AWC 「モニタする少年」(再UP)巻の07<コウ


        
#2420/3137 空中分解2
★タイトル (HBJ     )  92/12/ 1   7:18  (101)
「モニタする少年」(再UP)巻の07<コウ
★内容
DJA「あんまり余裕がないかもね」
DJ@「でも、初めてで、感じない、って、何に比べて感じないの?」
聴取者「なんツーか、一応、オナニー、っツー事で」
DJA「君さァ、マスターベーションする時、何を見てる?」
聴取者「結構、漫画とか好きで・・・」
DJA「なるほどねェー」
DJ@「こころ当り、あるの?」
DJA「いやー、最近こういう人って多いんですよね」
DJ@「と言うと?」
DJA「本物の女よりも、ファミコンの女の方がリアリティーがあるとかさァ
    」
DJ@「君は、あれか? 本当の女より漫画の女の方がリアリティーがあんの
    か?」
聴取者「いやー、そんな事ないんですけどー」
DJA「じゃあ、どんなんなの?」
聴取者「そりゃあー、オレも生身の女の方がいいんですけどー、何ツーか、オ
    ルガスムが少ない、っツーか」
DJ@「あー、なるほどね。そういうのって、あるよね」
DJA「あなた、そんなの、あるの?」
DJ@「生きてる女より、ポルノビデオでオナニーした方がいい、って事ない
    ?」
DJA「ないですよ、あたしは」
DJ@「でも、生身の女、って、気イ、使わない?生き物だから」
DJA「あなた、死姦癖があるんじゃないの?」
DJ@「なに? 死姦って」
DJA「死んだ女でないと、オルガスムを得れない奴がいるんですよ」
DJ@「誰? それ」
DJA「あたしが知る訳ないじゃない」
DJ@「第一、死体をどうやって手に入れるの?」
DJA「墓とか、暴くんじゃないの?」
DJ@「だって、もう骨になってるじゃない」
DJA「もういいですよ、この話は」
DJ@「俺の知ってる奴でねェー、もしもし、聞いてる?」
聴取者「えっ、ああ、はい」
DJ@「女を買いに行ってねェ、迷いに迷って、ダッチワイフを買って来た奴
    がいるよ。そいつは女よりダッチワイフの方が気持ちいいんだって」
DJA「フェティシズムの世界ですねェー」
DJ@「臭いつきパンティーとかで感じる奴? あいつ、変態かなァ」
DJA「変態じゃないですよ。恐いだけですよ、女性が。パンツには眼がない
    からね。春琴と同じですよ」
DJ@「なに? それ」
DJA「谷崎潤一郎ですよ」
DJ@「また、難しい事、言う」
DJA「いやねェ、谷崎ってフェティシズムでね、見られるのが嫌で、春琴っ
    ていうメクラを愛したんですよ」
DJ@「ヤベーッ! 放送禁止用語だ」
DJA「いけねッ」

                                          §

 夕方のラッシュの時間、俺は、新宿駅のホームにいる。ホームに入って来る
、山手線の内側のガラスは、満員の乗客の息で、曇っていた。俺の肺の内側も
曇ると思うと、不潔な感じがして、嫌だった。俺は、電車に乗れないで、何本
もやり過ごしていた。癌研究所に、7時迄に行く約束を、お袋としている。今
、6時15分。6時半まで待とう、と思った。その頃には、ラッシュもおさま
るかも知れない。
 6時30分。まだ、電車のガラスは曇っていた。俺は、キオスクで、マスク
を買った。キオスクの店員って、乞食っぽくて、不幸が伝染しそうで嫌だった
。俺は、釣銭を受け取る時に、「もしかして、不幸が伝染するかも知れないな
」と、呟いてみた。そんな事は絶対に有り得ない、と思っていても、一応表現
しておけば、何故だかそれが、取り越し苦労になるだろう、という強迫観念か
ら、呟く。
 マスクをかけても、吐き気がして、高田馬場と池袋で途中下車した。
 JRから降りた時、緊張から解放された所為か、急に腹が減った。大塚の駅
前のマクドナルドで、360円セットを食べる。今、6時55分。お袋との約
束まで、あと5分。しかし、タイの白タク殺人事件が、脳裏をかすめて、タク
シーは止める。癌研究所まで歩いて行った。

 おばあちゃんの病室は、内科で、六階だった。エレベーターを待っている間
、俺は、案内番を見ていた。ステンレスのボードにプラスチックの文字が貼っ
てあった。地下2階が、霊安室とコインランドリーだった。霊安室の「安」の
字の草冠の部分が、欠けている。(「安」が欠けてるなんて、ちょっと、それ
らしくって、いいな)
 エレベーターに乗ると、若い女がいた。女は、ピンクのガウンを着ていた。
痩せていて、顔色が茶色くて、黄色い目玉が飛び出しそうで、眉毛が一本も無
かった。頭には、毛糸の帽子を被っている。何かの治療で、髪の毛が抜け落ち
たことは明白。俺は、女に気付かれない様に、ポケットからマスクを出して、
口にかけた。「もしかして、癌は伝染するかもしれないな」と、俺は呟いた。

 病室に入ると、お袋と親戚の伯母さんがいて、おばあちゃんを覗いていた。
お袋が、俺に気付いて、近寄って来た。
「今、寝てるから」とお袋は小声で言った。「ロビーに健ちゃんが来ているか
ら、会ってきなさい」
 ロビーに行くと、従兄弟の健一がいて、けだるそうにタバコを吸っていた。
「久しぶりだな」と健一が言った。
「そうだね」
「タバコ、吸うか?」と言って、健一が、タバコの箱を差し出す。
俺は、病室の方を気にしながら、一本抜いた。
「赤い丸がドアの所に貼ってあっただろう」と健一が言った。
「そうだった? 気が付かなかったけれど」
「あれを貼られると、長いことないんだぜ」
「本当?」
「ああ」と健一は言った。「先週、来た時には、黄色だったけどな」
「それじゃあ、丸で、信号じゃない」
「そうだよ」
「でも、そんなの貼られて・・・赤なんか貼られて、患者は何にも言わないの
?」と俺が言った。
「だって、患者は見れないよ。もうドアの外には出れないんだ、生きてはね」
「すごい話」
「内科っていうのは、もう終わりなんだよ。あっちこっち切り刻んで、それで
も駄目で、ここに来るんだから」




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