AWC ●楽戦楽勝ごりら男●その16 9人抜きの巻 ワクロー3


        
#3116/3137 空中分解2
★タイトル (AKM     )  93/ 4/16   4:57  ( 75)
●楽戦楽勝ごりら男●その16 9人抜きの巻 ワクロー3
★内容

    ◆楽戦楽勝ごりら男◆16 9人抜き達成

 大変です。面接の時間まで残り20分を切っています。ここまで
8人抜きを達成して、9人目に挑戦している知人Rですが、会社の
面接時間まで、それほど時間はない。近くに会社があるといっても、
徒歩5分は見ておかないと行けません。

 目指す面接の場所が、会社のどこにあるかも少し早めにいって確
かめないとならないでしょう。

 声をかけようか。一瞬そうも思いましたが、声がかけられないほ
ど緊迫した勝負が始まってしまいました。

 おお。こうなったら会社の面接なんてどうでもいいではないか。
会社なんてどこにでもある。しかし、ストリートファイター9人抜
きの名誉はどこにでもあるもんじゃなかろうもん。ほとんどひとご
とだと思って、でたらめな理屈でもって観戦を続けました。

 まさに今、Rに立ち向かう少女は、清楚な外観に似合わず、相当
な使い手です。少なくとも勝負に関する限り油断は出来ません。僕
はRの必死の操作を、この大事な局面でほとんど見ていませんでし
た。コントローラーと6つのボタンを滑らかに操作する、Rの対戦
相手の少女のほうばっかりを見ていました。いったいどこで、ここ
まで修練を積んだというのか。技は完璧にコントロールされていま
す。竜巻旋風拳とか、大技も出せるのでしょうが、逆襲を恐れてか、
うかつには出しません。勝負はまったく接近戦になってしまいまし
た。

 コントローラーを軽く握って、時には離れ、時には上に、前へ、
迫り来る醜悪な『ごりら男』から『ケン』を救おうと華麗なボタン
操作です。
 力任せに狂ったようにたたきつけていた、これまでの男のゲーマ
ーとは、どえらい違いです。静で正確なボタン操作では、それほど
激しい音はでないものなのか。それとも、実はでているのだけれど、
ついひいきめに見てしまうのか。それは定かではありません。

 少女ゲーマーをうっとりと眺めているうちに、勝負自体を忘れそ
うになってしまいました。

 そのとき、どよめきが起きました。『ごりら男』ブランカの噛み
つきが、無惨にも『ケン』の身体にしっかりと入っています。周囲
のゲーマーのどよめきは、明らかに失望のどよめきでした。ダメー
ジラインは『ごりら男』の側により多くでていました。

 ということは、それまで少女の方が優勢だったということです。
この噛みつき攻撃さえ受けなければ。。。少女ゲーマーは、今やコ
ントローラーに力を込めながら、右手で懸命にボタン連打します。
ボタンを打ちまくることによって、噛みつきを逃れようと努力をし
たのでしょう。

 見ていてそれは哀れなほどでした。

 ゲーセンの常連も、がっかりしたでしょう。彼女がこのゲーセン
最強のゲーマーだったのかもしれません。連勝を止める、期待のス
トッパーは、最後にとどめの電気ばりばり攻撃を浴びて、『ケン』
は骨をあらわにしながら、あの世にいってしまったのです。

 9人抜き。もう誰もRを止めることはできないのか。面接の時間
もそろそろ始まります。ここらが潮時というものでしょう。声をか
けようか。そう思い迷った瞬間に、勇気ある10人目のゲーマーが、
今や無敵の知人Rに挑戦をしてきました。

 脊がやけに高い10代のGパン男が、10人目の相手でした。選
択したのは『ベガ』。自らの力不足をキャラクターそのものの力で
補おうとする意図がみえみえです。どちらが真の使い手か、戦って
みれば一目瞭然でした。 知人Rに唯一の隙があるとしたら、会社
の面接の時間が迫っているということかもしれませんでした。この
段階になると指の疲労はもはや気にならないほど、Rのボタン操作
は、完璧に『ごりら男』と一体化していたようです。関心はいまや
知人Rが10人抜きを達成するか否か。そして誰に負けるか。その
ふたつに絞られてきました。

       (以下次回)





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