#1552/3137 空中分解2
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Rock'n Roll Cinderella (3)Farlia
★内容
* * *
舞はベットに腰を掛け、俺はこの部屋に一つしかない椅子に腰を掛ける。
舞の姿はというと、腰まで届きそうな長い黒髪に清楚な顔立ち、ついでに
この寒い中ミニスカート………う〜ん、おまけにとっても可愛い。どう考え
ても、舞は俺の部屋に居てはいけないような気がする。
”これはまさに、掃き溜めに鶴だな”
しみじみと感じる。
ちょっと部屋を見渡すだけでも、空き缶や雑誌などが至る所に散乱してい
るもんだ。普通の人がこのような部屋の状態を見たら、ごみ箱と言うであろ
う。
しかしこの部屋が片付いていなくても、舞が居るだけでかなり趣の変わっ
た部屋になるところが凄いと思う。まぁ、汚いことに変わりはなかったが。
「男の人の部屋って、みんなこんなに汚いんですかぁ?」
出来たら突っ込んでほしくはなかったが、実際これが舞でなくてもきっと
そう言ったに違いない。
舞が帰ってから、取り急ぎ掃除を開始しなきゃと思いながら、肝心の依頼
の件について早速聞いてみることにした。
「んで、依頼の内容は?」
「うん。簡単に言ってしまえば、今日から十月二十七日の12:00時ま
であたしを守ってほしいの」
「約3日間ってわけね。で、何から守ればいいの?」
「それは………まぁ何事もなければそれにこしたことはないんだけど……
…でも一応言っておくね」
俺は質の悪い不良関係からでも守ればいいのだろうとばかり思っていたの
だが、舞の一言で腰が抜けてしまった。
「あのね、その相手というのは……実はヤクザ屋さんなの」
「ふむふむ、ヤクザと……………へ?」
口が開いたままの間抜け顔を、俺は披露していた。
「あの……だからヤクザ屋さん」
「どっひゃー。おいおいヤクザっていったら、お礼参りとか、出入りとか
やっている、あのヤクザだろ!」
うんうん、と舞は頷く。
「でも護衛も付いて準備は万全!バッチリだね」
と、満面の笑顔。
”おいおい、冗談じゃねーぞ。ヤクザ相手にどうしろってんだよ………高
崎のおっさんめ〜。なんて仕事を持ってくるんだ”
どこが俺好みの仕事なんだろうか?俺は疑問に思った。
この仕事は止めておいたほうが無難だと、俺の本能が呟いている。
今回の仕事は、今までの仕事と違って命懸けの仕事だ。………はっきり言
って怖い!洒落にならないくらいだ。
”無理だ。今回の仕事だけは、ぜ〜ったいパスさせて貰おう。何て言って
も、この若さで死にたくはない”
何となく気が重いが、仕方がない。自分があっての人生であるからして、
いくら生活がかかっているからといって、早死には御免被る。
俺は舞に向き直り、
「あのさ〜悪いんだけど………依頼の件はなかった事に………」
手を合わせ、ごめんなさいのポーズ。
が、俺がそう言うと同時に、舞は目をうる潤ませながら俺を見つめている。
「ひっく………ひっく」
舞の嗚咽が聞こえてくる。
「うっ」
「あっあのさ。気を強く持って……」
ぜんぜん慰めになっていなかった。
「神崎さんは、あたしがヤクザ屋さんに捕まって『あんな事や、こんな事』
されて、それでそれで…シャブ漬けにされて香港に売り飛ばされてもいいっ
て言うのね〜〜〜〜〜ひっくひっく」
一気に喋ると、ベットにうつ伏してオイオイ泣き始めた。
「まいったなぁ」
助けてやりたいのは山々なんだけど、ヤクザは怖い。
とにかく、舞が泣き止むのを待って断る事にした。
3分経過……
5分経過……
10分、20分、30分、1時間。一向に泣きやむ気配がない。
議だ。ある意味での催眠術にでもかかったのではなかろうか?と、思わずに
いられない。それとも、ただ俺が女の子に対して免疫がないという事が原因
なのだろうか?
