AWC    悩ましい夜が更けて       椿 美枝子


        
#2245/3137 空中分解2
★タイトル (RMM     )  92/10/ 7   1: 5  ( 32)
   悩ましい夜が更けて       椿 美枝子
★内容
 悩ましい夜が更けて、また、こうしてやり過ごす。一晩中話している。相手は、
毎夜電話をしてくる男性。

 手酷く振られたその痛みが心地良いと言う。私に悪女を演じさせ、私をなじり、
最後に私に聖母を演じさせる。

 心に秘めた言葉。
 私だって夜はつらいのよ。
 私だって、夜は、一人なのよ。

 誰もが自分だけ不幸だと思っている。
 夜は甘美で退廃的に何もかも感傷にすり替える。

 悩ましい夜が更けて、朝になる迄。
 狂おしい夜が更けて、朝になる迄。


 これは何人目の夜の生け贄か。


 電話が鳴る。私は孤独から逃れる為の術を知らない。呼出音にあらがう為の術
を知らない。睡眠はいつもどこかにいってしまう。そして、足音を忍ばせ戻って
来ては、知らないうちに私を閉じ込める。

 今夜も一晩中話している。


                       1992.10.6.10:45

                  終

          楽理という仇名 こと 椿 美枝子




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