#2418/3137 空中分解2
★タイトル (HBJ ) 92/12/ 1 7:14 (100)
「モニタする少年」(再UP)巻の05<コウ
★内容
スのアフターシェイブ・ローションを塗った。リステインでうがいをして、最
後にメンソレータムを唇に塗った。朝から何も食べて無い上に、二回もシャワ
ーを浴びたので、すっかり空腹だった。だけれども、何も食べない積もり。今
朝早く飲んだセンナ茶が利いて、腸の中もすっかり空っぽだ。つまり、唇から
肛門まで、全ての粘膜が綺麗なピンクというイメージ。気持ちが良かった。誰
か、大切な人に触れるという場合に、ビニール袋で2重に包んでも汚い物が腹
の中に詰まっているという事は、俺には耐えがたい事だ。VHSで自分を撮影
して、ブラウン管に映る俺を何回か確認して、それから家を出た。
渋谷のルノアールで、カヨは、漫画を読んでいた。カヨは、俺を見上げた。
見上げられるのが嫌で、俺は、カヨの向いの席に慌てて座った。
「ちょっと待ってて、これ読んじゃうから」と言って、カヨは漫画に眼を落と
す。テーブルの上には、3冊の漫画が積んであった。俺も、その内の一冊を取
って、パラパラめくる。漫画雑誌を額に近付けて、隙間からカヨを観察した。
カヨの、漫画のコマを追っている瞳が、少し内斜視で、幼い感じだった。鼻の
付け根が高くって、顔に右と左があった。俺の好きな顔立ちだった。俺は、平
面的な顔立ちが、嫌いなのだ。お盆かヒマワリみたいな、平面的な女の顔を見
ていると、こいつは、物の見方まで平面的なのじゃないか?と、思えて来る。
店の有線放送では、マイケル・マクドナルドが、かすれた声で、バラードを
歌っている。悪くない趣味だな、と、俺は思った。俺は、カヨと、何か話しを
したかった、が、タイミングが掴めないでいた。その内、ウエィターが注文を
取りに来た。俺は、「レスカでも」と言った。
それから、すぐに、「やっぱり、レモンジュースを」と言った。
炭酸を飲むと、あの時に、ゲップが出たら困る、と、思ったからだ。俺は、ウ
エィターに、愛想笑いを、送っていた。ウエィターが行ってしまうと、今度は
、愛想笑いを、カヨに向けた。しかし、カヨは、漫画に眼を落としたままで、
俺の笑みに気が付かない。俺は、愛想笑いの始末に困って、ため息をつく。
カヨは、一冊を読み終えると、黙ったまま次の一冊を手に取って、めくり出
した。俺は、カヨの置いた漫画本を取って読んだ。タバコが吸いたかった、が
、息が臭くなるので止めた。
漫画を読み終わると、カヨは、腕を組んで、俺を見ていた。今、俺が、口を
開けば、会話が出来るのに、と俺は思った。しかし、俺は、タイミングを掴め
ないでいた。俺は、漫画に眼を落としていた、が、焦点はページの上を滑って
いた。俺は、心臓が飛び出しそうだった。カヨに、見られていると、恐かった
。
「ねェ」とカヨが言った。「そろそろ行きましょうよ」
結局、台詞のラリーは0回で、喫茶店を出る。
ホテルの壁には、一面にブラウン管が埋めてあった。ハワイの環境ビデオが
映っている。全ての画面が同時に動くと、昆虫の眼の様だった。ブラウン管が
あると、俺は、安心する。会話をしなくてもいい理由が、そこには、ある。ブ
ラウン管があれば、ギャグを飛ばしていなくても、白けないで済む。もし、カ
ヨと結婚したなら、ケーブルテレビをひいて、24時間流しておこう、と、俺
は勝手に妄想した。 俺は、ベットに座っていた。カヨは、部屋の中を点検し
ている。冷蔵庫や、風呂場や、ベットのシーツを見て回り、「ふーん、そうな
