#1954/3137 空中分解2
★タイトル (PPB ) 92/ 7/17 6:34 ( 47)
本物のおばさん 遊 遊遊遊
★内容
敗戦直後の昭和22年、東海道線上りの普通列車。車内は超満員、人間のす
しづめで、どの人も身動き出来なかった。進駐軍(占領軍)の特急列車が追い
抜いていく。占領軍の列車はガラガラで、食堂車で食事をしながら、アメリカ
人たちは家族づれの快適な旅をしていた。戦争に負けた日本人たちが詰め込ま
れた地獄列車を見下しながら・・・・・・・
各駅停車の長距離列車は、駅に止まり、発車するたびに、人の将棋倒しを繰
り返し、あちこちで悲鳴の声を聞いた。人間圧縮箱のような車中で、人々は黙
って耐えていた。列車は米原あたりを走っていた。中ほどから誰かの声があっ
た。顔面蒼白になって、脂汗を流した十代の娘さんが・・・・・
「すみません、 お便所へ行かせてください」
「ちょっと通してやって」
「おーい! みんな 困った時はお互い様だっ、通してやれよ」
「すみません、お便所、お便所・・・」
娘さんは泣きながら必死で人をかきわけていく・・・
「おねえさん、早く通りな、おーい! みんな 通してやれよ」
「もう少しだ! 娘さん! 我慢せーよっ」
「ありがと! お便所、おべんじ・・・・・」
泣きながら人をかきわける娘さんは、もう限界に達している。
・
・
「ここまで来ても、便所の中も人で満員だよ」と、無情な誰かの声!
間に合わなかった! 娘さんは力つきた!
汚物を垂れ流し、泣きじゃくる娘さん!
飢餓の時代でも、ウンコは臭い。超満員の車内が悪臭で満ちた。 彼女は死ぬ
よりも辛い恥ずかしさに、涙もかれて震えていた。 汽車が次の駅に着いた。乗
降客が鼻をつまみ、見つめる中を、放心状態の彼女は汚物を落としながら降りて
いった。 その後から、おばさんがありったけの布で、汚物を拾いながら下車し
ていった。
おばさんはホームで娘さんの汚物をとり、水で布を洗い娘さんの体を拭いてあ
げていた。
「ひとりなの? どこまでいくの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
車中の全員が、彼女の母親だと思っていたが、おばさんは赤の他人だった。
1992−07−17 遊 遊遊遊(名古屋)