どちらにしても、気の毒な身の上だな……と同情せずにはいられない心境
になっているのは確かだ。
”こんな可愛い子をヤクザなんぞに『あんな事や、こんな事』をされるく
らいならいっそのこと俺が………じゃなくて………まぁたまに危険な仕事を
してみるのもいいかもしれないし……引き受けちゃおうかな……”
俺は決心して(開き直って?)、泣き続ける舞に声を掛ける。
「あのさ、そろそろ泣きやまない?」
「ひっくひっくひっく」
「そうだなぁ。泣き止んでくれたら仕事引き受けてもいいかなぁ〜って言
ったらどうする?」
ピタッ。どうやら今の一言は効果があったようだ。あれだけ泣いていたに
もかかわらず、舞は一瞬にして泣きやんでしまった。
うんうんと自分で納得すると、何故か既に依頼を片付けてしまったかのよ
うな錯覚に陥ってしまう。
「あはははははははは」
けたたましい笑い声が部屋いっぱいに広がる。
「引っ掛かった引っ掛かった」
舞はガバッと起き上がると、俺に向かいアッカンベーをしてみせる。
顔を見ても、泣いていた形跡は見られない。完全に、はめられたのだ。
「へへっやったね」
「く〜。はめやがったな」
「引っ掛かるほうが悪いのよ」
言い返せなかった。
「神崎さんにすべて任せるわ。ちゃんと護衛してね」
舞が手を差し出している。握手を求めているのだ。
俺は、それに応える。
「う〜。不本意だけど仕方がないか」
一つ勉強になった。俺はどうやら、泣く子と可愛い娘に勝てないらしい。
とんでもないことになったと思いながらも、俺は心の片隅ではこれから起
こるであろう出来事に対して、ワクワクしていることに気が付いていた。
* * *
こんな可愛い娘が、なぜヤクザから守ってほしいなんて言い出すのか不思
議な事だった。よっぽどのことをしたのか?だとしたら、何をしでかしたの
か?興味津々だった
実はヤクザの組長の愛人で、その立場を利用して大金をちょろまかした事
がバレて追われている…………とか?考えられない事もないが、そんな事を
するような娘には見えない。
じー。俺は舞を見つめた。
”う〜ん。やっぱりそんな事ができるようには見えないなぁ”
誰が見ても悪いことをするような娘には見えないだろう。当然ながら、俺
もその一人である。
見た感じからいっても、舞はどこかのお嬢様の雰囲気を発していて、ヤク
ザなんかとはどこを調べても決して関係があるように思えない。
「え?なになに?あたしの顔に、何か付いてるのぉ?」
俺の視線に気が付いたのか、舞いは首を傾げて俺を見返している。
「え〜とさぁ」
「なに?」
「いや、だからさぁ。何でヤクザなんかから逃げてる訳?」
何となく聞いてはならない気もするが、聞いておいたほうがいいだろう。
それによって、あちらさんの出方も見当が付きやすくなってくるだろうしね。
「聞きたい?」
「え?ああ。聞いておいたほうが、俺としてもやり易くなるしね」
俺は当然のことを口にした。
「涙無しには聞けないわよ。ほらほらハンカチ用意しなきゃ」
「へっ??」
”何お気楽なことを言っているんだ、この娘は……”
俺は悪い方へ考え過ぎていたのかもしてない。舞のこの態度から見ると、
今回の仕事はたいしたことがないのではないかとさえ思えてくる。気のせい
だろうか?それとも無理して元気なところを見せているのだろうか?
俺には見当がつかなかった。
「ハッハンカチ??持ってないんだけど」
「しょうがないわねぇ。はい、これ」
そういうと、舞は俺にハンカチを、手渡してくれた。ピンク色の可愛らし
いハンカチだ。
「準備できた?」
「ん………ああ。まぁ一応」
”何か調子狂うなぁ。どう見ても、舞は今の状況を楽しんでいるようにし
か見えない。考えすぎだろうか?”
「ねぇ、神崎さんは、好きでもない人と結婚したい?」
「え?」
いきなりの質問に、俺は戸惑った。
ものである。
「いや…そりゃまぁ出来れば、燃えるような恋の末に結婚ってのが理想的
なんじゃないかなぁ?」
俺は自分の理想を聞かせてやった。もちろん、これがすんなり通るために
は、まず相手が必要であったが。
「でしょでしょ。やっぱりそうよね!」
俺の理想と考え方が一致したためか、気のせいか声が大きくなる。
舞は肩をフルフルと震わせ、両の拳を強く握り締めながら更に話を進めた。
「なのに………なのに………何であたしがヤクザ屋さんなんかと結婚しな
きゃならないのよ〜〜〜〜〜」
天地を揺るがすほどの、舞の叫び声。
これこそまさしく大激怒ってなもんだ。
”こっ、怖いよぉぉぉぉぉぉぉ”
情け無い事に、このとき俺はテーブルの下で震えているのだった。
はぁはぁはぁはぁ。
”あれだけでかい声を上げれば、普通息を切らすよな”
「……………」
”……おっ、元に戻ったかな?”
俺は恐る恐るテーブルから顔を出すと、舞の顔色を伺って、
「あっあのぉ、元に戻りました??」
蚊の鳴くような声で、舞に話し掛けてみる。
「ごめんなさい。あたしったらつい感情的になっちゃって」
まだ声は荒れているが、どうやら大丈夫そうだ。
俺はいそいそとテーブルから這い出すと、椅子に腰を下ろす。
「あたし、そんなに怖かったですかぁ?」
おずおずと聞いてくる。
「ははっ。そりゃあもう、殺されるかと……モゴモゴ」
ついつい乗せられて喋り掛け、俺は慌てて手で口を押さえる。
”いかん、いかん。本心を喋ったりしたら、本当に明日がなくなってしま
うかしれん”
冷や汗が、背中を流れ落ちていく。
「いやぁ、な〜にたいしたことはなかったよ。ははっ」
テーブルの下で震えていた分際で、とんでもないことを口にしながら高笑
いする俺。
「えぇ。実はあたし、親の借金の返済の代わりに結婚を強要されているの」
何か、また雲行きが怪しくなってきたようだ。気のせいか、舞の背中から
怒りのオーラがゆらゆらと揺らめいて見える。
”怖いよぉぉ”
俺は心の中で叫んでいた。
「そっそんなの、借金払ってしまえばいいんだろ?簡単じゃん。で、いく