#2021/3137 空中分解2
★タイトル (AQA ) 92/ 8/ 7 8:14 ( 47)
物品巡回>通信ソフト ゆうた
★内容
「菊池ぃ、お前ん家パソコンあったよなぁ。」
「おう、それがどうかしたか?」
「昨日さ、変なディスクがうちに小包みで届いてたんだよ。うちにはパソコン
ないから、ちょっとお前ん家ので・・さ。」
「おいおい、そりゃ危ないぜぇ?安易に起動させて壊れたりしたらどうすんだよ。」
「大丈夫だよっ!じゃあ部活終わったら行くからな!」
「おいっ、柳沢っ・・・しょうがねえなあ。」
結局何が大丈夫なのかはっきりしないまま僕は帰宅して、押し入れから磁気検査器を
引っ張り出してきた。パソコンにうとい父が、フロッピーには磁気厳禁だと聞いて、
ガードを固めるために通信販売で5万もする器械を買ってしまったものだった。
暫くして柳沢が来た。珍しい紫色のフロッピーを持って。
「これこれ!なんかのHゲームだったらいいなあ!」
「・・・・ラベルもついてなかったのか?」
ただ小包みの中にこれだけ入っていたのだという。いよいよ気味が悪くなって磁気を
確かめたりヘッドを覗いてみたりしたが異常な所はなさそうだった。
柳沢がせかすので仕方なく僕は電源を入れてフロッピーを挿入した。
ランプが今迄見たこともない動きをした。DOSともBASICともつかない画面が
ちらっと見えて、それからグラフィックが現れた。
[ル・サイファーネット 専用通信ソフト]
「パソコン通信か!」
僕はモデムの電源をつけてから何度も念をおすように柳沢に心当たりがないか訪ねた
が、返答は一様に「ない」だった。
一度アクセスしてからはすっかり僕たちはこのネットの虜となってしまい、2人とも
学校が終わると飛んで帰ってアクセスするようになった。
僕たちが好きなのはチャットで、ここでは沢山の人がまるでそこにいるかのように
僕たちと会話を楽しんでいた。不思議なことには、僕たちのその日の気分によって、
落ち込んでいるときは励まされるようなメッセージが、楽しい気分の時にはそれを
煽るようなメッセージがアップされていることだった。
始めは偶然かと思ったが、段々会話を重ねていくうちに、まるで自分達の行動が
読まれているのではないかという不安が心のどこかに芽吹き始めた。
「ちょっと気味が悪いな。やめようか。」
柳沢がいうので、終了メッセージを出すとぎりぎりでメッセージが飛び込んできた。
「明日のテスト、頑張ってくださいね。」
一度も話題にしてないのに!なぜこの人は!
それから2人は通信をぱったりとやらなくなった。なぜか2人ともいつも誰かに
見られているようで、ついには自分の身内まで、そして互いに疑心暗鬼の心を持つ
ようになっていった。
暫くディスクケースに保管してあったあのディスクは、或る日学校から帰ると、
なくなっていた。
机の上には一枚の葉書。消印もおされていない。
「おいしい魂を御馳走様でした。」
は?