徹ちゃんが起きてきたら、レンジでチーンして食べるのですよ」ママ
が言った。
「うん、わかった。徹が起きてきたら僕から伝っておくよ」
食事が終わり、ママは僕の食べっぷりを満足そうに見てから出て行った。
僕はお留守番。そして二階にいる徹もお留守番。この家には僕たち二人だけしかい
ない。
僕は、徹のいる部屋のドアの前に立つ。さっきは一人にしておいてくれと徹は言っ
たけど気になる。徹どうしているのかな、だけどどうしよう。
僕は部屋の前で悩んでいると、僕の気配に気づいたのか、「孝、もういいよ入って
こいよ」部屋の中から徹の声が聞こえてきた。
「徹、どう? 気分はよくなった」僕はそっとドアを開け、首を出す。
「うん」徹。
部屋の中には蛍光燈の光がともり、その下ではいつもの優しい徹の顔が見えた。
「さっきはどうしたの?」
「それがね・・・」一瞬眉を顰め、辺りのようすを確かめるようにきょろきょろと
首を振る。
「ママは?」
「ママはお出かけ」
「そうか、実は・・・孝、だしたことあるか」僕の目の前には頬を赤らめた徹の顔
があった。
「だす? なんのこと」僕は徹の言ったことの意味がわからず聞き直した。
「前に授業でならっただろう。僕は少しだけ大人になったのさ」ふんっと馬鹿にし
て鼻で軽く笑う。これは徹独特の癖だ。
「あ・・・」少し前女の子たちと別々になった教室で習った授業のことを僕は思い
出した。
「教えてやろうか」徹は僕の方を見、悪戯っぽく笑う。
「うん、でも僕一度もしたことないから・・・・」
「大丈夫だよ。きっとできるよ。僕ができたんだ。孝ができないはずはないよ。僕
たちは双子なんだから」
徹は僕の方に近づいてきて、ズボンの中に手を入れ、そしてパンツの下へと延ばす。
「だいぶ生えてきているじゃないか」僕の茂みの一部を人刺指と中指で挟んで、く
すくすと笑う徹。
「にいさんは?」
「僕も同じぐらいだよ」そういうと更に腕を奥に差し込んだ。
「あ、やっぱりやめて、恥ずかしいよ」徹のしなやかな指が僕のそこに入ってきた。
「僕がついているよ」僕の顔を覗き込んで徹は言った。
そして、大事な壊れやすいガラスを扱うかのように僕のそれを徹の5本の指を使っ
てゆっくりと注意深く丹念に動かし始めた。
とくん、僕の心がなった。
なに? これは?
徹の指の動きに合わせて僕のそれが動く。
「わかるかい」徹の繊細な指が動く。方向、強度を微妙に変えていく。そして指を
動かせる度に僕の顔を覗き見ていた。
「わからない。でも・・・」僕はなにか得体の知れない今まで経験したことのない
ものが徹の指から伝わって、僕に力を与えているのがわかる。
「もっと、強くしようか」それまでゆっくりだった指の動きがだんだん強く、そし
て僕のあれもだんだん熱くなっていった。
「どうだ?」徹は身体を乗り出して聞いた。
「ううう」そのときはもう僕は徹に返事をすることもできなくて、うめき声を出すこ
としかできなかった。
「感じているか」徹が聞く。
僕は頷いた。
空いている片手で器用に、半分ずれかけていた僕のズボンをおろし、白いパンツを
取り去る。
僕が蛍光燈の下に現われる。
徹の視線が僕のそれを見ているのがわかる。
恥ずかしい、今までとは違う大きさに脹らんでいるそれを大好きだった徹に見られ
ている。
「大丈夫、病気じゃないよ。僕のもあのときは同じ大きさだったよ」僕のそれを優し
く撫ぜ、僕を安心させるために耳元で囁いた。
そして、自分の指を僕のそれに絡みつかせる。
僕たちは、一点だけに集中する。
ざざあ、海はどこにもないはずなのに波の音が僕の中で聞こえる。
徹が指を緩めると波の音は遠のき。
徹が指を強めると波の音は近づく。
徹の色白だった顔も、赤く染まっている。
