#1410/3137 空中分解2
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空想科学時代・劇「まだ誰も見たことがない」(8) CATCH
★内容
空想科学時代・劇「まだ誰も見たことがない」その8
博士 そうさ、自分が一番信じているものをまず否定す
る。これが天地創造の第1歩だ。
少年 天地創造?
博士 わしが神だということを疑っているな。
少年 そういうわけでは・・・
博士 毎回、まだ誰も見たことがない世界を作るのは大
変なんだぞ。
少年 だからって、座敷童子を!
博士 天地創造は過程ではなく結果が問題なのだ。
さあ、君も神になろう。2人で新しい世界を作り
出すのだ。
博士、少年に白衣をかける。その裏地は古びた帰り血が重
なり、まだらになっている。さらに少年の鼻を座敷童子の
鮮血で赤く塗れば、まるでピエロである。
少年 本当に神様だという証拠があるんですか。
博士 君をこの場で消したら、信用するかね。
少年 そんなことは人殺しにだってできます。
博士 ではひとつ軽く奇跡でも。
少年 手品師の真似を神様がしてどうするんですか。
博士 ではどうしろというのだ。
少年 奇跡も起こせないのに,神様だって?
博士 そう、それを認めることが神への第2段階である。
天地創造には奇跡ではなく、地道な努力が必要な
のだ。
少年 そんなのへりくつだ。
博士 へりくつだって理屈のうちだ。
座敷童子 だまされるな。
少年 座敷童子!
博士 どうして、どうやって。あそこで死んでいるのは
誰なんだ。
座敷童子 座敷童子は、いつだって思っているより一人だけ
多いのさ。
少年 大丈夫かい。
座敷童子、“少年”という名の男をつかまえて、ナイフを
つきつける。
少年 なにするんだ。
博士 やめろ。
座敷童子 動くな。それ以上近づくと、こいつの命はないぞ。
博士 ばかめ。神にそんなものが通用すると思っている
のか。
座敷童子 奇跡も起こせない神様がなに言ってんだ。殺って
みようか。
少年 わーっ
博士 はやまるな。
少年 どうしてこんなことを!
座敷童子 いいか、良く聞けよ。博士は君なんだ。君が大人
になり、大人になって博士になる。博士はタイム
マシンを発明すると、自分を教育するために今へ
やってきたんだ。
博士 論理的だ。自分のことは自分が一番知っている。
誰が好きで、何が嫌いか。最良の教師は自分自身
なのだ。
座敷童子 努力と根性の大変人だ。
博士 わしらには無限の時間がある。失敗しても何度で
もやり直す。少年よ、わしが神なら君も神だ。人
類の偉大な教師になって、座敷童子から地球を救
うのだ。
座敷童子 近づくな。近づけば殺す。もしここで少年が死ね
ば、あんたを教育したあんたもいなくなる。あん
たを教育したあんたを教育たあんたもいなくなる。
今までの苦労が水の泡だぜ。
少年 いったいどうなってるんだ。
座敷童子 少年、君がタイムマシンを発明しなければ、こん
なことにはならないんだ。
博士 わしの最高傑作だ。
座敷童子 きちがい博士にならなくたって、面白いことはほ
かにもあるから、僕といつまで仲間を探し続けよ
う。
博士 そうか!さっき死ななかったのは子供の一人と入
れ替わったからだな。
座敷童子 来るな。本当に殺るぞ。
博士 彼が死んだらわしはおしまいだが、おまえは大丈
夫かもしれん。だが彼が最後の少年だとしたらど
うする。
座敷童子 なんだと!
博士 子供たちが誰もいないところに、座敷童子だけが
うじゃうじゃいたらおかしいだろう。最後の少年
を殺したら、座敷童子も座敷童子でいられないぞ。
座敷童子のいないところに座敷童子童子もいられ
ない。彼が最後の少年だから、子供たちがみつか
らんのだ。おまえたちはは殺し過ぎたのだ。
座敷童子 だまれ!それとも試してみるか。うわーっ!
座敷童子、背後から忍び寄ったマシンに刺される。
博士 でかしたぞマシン。これで2勝1敗というところ
か。
マシン ざまみろ。
博士 とどめは刺すな。また、もう一人あらわれては面
倒だ。うわーっ!
マシン、博士を刺す。マシンのリモコンを座敷童子が握っ
ている。
座敷童子 2勝2敗だ。
マシン こんなつもりでは。
博士 往生際の悪い奴だ。
座敷童子 それはこっちのせりふだ。くたばりぞこないめ!
少年 なにをするんだ。ここから出せ。
マシン、少年を透明な壁の向こう側へ閉じ込める。
マシン 待っていてください。今こいつらをかたずけます
から、あなたの笛で、人間に復讐してやりましょう。
博士 マシン、なぜだ
マシン 約束を守ってくれないからですよ。
座敷童子 そこをどくんだ。
博士 じゃまをするな。
マシン やめてください。わわわわーっ!
ふたつのマシンのリモコンを同時に使おうとする。混乱し
たマシンは自分にナイフをつき立てる。
少年 動くな。それ以上ちかずくと
少年、座敷童子の死体から抜いたナイフを自分の胸にあて
る。
座敷童子 そんなことをしたら、みんなおしまいだ。
博士 さあ少年よ、わしと一緒に世界を救おう。わしの
あとを継げるのは君だけだ。
座敷童子 頭の堅いおっさんの考える救いなんて、たいした
ことないさ。
博士 君好みのいい話じゃないか。
少年 勝手に決めないでくれ。
座敷童子 何も考えるな。黙って僕に・・
博士 黙ってわしに、ついてくればいいのだ。
座敷童子 まだやるつもりだな。
博士 努力と根性の変人の往生際の悪さを見せてやる。
少年 俺にもすこし考えさせろぉ!
“少年”という名の男の胸に、死んでいたはずの座敷童子
がナイフをゆっくりと押し込む。
“少年”、その手を止めようとつかむが、止めることがで
きない。
生と死の間で揺れるリンゴの振り子。
時を刻む心臓の鼓動。
けれども少年が聞き取ろうとするのは、鼓動と鼓動の間の
音である。
少年という名の男、暗闇の中でしか触ることのできない柔
らかな手をにぎりしめたまま・・・
少年 もしも俺が死んだなら、誰が悲しんでくれるだろ
う。もしも俺が生き続けたら、誰が喜んでくれる
だろう。まだ誰も見たことがない俺の中の迷宮を、
いったい誰が見つけてくれるのだろう。
血にぬれたナイフを引き抜く。
少女 みぃーつけた!
ュなる。
博士だった子供と、マシンだった子供と、座敷童子だった
少女がいる。
“少年”という名の男は、にぎりしめていた少女の手を反
射的にふりほどく。
遠足日和の日本晴れ、学校を少しはなれた岡の上といった
ところか。
その9へ続く