#2815/3137 空中分解2
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児童読物「みじかなものではあるけれど」(2) 浮雲
★内容
*
「ほら、チョコ」
「お、サンキュ」
ゴジは、言うが早いか、チョコを開けにかかった。
「ねえ、まだ食べる気なの」
スルメが、あきれた、というようにタメ息をついた。
「とうぜんだろ。でっかいやつをかますには、無理しなきゃ」
何が、無理なもんか。スルメは口をひんまげた。
「ほら、みんなも食えよ」
ゴジは、どこまでも調子がいい。
「なあ、なあってば、さっきのこと教えるやくそくだべ」
イヤンが、甘えるように言った。
「なに、それ」
ゴジは、ポツキーの箱を開けにかかっている。
「したから、私立中学のはなしだべした」
「ああ、あれ」
スルメが、チョコの箱についていたベルマークを引きちぎりながら、うなずい
た。
「推薦入学、つまり水洗トイレということだよ」
「水洗トイレがどうしたの」
イヤンは、まだピンとこないらしい。でも、あとでわかることだが、仕方のな
いことだった。
それから一時間もたったろうか、三人がトイレに入りこんだのは。
「あっ、ああ」
トイレのドアを開けたとたん、スルメが大声をあげた。それは、悲鳴といった
方がよかった。
「やだよ、ぼく。だから反対だって言ったのに、もう」
スルメの顔は、ほとんど泣きそうであった。
「おお、こりゃあ、やばいわ」
さすがのゴジも顔を曇らせた。
「なにが」
イヤンは落ち着いたものだ。
「お、おまえんち、まだボットンだったのか」
ゴジが、なんとも言えない顔をして、イヤンと便器をかわるがわる見くらべた。
「おい、だれかもう<へ>こいたか。いやにくせえぞ」
「いやだよ、もう」
スルメの気持ちは、痛いほど分かるというものだ。小学生が三人一緒に、用も
ないのにボットン便所の中に入りこんでいるのが、まず普通じゃない。いや、用
はあるのだ。もちろんそっちの方じゃないが。
「早く終わらせて出ようがね」
スルメは、鳴き声だ。
「そんなこといったって、急には出ないさ。もう」
ゴジも、たまらなくなってきたらしい。
「おい、イヤンどうした」
イヤンの顔色が悪いのに気がついて、ゴジが声をかけた。
「腹の調子が」
「おかしいのか」
「うん」
「なんかへんなもの食ったんだろ」
「さっき、サツマイモを」
「なにっ」
ゴジが、目をむいた。
「まさか、生のやつを食ったんじゃ」
スルメが、信じられない、というように肩をすくめた。
「ああ、チョコをとりにいったとき、ちょっと」
「けっ」
しょうがないなあ、ゴジとスルメは、あきれるばかりであった。
「あちちっ」
とつぜんだった。イヤンが声を上げてお尻を突き出したかと思ったら、続いて
、
「ブッ、ブリブリ・・・」
という、腹に響く音が便所震わした。
「わあっ」
ゴジとスルメが同時に叫び声を上げた。
「く、くせえ」
ゴジとスルメが先を争って便所から出ようとした、それがいけなかった。
「あっ」
スルメが、足をとられてバランスを失うと、便器のふたに片足をのっけてしま
った。そして、まるで神の教示でもあったかのように、イヤンの足は、便器のふ
たを押しのけ、するりと中に入り込んでしまったのであった。
「ひっ、」
スルメが必死でゴジにしがみついたからたまらない。勢いあまってひっくり返
ったゴジは、便器に頭をぶつけると、そのまま、うーんとくぐもった声をあげ気
絶してしまった。
さあ、大変。スルメが、いっそうわめきたてながら、ばたばたやるものだから
、ボットン便所につっこんだ片足が゛中味゛をかき混ぜる結果になり、臭いのな
んのって、言語道断とはこのことか。
イヤンは、なんとかスルメをひっぱり上げようとしたが、せまいうえに、ゴジ
がじゃまになって、なかなかうまくいかない。
わめき散らすスルメ、パンツを汚したのも忘れてあせるイヤン、便器に頭を打
ってのびているゴジ、そして、スルメの足でかきまわされて眠りをさました排せ
つ物たち・・・。
*
筆者の住むH市は、人口25万人の中都市であるが、下水道の普及率は、わず
かに20%足らずであるとか。
− おわり −
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