#2246/3137 空中分解2
★タイトル (TEM ) 92/10/ 7 21:58 ( 27)
場所固定>つきからのてがみ うちだ
★内容
ようこちゃんへ
お元気ですか。私の船が月面に無事到着してはや12日。観光コースになって
いるアポロ記念碑や有名なジョルダーノ・ブルーノ・クレーター、それから危
難の海とかも見ました。ホテルはNASAとプリンスホテルが提携しているの
で、ほんっとーにキレイで良いところです。←オススメ。でも新婚さんが多い
よ。あれって蜜月(ハネームーン)とひっかけてあるんだよね、きっと。あと、
意外だったのが地球人よりもタカチホ星人の観光客が多かったこと。私たちが
建物から出て月面を歩こうと思ったら宇宙服をレンタルしなくちゃならないん
だけど、タカチホ星人は灼熱の1000度でも零下−800度でも軽装で外に
出られるんだよ。体の構造が根本的に違うみたい。私が途中で乗ったリムジン
で隣あわせになったタカチホ星人の親子なんて水着をきてて、「静かの海に泳
ぎにいくの」なんてはしゃいでた。さすがに空気ボンベはしょってないと駄目
みたいだけど、重力が6分の1でしょ?たいしたことないよね。彼らにとっちゃ
、私たちが地球でスキューバダイビングをする程度の事みたいだった。
・・・・・・・なんか、悔しい。
かぐや姫のお話し、父の肩車で見た十六夜の月、ムーンライトセレナーデ、ア
ルテミスの伝説、人類は随分と昔から月と親しんできたと思っていたの。それ
なのに、今世紀初頭に銀河系外からはじめてやってきたばかりの知的生命体、
静かの海で泳いできたタカチホ星人のほうがずっと、月と親しんでる。
私は今、こうして月に来ているけど、月は以前より遠い存在になってしまった
みたいな気がします・・・というより、遠くで見ているべきものだったかもし
れないね。地球からなら、遠かったけど宇宙服もガラスも介さずに月の姿を見
ていられたもの。この手紙がつく数日後には、地球に帰っていると思います。
ちゃんとようこちゃんへのお土産も買ったからさ、無事地球に到着するように
祈っていてね。じゃあまたねん。ばいばい。
2034年10月31日 やすこ