#2086/3137 空中分解2
★タイトル (QUB ) 92/ 8/22 19:59 ( 64)
大都会に中の熱き戦場(5) グレイ
★内容
新宿警察署の捜査四課を訪れた早瀬は、警部補として勤務しているはずのジャガー
こと、兜 霊周を捜したが、見当たらなかった。
丁度、そばを通り掛かった若い刑事を捕まえた早瀬が兜の居所を問いかけると若い
刑事は、不審の目を向けながら訪ねるのだった。
「兜警部補にどんな御用ですか?」
丁寧な言葉とは裏腹にまさに刺す様な視線を向けて問いかける若い刑事に早瀬は、
しらっとして答えた。
「何ね、昔なじみでね、近くまで来たものだから、仕事に支障が無ければ話でもと
思って覗いて見たんだよ」
早瀬が装った田舎者の様なしゃべり方に気を許したのか、若い刑事は兜が仕事をさ
ぼって歌舞伎町のクラブにいる事を教えてくれた。
若い刑事に礼を告げた早瀬は、そのクラブ【狂夜祭】に出向いて見た。
極彩色の時代遅れのネオン看板を脇に見ながら店内に入った早瀬にいち早く兜の声
が飛んで来た。
「おいっ、ウルフじゃ無いか、久しぶりだなぁ、こっちへ来て一緒にやろうや」
「お前を捜して来たんだぜ」
兜の呼びかけに、席まで歩み寄った早瀬が毒づくと、兜の酔いに任せた顔が真顔に
一変した。
「さすがバッカスとあだ名されただけはあるな、酒に飲まれてはいない」
早瀬のそんなからかい言葉も無視した兜は言い継いだ。
「何かあった、だから俺を捜していたんだろう?」
「察しが良いのも考え物だな、まぁその通りだ」
ホステス達を下がらせた兜が早瀬の話を促すと、早瀬は草薙に語ったのとほぼ同じ
内容を話した。
「それで、俺に何をしろと言うんだ」
聞くとも無しの兜の言葉に、早瀬は言った。
「今、情報源にかまきりを使っている、奴の組と情報源が別件で行動障害を受けぬ
様、手配して欲しい」
「それから?」
「俺の銃器不法所持の見逃し」
「後は・・・」
「お前自身の協力だ」
「お前なぁー」
最後の方はいい加減に聞いていた兜が、更にあきれる様な要求を早瀬はした。
それでも、協力を約束した兜が今夜の飲み代はお前持ちだと言い出すと早瀬は快く
引き受けたのだった。
その夜、急用と偽ってバイトを休んだ沙織は部屋でぼんやりと早瀬の事を考えてい
たのだが、自室に引き込んだ電話のベルで我にかえった。
電話そのものは、何気ない男友達からのものであったが、その話の中に早瀬の名が
出て来ると、先程迄の考えが頭をもたげ始めた。
電話を切った沙織は、再びだが今度は真剣に早瀬の事を考えて行った。
・・・私は、早瀬に幾ら好きだと言われても応じ無かった。
・・・だけど、早瀬は私をいつも好きだと言ってくれる。
・・・早瀬と揉めていた男は何者?
・・・その後、私を襲った女と関係があるの?
・・・あの時、私を助けてくれたのは、早瀬?
そんな考えを巡らしている内に、沙織は自分の心の中で誰の存在が一番大きいのか
に気付いていた。
「私は、早瀬ちゃんが好き、愛してる・・・」
そう言葉に出して言って見た沙織は、自分の気持ちを改めて確認すると、早瀬を呼
び出すべく長い間しまいっぱなしにしていた早瀬の電話番号を捜し出しに掛かるのだ
った。
1992/08/22 QUB38517 【神奈川】 グレイ