徹の顔を見ながら僕の色白な顔も赤く染まっているのだろうと僕は感じていた。
徹が波、僕は浜辺、そして僕たちに流れる血が太陽。
そして、僕たちは夕焼けの渚。
「うううっ」僕はうめき続けた。
波が渚を襲う。逃げ惑う渚、襲いかかる波が、渚にかかる、波が襲う、渚が逃げる、
波が渚に、波が渚に・・・・・。
渚は波にさらわれ、長い間太陽に照らされたままだった渚は波の刺激をうけて、そ
の渚は今までため込んでいた力を放出した。
放出された力は海の底へ沈んでいく・・・。
「うまくいったじゃないか」手術が終わった
お医者さんのようにその指から滴り落ちる液体を軽く振り落としながら言った。
「うん」僕は徹と同じなんだ。僕は少しだけ大人で、少しだけ子供。そんな僕は誇ら
しくて寂しいような、そんな複雑な気持ちだった。
「これで僕たちは大人の仲間だよ。」
徹は首を振る。首がぐるぐる部屋の中に巡り、テッシュの箱の前で止まった。
そして徹はテッシュの箱に手を伸ばす。
テッシュを一枚引き抜く。
白い紙が出てくる。
徹は白っぽい手と白い紙を見、どうしようかと少し迷った顔になる。
徹は首を軽く傾ける。
くすりと僕は笑う。徹は可愛い、その仕草がちょうど鳥が首を傾けて何か考えてい
るように見えた。
「どうしたの?」僕は徹に聞いた。
「うん」僕の顔を見、僕ににこりと一度笑いかける。左手の人差し指を口の中にぱく
りとくわえた。
ん? という顔の徹。
すぐ徹は人差し指を口から離した。
「徹・・・」
「ん、ものの本には卵の白身のようだと書いてあったからどんなものかなと思ってね、
ちょっとした好奇心だよ」
「苦かった?」大人の本には苦いとかいろいろなことが書かれていたのを思い出して
僕は聞いた。
軽く首を振る徹。
「ううん、そんなことなかったよ。でも、ちょっと斬新な味だったかな」徹は僕に向
かって軽く首をすくめた。
その後、僕たちが保健体育の本を開いて勉強をしていると玄関を開ける音が聞こえ
てきた。
ママがお出かけから帰ってきたみたいだ。
「徹ちゃん、孝ちゃん。ちゃんと留守番できた?」ママの声が下から聞こえる。
「はーい」僕たちは同時に返事をした。
「いこっ、孝」徹は僕を見て言った。そのあたりに散らかっているものを片付ける。
僕たちが今まで見ていた本はもちろんママに見られないように本箱にかたずけた。
ママのところに行く前に、僕の耳元に口をよせる。徹の生暖かい息が僕の耳の奥ま
で入ってくる。
「あんっ」僕はうめいた。僕がここが嫌がるのを知っていて徹がわざと息を吐きかけ
ては楽しんでいるのだ。
「孝、ママには内緒だよ。僕たちが大人になったって知るとママが悲しむもの。あの
ことは二人だけの秘密だよ」
僕は頷いた。だって、僕たちはもう大人なのだもの。ママにも内緒にすること一つ
ぐらいあってもいいんじゃないのかな。
ママが帰ってくるとお風呂を沸かしてくれて、僕たちは仲良く服を脱いだ。
最後に少し湿り気味の僕のパンツ。そして、徹のパンツを脱衣場に脱ぎ捨てたとき、
僕たちは、風呂場の横に供えつけられた鏡を見た。
鏡の中には生れたままの姿の僕たち、女の子とよく間違えられる顔、白い肌、髪は
茶色かかっていて十五歳の男の子としては、筋肉はあまりついていない。
男の子でも女の子でもない、子供でも大人でもない中途半端な僕。
そして、僕の横に僕と同じ年、同じ月、同じ日生れの同じ顔をした徹がいる。
僕が鏡を見ているのを見て、薄く唇をほころばしている。
「僕たち本当によく似ているね。ほら、鏡を見ても僕と同じ君がいる。ここのほくろ
がなければママでも間違えるんじゃないかな」徹は髪をかきあげて、耳のつけねに一
つぽつんとある小さなほくろを指さして言った。