#1950/3137 空中分解2
★タイトル (LYJ ) 92/ 7/16 22:58 ( 44)
カエルの湖 やまもも
★内容
湖を長期に渡って支配していたコウノトリが老衰で死んでしまった。カエル
たちは嘆き悲しんだ。毎日毎晩、カエルたちは哀悼の歌を捧げた。
神より遣わされし湖の偉大なる我らが大王は再び蒼天へと飛び立ちぬ
悲しみの声は湖上に広がり浪となり流れる涙は湖に満ちて水嵩を増す
花を献げ酒を捧げ歌を唱わん偉大なる大王は我らが心の中に永遠なり
カエルたちはコウノトリの死を心から悼み、そしてみんなで大いに語り合っ
たものだ。いかにコウノトリが偉大で慈悲深い大王であったかを。とりわけ、
コウノトリが自らの意志で一日に食べるカエルの数の上限を明確に定めたとき
には、カエルたちはコウノトリの慈愛溢れる情け深い行為に心を強く打たれ、
そして深く感謝したものである。
その昔、神様がカエルたちの願いを聞き入れ、丸太の代りにコウノトリをこ
の湖に遣わされた頃、コウノトリはカエルたちを見つけ次第、その長い嘴でつ
まみあげては一口に呑み込んでいったものである。湖で平和な生活を送ってい
たカエルたちは驚愕し、恐怖に襲われ、パニック状態となってただひたすら逃
げ惑わなければならなかった。だが、情け深いコウノトリが食膳に供されるカ
エルの数を明確にし、そのことを高らかに宣言したとき、また湖に平和が戻っ
てきた。
その後、カエルたちは自らや身内のものがコウノトリに献じられることをこ
の上ない名誉と感じるようになった。コウノトリの食膳に供されるためには、
まず容姿が整っており健康でなければならず、さらに徳を積み、善行を行った
カエルであるとの評価を得なければならなかった。だから、カエルたちは誰も
がコウノトリに食べられることを無上の光栄と思うようになった。食用のカエ
ルとしてコウノトリに献上されることが決ると、親類一同みんなで盛大にお祝
いをして大喜びしたものである。
だが、そんな慈悲深いコウノトリももうこの世にはいない。コウノトリの死
後、湖には混乱が訪れた。コウノトリによる上からの強力な統治に慣れきって
いたカエルたちはすっかり自治能力を失っていたのである。餌の奪い合い、雌
の取り合い、縄張り争い…、無秩序状態のなかでカエルたちは相互に醜く相争
った。混乱のなかで、カエルたちは秩序を希求するようになった。秩序、ただ
秩序のみを彼らはひたすら欲するようになった。
では神様に頼んで、湖に再び秩序をもたらす力を遣わしてもらおう。そこで
はカエルたちの意見が一致した。では、具体的には何を神様から授かればいい
のか。ここで意見がまた分かれた。ワシだ、タカだ、トンビだ、ハトだ。ヘビ
だ、ワニだ、ネッシーだ…。湖の混乱は一層拡大した。個別の利害問題に加え
て理念問題が加わったのだから、争いは一層拡大し、激しいものになった。い
までも湖ではカエルたちはタカ派だハト派だと分かれて争っているそうだ。