AWC お題>青空      ワクロー3


        
#3122/3137 空中分解2
★タイトル (AKM     )  93/ 4/18   2:15  (149)
お題>青空        ワクロー3
★内容

■お題《青空》■  ワクロー3


『や。わたし、ゼッタイに や だからね』

きっぱり断わられてしまった。

『どうして、わたしがやんなきゃならないのよ』
『や。だってさ、これって髪をおかっぱにするんでしょ。あたしゼ
ッタイにやだからね』
困った。


  ▼やなんだってさ▼

『それにさ、どうして、あたしじゃなくちゃなんないのよ。これさ、
これ。最初から やな予感がしてたんだよね。こんなのさ、やって
もさ、だれもこないよ。おもしろくないもん』

『とにかく や わたしはゼエッタイに ゼッタイに やだ』
『や。ほかの人さがしなさいよ』

(みんなやだと言われている)

『あなたがプロなら あたしもやってもいいけどさあ。あなたは、
学生でしょ。どうせつまらない話でしょ。誰もみないやつに あた
しがわざわざ出る意味がないもん。このくだらいのに出るためにソ
バージュきっちゃうなんてゼッタイにやだからね。ただでさえ こ
んどのは やなのに。なに?これ。ヌードのほうがまだいいわ...
あ、ヌードにもならないわよ。いっとくけど』


 ▼つりあわないんだってさ▼


『それにさ。わたしじゃ似合わないよ。これ。だってさ、わたし胸
があるしさ身長だって163あるんだよ。この時代の女の人にわた
しみたいな体格の人いないよ』

『それによ。それにさ。わたしの相手役になるW君はさ、身長16
0そこそこでしょ。そんなのゼッタイにおかしいって。つりあわな
いじゃない』

身長の差なんてどうにでもなるって。

『それにさ これって。わたしがやらなくちゃならないもんじゃな
いでしょ。だれでもいいんでしょ。だって読んだけどさ。ただ涙ぐ
めばいいんでしょ』

そりゃそうだけど。

『おかっぱにして、顔を汚して、それならさ、わたしであるヒツヨ
ウないわけでしょ』

そりゃそうだけど。

『ね?だったらさ。だったらほかにいくらでもいるって』

だって。きみはキスだってうまいし。

『ちょっと。あなたなに言ってるの????あたまどうかしてんじ
ゃないの?』

そりゃ確かに今度のやつとは無関係だけど。

『そんなことぜんぜん関係ないでしょ。ばっかみたい!!』

ああ、余計なこといって怒らせてしまった。

『だから。わたしは しないの。ほかの人のところへ話もっていっ
て。こんな話くるだけでも情けないと思っているんだから』


どうもすみません。

『それじゃ さよなら。こんなくだらない話を二度と持ってこない
でね
あたし忙しいんだから』


  ▼強気なんだからな▼

 といって強烈に断った彼女なのだが、なぜだか引き受けてくれた。
理由は分からない。理由なんてどうでもいい。引き受けたとなると、
こちらの天下だ。

『やっぱりやめる。できないもん』
『だってさ。演技ばかばかしいもん。台詞も難しいしさ。私のため
に台詞入れてくれたのはまあ、いいけどさ。これ難しくて読めない
よ。これ。振りがなふってよ』

『私ねボランティアなのよ。バイトすればバイト代出るのよ。旅行
だって行けるのよ。それをさ、こんなわけわかんないののためにさ。
お金ももらえないのにさ。髪まで切ってさ。買ったばっかのニット
の服だって似合わなくなったしさ』

言うんだよ。もいっぺん言えよ。

『強気じゃない。わたしがいないとできないんでしょ。』
『変な台本。みんなあきれてるわよ』

仕方ないので読む。いっぺんしか読まないぞ、展開を覚えておけ。
俺がWがやる上村大尉役だ。おまえ自分のところ読め。

『さいてー』


  ▼泣いて感動せよ▼

上村=全機青空セヨの命令が出ると駆け足で愛機のもとに行きます。
女子挺身隊員B=(上村をじっと見る)

上村=自分はいつ死んでも惜しい命ではありません
女子挺身隊員B=(うっすらと涙を浮かべて)セイクウってなんで
すの?

上村=失礼しました。セイクウとは、出撃のことであります。陸軍
飛行隊ではこう言うんであります。
女子挺身隊員B=まあ、どんな字を書くのですか?陸鷲の世界には
いろいろと難しい言葉がおありになるんですねえ。

上村=青空と書いてセイクウと読むのであります。

女子挺身隊員B役の女『これってさ、制するの制の字の間違いじゃ
ないの?』

いいや。素人は黙っておけばいいの。セイクウは青空なの。

『それにしても、ほんっっとにくだらないわね。これ』

大きなお世話だ。

結局、この演劇はさんざんな失敗に終わり、それっきり俺は舞台監
督のの道を諦め、もっか脚本書きに専念しているのである。あの時
の彼女は、ときおり、ボディコンを木綿の白いシャツに着替えても
らって、いったんひざまくらしてもらい、その姿勢のまま頭だけへ
びのように首をもたげて、彼女の胸に顔を埋めさてもらうとよい着
想が湧くのではないかと何度か実行したが、そのたびに彼女は『ヘ
ンタイなんだから。もー』と赤ちゃんをあやすノリで『イイコ、イ
イコ』してくれるので、そのつど眠りに入ってしまい、さっぱり脚
本が書けないのである。つくづく俺は不幸な人間だ。


 (お題『青空』←次回からもっともっともっともっともっともっ
と複雑怪奇なお題にしてほしい。シンプルだと想像力がないので妄
想に頼るしかないのです=以上完結)






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