#2414/3137 空中分解2
★タイトル (HBJ ) 92/12/ 1 7: 4 (112)
「モニタする少年」(再UP)巻の01<コウ
★内容
(コメント:
あきちゃさんのご要望により、再UPします。
何故、消したのか?というと、
当時、もう、完全に、俺は、有名な作家になれる!と思い込んでいて、
こんな所に、有名な作家の作品が転がっていたら、大切な著作権をおかされるかも知れないし、
第一、単行本の売上が落ちてしまう、などと思っていた訳で、
しかし、今、読んでみると、顔から火が出る程、恥ずかしい、
けれども、少なくとも、当時は、これだけ書けた訳だから(量的にも)
やはり、これは、青春の偶然、というやつですか?
なるべく、海燕に提出したままで、UPします。
あと、編集者に色々言われた所は、コメントを入れておくのだ。
あと、見られてこまる所は、*にしておきます。
それから、言い訳ではないのだけれども、これは、例の宮崎事件の前に書いたもので、
宮崎事件をヒントにした訳ではない。
もっとも、当時の「人間大学」みたいなのを、そっくり、いただいたのだけれども。
いや、そうではなくて、前々から暖めていたネタに、あのテレビのおかげで、筋が通ったという事でしょう。
<ラスト1>が、最初に提出したもので、<ラスト2>が、差し替えたものです。
顔から火が出る程、恥ずかしい、なんて言ったけれども、
思うに、この頃は、平気で、嘘もつけたし、
要するに、恥知らずの大嘘つきが、作家の条件ではないのか?
提出 :1989年 6月頃。
最終選考:1989年11月号の「海燕」
(この時の授賞者の石黒達昌という奴は、くりさんの知り合いではないか?
そんなに世間は狭くないか?)
掲載 :1990年 7月号の「海燕」(13万貰った)
なんと、つい最近まで知らなかったのだけれども、1990年の8月号(多分)の
「群像」の合評で糞味噌に言われていました。講談社からは、1円も貰っていません。
連絡もありません。
)
題 :『俺のいない何処か』(原稿用紙換算枚数:約93枚)
(コメント↑これは、嘘)
(コメント:この題は、駄目で、じゃあ、「モニタする少年」では?と言ったら、それでいい、と言われた)
住 所:(連絡先)〒150東京都渋谷区神山町1−9和陽荘1F−2号室
(実 家)〒193東京都八王子市**************
氏 名:関口幸一
年 齢:28才
電話番号:(連絡先)03−465−4246
(実 家)****−**−****
『俺のいない何処か』
関口幸一
春休みの講習で、俺は、代々木の予備校に来ていた。俺と哲也は、デカイ教
室の一番後ろの席に座って、日本史の授業を受けている。マイクを首にぶら下
げた講師が、遠くで、何か喋っている。何を話しているのか良く聞き取れない
。マイクが悪い訳ではない。大勢の人の中に居ると、俺は、なんとなく耳なり
がするみたいなのだ。俺の部屋以外の場所で、俺は、よく聞き取れない。俺の
部屋以外の場所で、俺は、何時も縫いぐるみを被っている気分だ。俺の外で起
こっている事どもが、なんとなく白々しい。俺の眼が、直接世界を見ている、
という気がしない。縫いぐるみの穴から覗いているみたいに感じる。俺は、俺
の部屋にいる時以外は、世界に対してリアリティーを感じない。俺は、俺の部
屋にいる時以外は、俺の受信スイッチをOFFにしている。講師の姿は、万華
鏡の底にへばり付いているセルロイドの切れ端みたいに、遠くに、ぼやけてい
た。
俺は、さっきから苛々して、何かを捜していた。初め、俺は、何を捜してい
