AWC 天下無敵の!! お兄ちゃん(後)        悠歩


        
#2546/3137 空中分解2
★タイトル (RAD     )  92/12/17  23:24  ( 99)
天下無敵の!! お兄ちゃん(後)        悠歩
★内容
         
 どうにかこうにか授業が終わって、簡単な学級会が済むとわたしは一目散に教室を
後にした。お兄ちゃんなんかには目もくれず。
「ちょっとー、待ってよ夢ちゃん」
 校門のところで優ちゃんの声がして、わたしは立ち止まったの。振り返ると、優ちゃ
んと杏(あん)ちゃんが走って来た。
「あーっ、追いついた。夢ちゃんたら、いきなりダッシュで帰るんだもん。杏ちゃん
と急いで追いかけて来たんだよ」
 息を切らせながら、優ちゃんが微笑んだ。
「ごめん、優ちゃん、杏ちゃん。わたし、お兄ちゃんがあんまり恥ずかしかったから
……」
 わたし達は家が近所同志と言うこともあって、学校への登下校はいつも一緒。わた
しったら、お兄ちゃんのことで、この子達のことをすっかり忘れていた。
「夢ちゃんのお兄さん……いいね……」
 杏ちゃんが小さな声で、ぼそっと言った。
 一瞬、わたしは冗談かと思った。でも杏ちゃんはわたしや優ちゃんと違って、もの
凄く内気でおとなしい子で、仲のいいわたし達の前でも滅多に話をしない。きっと、
クラスの半分以上の子が、杏ちゃんの声を聞いたことがないと思う。そんな杏ちゃん
が、冷やかしみたいなことを言ったりする訳がない。
「ほんとうよね、杏ちゃん。でも考え方によっては、夢ちゃんってとってもかわいそ
うなのよ」
 わたしの気持ちを知ってか知らずか、史上最強のおしゃべり娘、優ちゃんが口を開
く。
「そんなこと……ない。わたし……夢ちゃんが、羨ましい……」
 あ、杏ちゃん、一生懸命にお兄ちゃんをかばってくれるのは嬉しいけど、見たでしょ
あれ。そんなに必死になるようなもんじゃないって、あのお兄ちゃん。
「だって、考えてみなよ、杏ちゃん。夢ちゃんと純兄ちゃんは兄妹なんだよ」
 た…たしかにそうだけど、優ちゃん、ちょっと言い過ぎだよ……。
「兄妹どうしじゃ、結婚できないでしょ?」
 げっ! 何言ってんの。信じらんないよ……あんた。
「うん!!」
 驚いたことに、杏ちゃんが今まで聞いたこともないくらい元気に答えた。わたしは
目が点。揃いも揃って、この二人の美的センスは、とてつもなく寛大らしい。
 でもね、あんたらが適齢期になったときには、お兄ちゃんはすっかりおじさんだよ。
でも、意外。なーんであのお兄ちゃんが、こんなに人気があるんだろう。
         
 そりゃあ、わたしだって……
 本当はうれしかった……。お兄ちゃんが参観日に来てくれるって言ったとき。でも
素直になれなかったんだ。
 お兄ちゃんと暮らすようになって三年。いつもお兄ちゃんはわたしのために無理し
てた。わたしたのために自分を犠牲にしてきた。25になっても恋人の一人もいない。
(あの風貌じやあ、当たり前かも……)
 そんなお兄ちゃんを見ているうちに、いつしかわたしはお兄ちゃんのことを突き放
すようになってたみたい。
 この子達に言われて、改めてわたしはお兄ちゃんが大好きなんだと言うことを思い
出した。
「ごめーん、優ちゃん、杏ちゃん。先に帰って。わたしやっぱり、お兄ちゃん待って
る」
「えーっ、純兄ちゃん、懇談会に出てるでしょ? いつ終わるかわかんないよ」
「うん。でも待ってる」
「ははーん、分かったぞ。夢ちゃん、わたしや杏ちゃんにやきもちやいてるなあ」

「あーっ、図星だなあ。まあいいや。行こう、杏ちゃん。二人で純兄ちゃんを夢ちゃ
んから取っちゃう相談をしましょう」
 杏ちゃんは何も言わずに微笑んでいた。
「じゃあね、夢ちゃん。また明日」
「うん。ばあーい、優ちゃん、杏ちゃん。また明日ね」
 わたしは二人の背中を見送った。
           
「あれ、夢。まさか俺を待っていてくれたのか」
 意外なものを見るような感じで、お兄ちゃんが驚いている。
「うん」
 わたしはわざと、ちょっと力の無い調子で頷いて見せた。
「今日は……何かお前に恥かかせたみたいで、悪かったな……」
 本当よ。本当に恥かいちゃったんだから。
「お前……怒ってんのか」
 やだあ、面白い。お兄ちゃんたら、すっごく心配そう。
「別に…怒ってない」
 ちょっと意地悪で、つまんなそうに答える。
「俺、来ないほうが良かったかな……」
 あ、もうだめ。これ以上は、やっぱりお兄ちゃんがかわいそう。
「お兄ちゃん」
「ん、何だ夢来?」
「わたしね……、お兄ちゃん大好きよ」
「そ、そうか。好きか。俺のこと」
 やだ。お兄ちゃんたら、みっともない顔して。でも嬉しそう。
「よし、今から夕飯の支度するのも面倒だし……、何かうまいもんでも食いに行こう
か」
「本当!! 嬉しい」
 まーったく単純なんだから。今月だって家計はぎりぎりででしょう。ま、でも今日
はいいか。
 わたしはお兄ちゃんと夕暮れの街を、手をつないで歩いたの。きっと、知らない人
が見たら、悪い人に連れて行かれる美少女に見えるんじゃないかしら。
 ああ、そうだ。明日からお兄ちゃんに崩された私のイメージ、どうしょう。
 考えるのはやめよう。なるようにしかならないもの。
「夢……」
「ん? なあに、お兄ちゃん」
「お前の先生、美人だったな」
 あいたあ〜、始まったか……。
「ちょっとやめてよね、お兄ちゃん。百合香先生に変なことしたら、一生くちきいた
げないからね」
「変なことって…お前ね。そうか百合香先生って言うのか、あの人」
 あーあ、せっかく奇麗に終われると思ったのに……。いやーな予感………。
          
 わたし山本夢来、10才、小学四年生。美人。お兄ちゃんの事で、気苦労の絶えな
い少女……。
        
                ☆お★わ☆り★
        




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