#1392/3137 空中分解2
★タイトル (YPA ) 92/ 1/18 0:52 ( 52)
「男と女の、短いお話」第1話(3) 左党駄 甘始
★内容
窓からの午後の日差しが心地よい温もりを与えてくれる。
今日も仕事もしないで探偵事務所は開店休業中。当然、裏の仕事もお休み。
あれから2カ月がたった。あの一件はクライアントへの報告で、無事終了。井上専務
はラインを外れて閑職に追いやられたそうだ。「芳美」の事は分からない。ただ秘書
室からは転勤になったみたいだが。何か胸にしこりが残っているみたいで仕事もやる
気にならない。本気で惚れちまったようだ。しかし、俺から会いに行く、は出来ない
・・・・・・・もう、うんざりだ。
ノックの音がした。誰にも逢いたくない、ほっといちまえ。
また、ノックの音がする。・・・3回目、4回目、ええい、うるせえやつだ。
「はいはい、今開けますよ、本日はお休みなんですがね」
ドアを開けるとなんと、「芳美」が立っている。俺は絶句してただ呆然と立ち尽くし
た。
「なかなか良いオフィスじゃない」
俺の横をすり抜けると勝手に中に入ってきた。
「・・・どうしてここが分かったんだ?」
「簡単よ、あなたと分かれた直後、井上専務は役員会で左遷されたわ。専務は副社
長に一番近い人間とされていたにもかかわらず、よ。変わりに、中野常務が副社 長になった。誰でも分かる方程式だわ、つまり、私から情報を得た男がクライア ントである中野常務に報告する、それをネタに専務を失脚させ、後はくりあがり 当選ね。」
「・・・」
「でも、それはあくまでも想像だわ、それでね、中野新副社長にかまをかけたわけ
。そうしたら、ペラペラ話してくれたわ、あなたのこともね」
「・・・参ったね、それで、君は、どうしたいんだい、ホームズ君」
「私を、ワトソンにしなさい」
「?、人手は足りてますが」
「あなたは私を雇う義務があるわ、私から職場を取り上げたんだから」
「秘書室から転勤したのは聞いてたけど」
「役員が失脚するとね、秘書も立場が弱くなるの。逆を言えば役員が上がればその
秘書は強くなれるというわけ。ま、秘書室の中でだけだけどね」
「そうか」
「・・・それだけでもないんだけど・・・私は、・・・・」
「待った!・・・・・分かった・・・・俺から頼む、君が必要だ、君さえ良ければ、
ずっと居てほしい、お願いだ!」
「・・・でも、仕事と恋愛は別よ、私、そうゆうところは割り切りたいの」
「望むところだね」
「契約成立、ではさっそく仕事にかかりましょ、ホームズ」
「・・・ワトソン君、とりあえず今日は恋愛にしませんかね」
「うーん、ま、いいでしょ、私の入社祝いということで、スケベのホームズさん」
俺は「芳美」の手を引き寄せ、抱きしめた。唇を優しく重ねると、自分の胸のつかえ
がすっと落ちて行くのがわかる。
奇妙な付き合いだが、うまくやって行けそうな、そんな予感が頭をよぎった。
END