AWC 人造人間は悲しいのである   クリスチーネ郷田


        
#2675/3137 空中分解2
★タイトル (MEH     )  93/ 1/11  21:27  (109)
人造人間は悲しいのである   クリスチーネ郷田
★内容
 かつてヒーローだった人造人間、伊集院義夫。いま時代は彼の100万パワーを必要
としてはいない。

何故こんな事になってしまったのか。どこかで人生の歯車がくるっちまったんだな。ど
のへんで狂ったんだろうか。やはり良子と駈落ちした時からか。息子の孝雄が産まれて
からかもしれないな。彼はじっと己の手を見つめる。「俺は……誰だ。」

 伊集院は、悪の組織「山田組」で改造手術を受け、脳の改造手術をほどこされる寸前
に脱走したという華々しい経歴を持つ。伊集院義夫、またの名を人造人間キャシャダー
。
以前電気工事士の資格を取得した事から名付けられた「電工パンチ」も、今や撃つ相手
を必要としてはいない。

「ふふふ……。今ではいい思い出だよな。」

 あの時は組織にだまされた科学者、海野博士と共に一大活劇を演じたのであった。そ
う、海野博士との出会いは第2話、CMが終ってから2分目のトコロだ。懐かしい。山
田組の組長、キング山田は実に恐ろしい敵だった。キング山田とその手下の改造人間た
ちとの戦いはお茶の間のチビッコたちに絶大な支持を受けた。

「私は視聴率のために戦っているのではない。正義のために戦っているのだ」

 マスコミに対して彼はそうコメントした。彼は常に視聴率など気にせず悪と戦ってい
たのである。そうした仲間は数多くいた。中には一致団結して戦った時もあった。

最大の敵、ゴッドジャングラーとの戦いは過酷なものだった。キャシャダーの電工パン
チも通用せず、今度こそ人類に最後の時がやってくるかと思われた。そこに登場したの
がキャシャダーと同じような経歴を持つヒーロー、キャシャダーXYZである。キャシ
ャ
ダーXYZは海野博士が秘かに開発していた人造人間で、いうなればキャシャダーの兄
弟とも言える存在であった。

「フッフッフ。キャシャダー!これで貴様も終わりだ。ジャグジャグー!!」

ゴッドジャングラーはそうキャシャダーに語りかけ、チェーンソーのスイッチを入れた
。

「ああっ。俺はここで死ぬのか。1クールで最終回になってしまうのか。それはあまり
にも悲しい。いくら最近視聴率が悪いからって、それは無いだろう?それではあまりに
もミジメじゃないか。」天にその声が聞こえたのだろうか。チェーンソーがキャシャダ
ー
の首を斬ろうとするその時。チビッコ自衛隊の隊長、コバヤシ少年が叫んだ。
「あっ、あれは誰?」
バイクに乗ってやってきたのは、キャシャダーXYZであった。

「キャシャダーXYZ、ただいま参上!!」

そして例の大活劇を繰り広げたあと、キャシャダーは新必殺技「電池エンド」でゴッド
ジャングラーの息の根を止めるのである。

「ううう……。キング山田さま万歳!!ジャグジャグー……。」ゴッドジャングラーは
爆発し、死んで行った。

「本郷、いやXYZ。あの時は格好良かったぜ。」伊集院義夫は本郷隼人(またの名を
キャシャダーXYZ)に話しかけた。「あの時だけさ。まったく、いい思い出だ」

「ゴッドジャングラーは山田組で改造された人間の中でも最も優秀なやつだった。彼は
もと公認会計士だったからな。奴は策士だったよ、本当に」「まさにその通りだ。日本
人チンパンジー化計画は恐ろしい作戦だった。キャシャダーの良きライバルだったな。
本名はなんと言ったっけ」「吉岡紀明。苦学の人だったらしい。運命のいたずらでゴッ
ドジャングラーに改造されてしまったんだよな、彼も」「ああ。キング山田の脳手術を
受けなければ彼も正義の味方になり得たかもしれない。しかし、彼の爆発はひどかった
な。何しろエネルギー源のプルトニウムが周囲に飛び散ってみんな被爆したからな」
「ああ。あれは悲劇だった。なにしろ都心で爆発したからな」

二人はがぶがぶと酒を飲み、昔の思い出を語り合った。
「良子さんとはうまくいっているのか、キャシャダー」
「ああ、それがな……。今年の冬に離婚したんだ」

本郷隼人はグラスを落とした。ウイスキーが周囲を濡らす。

「な、なんだってそんな……。おまえは最終回でこう宣言したじゃないか。ぼくたちは
結婚します。いつまでも良子さんと一緒にいます、って」
「それがな。番組が終ってからは食うにも事欠くありさまが続いてな。しばらくの間は
後楽園でアルバイトしていたんだが、とてもじゃないが3人を養える甲斐性は無かった
んだ……。」
「ウソだ!良子さんは俺たちのアイドルだったじゃないか。彼女はいまどうしているん
「ああ、良子はいま、どこかのバーでホステスでもやっているんじゃないか」
「そんなバカな。信じられない話だ」

「わかってくれ、隼人。」

あの番組が終った時に俺たちの時代も終ったのだ。
義夫はそう思った。

後番組では、巨大ロボット「グレートガイガン」が地球の平和を守るために戦っていた
。
そのグレートガイガンも今やスクラップ工場で鉄クズに化していると言う。(鉄と言う
表現は必ずしも正しく無い。グレートガイガンのボディは未知の合金ガイガニウムで出
来ていたからである)

「キャシャダー。久しぶりに面白い話だった。」「ああ、俺もだ。XYZ。」
「良子さんの若い時のビデオでも見るか。今度ダビングしてやる」
「それはありがたい。是非頼む」

「じゃ、また会おう。キャシャダー」

義夫が飲み屋を出た時、既に空は白みはじめていた。
肌寒い空気を肺にため込み、キャシャダーは久しぶりに変身ポーズを取った。

「キャシャダー、チェンジ!」

七色の光が義夫の体から発せられ、超科学防御プロテクターの皮膚が装着されていく。
「ああ……。もう朝か。今日はやけに冷えるぜ、おお寒い。しかこのプロテクターも安
物だな。もっと予算をかけなくちゃ駄目だよな」

キャシャダーは変身した鋼鉄の体を震わせながら、帰路についた。

END




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