#1836/3137 空中分解2
★タイトル (WJM ) 92/ 6/19 16:20 (191)
=-=-=LONG LONG AGO=-=-= /けい
★内容
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-=-=-= タイトル -=-=-=
-=-=- long long ago -=-=-
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【1】
自転車で軽快に”緑公園”の中のレンガ色の道を飛ばしていた。
「びゅうーーーん」
気分はレーサー。
髪をなびかせながら緑の心地よい風を受ける。
真夏の太陽の下、元気に青々と立っている木々。
太田は別に何か目的があって自転車をこいでいるのではなかった。
ただぶらっとサイクリング。
そんなに広くはない野球場まで来ると自転車を降り近くのベンチに座った。
球場では小学生ぐらいの子ども達が、野球の練習をしていた。
太田はしばらくそれを見ることにした。
カキーーン カキーーン
バットの金属音が公園によく響く。
真剣な子供らの汗ばんだ暑そうな顔。
野球がとても好きなんだろうな。
この中からプロ野球に行く子いるかな。
そんな事を想像しながら見ていると一人の子どもがやってきた。
「すみませーん ボールとってくださーい。」
ゴロゴロとボールが太田の足元へ転がってきた。
「よーし。」
そのボールを拾うと、太田は振りかぶって投げてみた。
ボールはその子どもの頭上をこえた。
「ごめんごめん。」
頭をかきながら太田が謝る。
それでもその子どもは
「ありがとうございました。」
と言ってくれた。
それからまたしばらくその野球を眺めていると、突然後ろから声がした。
「おにーちゃん 待ってるんだからね」
声の方へ振り向くと稚園ぐらいだろうか、小さな可愛らしい白い服を
着た女の子が立っていた。周りを見ても近くには太田しかいない。
「おにーちゃんって」
そういい自分の方を指さす。
しかしその小さな女の子は何も言わずただ太田の目を見つめる。
クリッとした大きな目。一瞬ドキッとしたのが自分でも分かった。
あまりにその目が、不思議な感じに襲われる神秘的な目だったから。
「どうしたの?」
ただその子は太田の目を見つめるだけ。
その目の奥に何か別な世界がありそうな、、そんな目だった。
そして太田は目の中に涙をみた。
やがてその目は空を見上げ
「お母さんがよんでる。」
そう言った。
「へ?」
太田も雲一つない空を見上げる。
まぶしくて、とてもまともには見れない。
「お母さんってどこにいるの?」
呼ぶ声など聞こえなかった太田はそう言いその女の子の方を見た。
しかしそこには誰もいなかった。
蝉がいっそううるさく鳴き出し暑い。
【2】
「だぁかぁらぁ、その後すぐ走ってどっかいったんだろ」
太田の友人田村がジュースを飲むのを中断して言った。
そしてまた飲み始める。
「いや、絶対消えたんだ。」
太田が確信を持った声で言った。
太田がこうもあの女の子が消えたと言い張るのは、
あの子の目のせいだ。純粋な目、可愛らしい目だった事はもちろん
うまくは表現できないが不思議で、神秘的な目だった。
一瞬あの目の中に違う世界を見たような感じだがした。
あんな感じに襲われたのは初めてだった。
ジュースを全部飲みおえてから、田村が口を開いた。
「あのなぁ よく考えてみろよ。人が消えるわけないだろ。
常識で考えてみれば分かるだろ。消えないとなると
その子はどこかに行った。しかし行くところを見なかったというのなら
お前が見えないぐらい早く走っていったんだろ。」
「でも、実際消えたんだって。」
田村はしばらく間をおき
「切りが無いからこの話はやめよ。」
何も言わず考え込んでいるのか、うつむいている太田。
「うん、まぁ...なぁ.....んー..