るのか自分でも分らないでいた。今、気付いたが、俺は、VHSのリモコンを
捜していたのだ。よく、人の話に退屈したりすると、俺は早送りしてやりたく
なる。生きている人間を早送りしたいなんて、俺は変なのだろうか? 或は、
これは、世代的な性癖かもしれない。もし、俺達にも世代があるのならば、そ
れはこんな世代だ。俺達の世代は、VHSで見たい所だけ、モニタする世代だ
。俺達の世代は、全部は見ない。俺達の世代は、つまみ食いをするだけだ。俺
達の世代は、前と後がない。俺達の世代は、線ではなく点で存在するだけだ。
だから、俺達は退屈な大人どもに、初めから終わりまで、つき合えない。(ふ
ん! 聞いた事のある台詞だな。何処かのオジサンが言ってたぜ。腐っている
よ) ↓ここに、外字で、壊れたデジタル文字があるのだ。
腕時計を見たら「「、」。」なんて表示している。電池が切れかかっている
のだろう。俺は、あと何分ぐらい退屈しなければならないのか? 俺は苛々し
た。教室の正面に掛かっている時計を見てみた。遠すぎて、見えない。時計の
下の「日々是決戦」・「親身の指導」という張紙も、「日々是決算」・「親身
の集金」という落書きも見えるのだが、時計は、幾ら眼を細めても見えない。
哲也に時間を聞こと思っているのだが、さっきからタイミングが掴めないで
いる。俺は、首は正面を向いて、眼だけで哲也を見てみる。哲也はノートに漫
画を描いていた。青ガエルがアーガエルチェックのベストを着ている漫画。青
ガエルは「お元気ですか! 井上揚水宅、床上浸水」という台詞を吐いている
。青ガエルの下には「NTT真藤会長、3000万円の御食事券。食べ過ぎに
注意!」という落書き。「シンディー・老婆」「乱暴V」という落書き。ノー
トの端に「イクヤマイマイオヤイ・カワタハワイサオヒハ」と書いてあった。
結局、時間を聞けないままに、チャイムが鳴った。俺と哲也は通りに吐き出
される。無数の匿名の背中が代々木駅まで続いている。こいつらにまみれてい
る間は会話をしなくてもいいな、と俺は思った。今の内に、後で哲也に飛ばす
ギャグを思い出しておこう。ギャグさえ飛ばしていれば白けないで済むし、傷
つかないし傷つけないし、安全だ。俺は夕べの深夜放送を思い出してみた。し
かし、ギャグがなかなか思い出せないで、俺は苛々した。その内、俺と哲也は
山野愛子ビルの辺りを歩いていた。会話をしないと不自然な程、通行人は疎ら
だった。俺は焦った。俺と哲也は、小田急線の踏切で足止めを喰った。もう、
白ける寸前だった。俺は仕方無く「鴻上」のネタでも吐こうかと思った。俺は
哲也の方を見た。哲也はウォークマンを聴いていた。俺も慌ててヘッドホンを
はめる。俺は安心した。
鉄道病院の近くの自動販売機でピアを買った。哲也と別れてからキオスクで
買った方が良かったかも知れなかった。しかし、キオスクの店員って、乞食っ
ぽくて、不幸が伝染しそうで嫌だった。自動販売機の取り出し口からピアを取
り出している間、哲也がずっと俺の背中を見ていた。俺が立ち上がった時、哲
也と眼が会った。哲也の方から慌てて眼を逸した。
新宿駅西口で、俺と哲也は別れた。結局それまで、一言も話さなかった。別
れる時に「後で電話するから」とだけ言っておく。
「じゃあな、ヒロシ」と哲也。 RUNの間違え。
↓
新宿御苑前で、黒人が三人乗って来た。奴らは「RAN・DMC」の派手な
トレーナーを着ていた。肩にラジカセを担いでいる。奴らは地下鉄の中で、踊
っていた。俺の近くに、来たりする。奴らは、俺の鼻先までにも近付いた。俺
は恐かった。俺は、俺の受信スイッチをOFFにする。俺は、何も感じなくな
る。