AWC チェイス・ゲーム(5)        クリスチーネ郷田


        
#1706/3137 空中分解2
★タイトル (MEH     )  92/ 5/16  12:42  ( 90)
チェイス・ゲーム(5)        クリスチーネ郷田
★内容
香港上空
 スピナーは香港の上空を旋回していた。
様々なネオンサインが輝いている。本多はナビ・システムの案内に従い、「KIM」氏
のマンションを捜した。
「確かこのへんだと思ったが……。あっ、あそこのマンションだ。」
ゆっくりとマンションの屋上に降り立ち、スピナーのドアを開けた時。

上空から降りたった者がいた。
「おつかれさん、本多昭くん!!」
ダグラス・マクシム社製のパワードスーツ(装甲強化服)を着込んだ「ジュウオウ」が
叫ぶ。
彼は長い電磁ブレードを持っていて、その光が青白く周囲を照らしていた。
「ハッハッハ!!本多君、面白いだろ、これ。これで君を切り刻むって寸法だ。随分絵
になるだろ?なあ、ものすごく興奮するよな!!」
「なに言ってやがる!」

本多はドアを閉めてスピナーのキーをまわした。エンジン音が高まり、スピナーはあっ
と言う間に空高く飛び上がる。
ジュウオウは、背中にしょっているブースターを点火し、追跡を始める。
一気に飛び立ち、本多の乗るスピナーの間近に迫った。

本多はさらにアクセルを踏み、上空への急上昇を続けた。
だが、ジュウオウのスピードはそれを上回っていた。

「駄目だ……追いつかれる」森田が叫ぶ。
「くそ、振り切れないだって!?そんな事があるもんか!」

「ジュウオウ」は、「分析」をしていた。
「予測不可能な出来事の発生関数が高い。今回の襲撃は失敗に終る可能性がある……」
「そんな馬鹿な事があるか?あとはスピナーを電磁ブレードで真二つにして、ジ・エン
ドじゃあないのか?」
「その可能性は50%、あなたの努力により多少の変化はあるでしょう」
「50%だって?俺の作戦の成功率はそんなに低いのか??」

ジュウオウは今、まさにスピナーの間近に迫っていた。
「これで終わりだよ、な!?」
電磁ブレードが、ブン、とうなる。

だが、それは空振りに終った。
ガキッ、と言う音がして、ジュウオウは下方に落ちて行った。

上から何者かの強烈な蹴りが入れられたからだ。
ジュウオウは、青くペイントされたパワードスーツを着た男に蹴飛ばされていた。
「俺のお客さんになにしやがる!!」
青いパワードスーツの男は怒鳴った。
「あっ!KIMさんじゃないか」
本名、ロジャー・バックス。CIAの腕利き刑事で、あらゆる事件を追ってすでに15
年は経過している。彼の解決した事件は数多いのだが、いまだに評価はされていない。
「大丈夫かい、本多くん!!間一髪だったな」
「いや、本当に危なかった。本当に有難う、このお礼はいつか必ず」
「ハッハ!!いいんだよ。ただ、君のコレクトしている古漫画の一部をくれるだけでい
い」
「うーむ、痛いところだが、とっておきのコレクションを渡すよ。」
(くそっ、やはりそれが目当てか。これだからマニアは困る)

ロジャー・バックスは、変わった男であった。厳しい仕事のはけ口が、彼を「物集め」
の趣味に没頭させているのだろうか。それとも幼少時の体験か何かが原因だろうか。と
にかく彼は、物集めでは誰にもひけを取らない男であった。彼は自宅のマンションに本
多たちを招き、急速睡眠カプセルをくれた。
一粒で8時間分の睡眠を補給出来ると言う薬。この薬が効かないと言う人もいるが、そ
うした人々は病気か、脳に障害が発見されるのが常であった。もちろん休養を取ると薬
の効果は増大するのだが、今はそんな暇は無い。今いる場所も安全とは言えない。「ジュウオウ」は多分すぐにやってくるだろう。

KIMことロジャーはあらゆる情報を提供してくれた。こんな事が知れたらCIAを退
職するだけでは済まないだろう。国家機密に関わる事まで出てくるのだが、それらの情
報を惜しげもなく語ってくれる。ただ、「ここだけの話だが」と言う前提は一応あるの
だが。

「本多君、ものは相談だが、私も同行していいか?これは犯罪のにおいがする。」
「もちろんだとも。それにしても恐ろしい話だな!」
「まったくそのとおり。間違いなく君はどこかで「ポインタ」を打ち込まれたんだ。君
の行くところには必ずジュウオウがやってくる。奴は個人所有の人工衛星まで持ってや
がるから、誰が何処に行ったか追跡するのもお手のもの、ってわけだ。」
「セントルイス・国際プライバシー保護法違反よ、それって」
本多智代は腹を立てて言った。
「それを外す事は出来ないのかな」
「私は残念ながらそんな技術は無い。難しい手術らしいんだ。ポインタが恐ろしく小さ
い「マイクロマシン」なものだから、発見も困難だし、もし自動的に脳内に到達するよ
うなやつだったらもう手がつけられない。しかも、それに時限爆弾か何かがついている
となると……」
「わざわざそんなものを打ち込んでまで俺を追いかけたいのか!!」
本多昭は怒鳴った。斉藤祥子は涙ぐんでいる。森田雅夫は真剣な表情で話を聞いている。
「興奮するなって!!とにかく君は今、逃げる事だけを考えなくてはいけない。私も協
力するから、そう心配するなよ。」
「有難い、KIMさん。でも、これから何処に向かえばいいんだろう?」
「ただ逃げているだけじゃ面白味が無いだろ。敵の本拠地に乗り込もうじゃないか。目
的地は、カリフォルニアさ。その前に、香港の案内をしてあげよう。「新世界」には行
く価値があると思うよ。」




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