それよか どっか遊びにいこうぜ。な?忘れよ忘れよ。」
そういう太田をみて、田村が言った。
喫茶店を出た二人は近くのゲームセンターで少し遊びそして分かれた。
【3】
空を見上げると雲一つ無い空にまん丸い大きな月がその中の兎がみえた。
どこまでも続く海。その砂浜にいた。聞こえるのは波の音だけ。
砂浜に座り込み行ったり来たりする波を満月の光でみている。
「おにーちゃん」
後ろから声がし振り返るとあの子が立っている。
夢、あの子にあった日から何度も同じ夢を見る。
太田が何かその子に言おうとする時に決っていつも起きてしまうのだった。
汗をかいているTシャツのお腹の辺りをバタバタとし上半身に風を送った。
昨晩暑くて寝れなかったので、ジュースを飲んで寝た。
その時飲んだ温くなってしまっている、残りのそれを、ベッドのすぐ隣に置いてあるテーブルから取る。そしてそれを一気に飲み干した。
といっても微々たる量だったが。
そして最近買ったコンポのリモコンをとり、赤いボタンを押す。
するとコンポの口から乗りのいい音楽が流れてきた。
上はそのままで下だけジーパンを着て、朝食であるラーメンを作り、歯を磨き、
ドライヤーで髪をいじり、そして映画館へと家を出た。
日曜日だったののと、話題作だったのとで、映画館は人でいっぱいだった。
隣には誰もいない。友達に映画の好きな奴がいないためだ。
月一本ぐらいならつき合ってくれるが、さすがに三本四本となると。。。
その映画は、最後主人公が死に、そのもう戻らない主人公を女の子が悲しみ泣きじゃくる、そういう場面で終わった。場内にはすすり泣く声が聞こえた。
涙もろい太田、少しほんの少し泣いた。
「おにーちゃーんっ!!」
場内の電気がパッとつく瞬間に叫ぶあの声が聞こえた。
いや、聞こえたような気がしただけだろうか...
キョロキョロと周りを見渡しても何もなし。
そして次々と席を立つ人々につられ太田は席を立ち、その波にもまれて映画館を出た。
【4】
ラジオのDJの陽気な声。太田の部屋のコンポから流れてきている。
太田はあの声が気になって気になってしょうがなかった。
やっぱり考えすぎなんだろうか。
よく考えれば、田村の言うとおり人が消える分けないよな。
あの声はそういう事ばかり考えるから聞こえるのであって、気のせいだよな。
太田はだんだんとあの気になっていた目も忘れてきていた。
いったい、こんなに気になる目とはどんな目だったんだろう。
ラジオは今流行の曲を流している。それを太田は消した。
今まで騒がしかったからか、恐ろしいほどの静けさが部屋をおどずれた。
太田はカーテンを閉めるため、窓の方へ行った。
そして何気なく外を見た。雲一つ無い夜空に、星が、まん丸い月が。
それを見て太田は車のキーを取り出した。
車は寂しい夜道を走っている。どうして車に乗ったんだろう。
ふと、海を見たくなった。あの夢のような海を。
それ以外は不思議な事に何も考えなかった。ちょっと言い過ぎかもしれないが
気づくと車に乗っていた、、そんな感じだった。
当然どこどこの海へいこう、そして何時に帰ろう。
そんな事は全然考えていない。太田の住んでいるところは、決して都会じゃなかった。
どちらかというと、田舎だろうか。
30分ぐらい車で走った。車を止めドアをあけカギもかけずに降りた。
そして暗い林を満月の光を頼り進んだ。波の音が聞こえ、塩風が。
夢と同じそんなに広くはない林に囲まれた砂浜。
それを見てあまりにも夢と同じだったため、太田は呆然と立ち尽くした。
しばらくしその砂浜へ入り座ってみた。
波の音を聞きながら、もしかしてあの子が夢のように来るんじゃないかと待っていた。
どのぐらい時間が過ぎただろう。あの子の事はあきらめ今までの事を振り返っていた。
高校時代、中学時代、小学時代、そして幼稚園の頃。
記憶はそこまでだった。それ以前は何を思い何をしていたのか思い出せなかった。
月の光がキラキラと波に反射しいる。
「おにーちゃん。」
突然声がした。あの子だっ!あの声だ。一瞬にして太田の胸は高鳴った。
振り返ればこれは夢、そうなってるんじゃないだろうか そういう思いが
一瞬心をよぎる。しかしゆっくりと振り向いた。
あの子が、ポツンと立っている。そして太田の横に座った。
「おにーちゃん、やっと来てくれたのね。ねぇお話しようよ。」
笑ったクリッとした目の中に太田がいた。
その目はやはり神秘的で、深く広い目だった。目は海底のように静かだった。
「どういうこと? お話って。それに君は誰?」
その子の目は太田の目から、遠い水平線へうつる。
「やっぱり忘れてしまったのね。しょうがないか。あんなに毎日遊んでくれたのに。
あんなにいろんな所につれていってくれたのにね。」
目は水平線をジッとみている。その子の大きな目からは涙が流れそれが
小さな頬をつたわり砂浜に落ちる。ポト、ポト、ポトと。
「ねぇ おにーちゃんお話してよ。」
そして涙声でそう言った。
見つめるこの子の目の中に、遠い遠い昔を、草原でこの子と走り回り遊んでいる自分を
夜海の砂浜でしずかにこの子に話をしている自分をみたような、、、、、、
そんな気がした。そして太田の目からも涙が。なぜだろう。
聞こえるのは波の音、波の音だけ。
END
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