んだ」と一人で納得している。俺は、なんとなく、腕時計を見てみた。手巻き
式の、古いアナログ時計で、八時十三分前を指している。俺は、八時十三分前
が8:47と理解出来ないでいた。「今、何時?」と俺は聞いた。
「そんなの、ほっトケー」とカヨが言う。
カヨが笑って、俺が笑った。俺は、あまりおかしくなかったけれど、白けるの
が恐くて、派手に笑った。
「ねェ、暑くない?」とカヨが言った。「私、シャワー、浴びて来ようかな
ァ」
そう言って、突然に、カヨは脱ぎ出した。余りにも凄いスピードで脱いで行
くので、全部脱いでしまうのか、と思った。下着だけ残してストップした。
「ねェ、これ見て」と言って、カヨは俺にお尻を向けた。「チェルノブイリっ
て言うのよ」
「何で?」と、俺は、すっかり混乱しながら、言った。
「だって、ビキニより強烈でしょ?」
カヨのパンティーは、腰骨が出る程のハイレグだった。お尻に、原子力発電所
が壊れて茸雲が登っているイラストがプリントしてあった。
「じゃあ、私、シャワー浴びて来るわね」と言って、カヨは、風呂場に歩いて
いった。カヨのパンティーは白地だった、が、ブラジャーは黒地だった。上と
下とで、違う色の生地の下着を付けるのが、普通かどうかは知らない。俺は、
何故か、おねしょをした次の晩のパジャマを思い出した。
ベットの背中の棚から、コンドームを取って、俺は、それを眺めていた。最
後に俺の肌に触れたのは誰か?と俺は考えていた。中2の時に、女の子とキス
をしたのを、覚えている。お袋や親父に、キスをされた記憶は、残っていない
。多分、一番最近、俺に触ったのは、カサカサした医者の手だと思う。カヨに
、何か言われるまでは、こんなゴムは使いたくない、と思った。
「暑い! 暑い!」と言いながら、カヨが戻って来た。「喉、乾いちゃった
よォー」
俺は、冷蔵庫からポカリスウェットを二本出して、一本をカヨに渡す。
「今度来る時には、外で、買ってこようね」とカヨが言った。
「そうだね」と俺がいった。
俺とカヨは、ベットに座って、ポカリスウェットを飲んだ。俺は、横目で、カ
ヨを、盗み見ていた。カヨは、バスタオルを体に巻いているだけ。ポカリスウ
ェットをあおる時に、バスタオルに納まり切らない乳房の膨らみが、覗ける。
飲んだ後に、ため息をつくカヨの小鼻が、かすかに膨らんで、いやらしい。
「あれって、ハワイかしら」とカヨが、ブラウン管を見て、言った。
「分からない」と、俺は、慌てて、言った。
「ハワイに住んでみたいなァ」とカヨが言った。「ハワイに行った事ある?」
「あるよ」
「どうだった?」
「暑くって、気持ち悪いだけだよ」と俺が言った。
「気持ち悪いの?」
「暑くってさァ」と俺は言った。「こうやってブラウン管で見ていた方が、ず
っと気持ちいいよ」
カヨは少し考えていた。それから「カヨはねェ、暑いのって好きよ」と言った
。「でも夏になると冬が好きなの。今は夏が好き。早く夏になんないかなァ」
「でもさァ」と俺は言った。「ハワイの盲より、こうやってハワイのシーンを
見ている方が、ずっとハワイだと思わない?」
(コメント:何故か、上の「盲」が「夏」に勝手に修正されていた。別に、差
別用語なんて、他にも、沢山、あるのに)
カヨは、それには答えない。
「タバコ、持ってる?」とカヨが言った。
俺は、慌てて、胸のポケットからタバコ出して、火を付けてあげる。タバコを
くわえたまま、カヨは、ダイナミックな感じで、ベットにうつ伏せになった。
体に巻いたタオルがほどけて、背中の谷間が見える。カヨの足が、俺のわき腹
に、当たったりする。