AWC 「硝子の箱」         ニーチェ


        
#1345/3137 空中分解2
★タイトル (NJF     )  91/12/23  16:46  ( 21)
「硝子の箱」         ニーチェ
★内容

 風が吹いている。硬質硝子の枠の外のできごとだ。
誰も硝子を磨こうとはしない。始めからその必要が
ないほど、透き通った箱なのだ。

 真ん中に座り込んで、ぼくは聞き耳をたてている。
風が、死んでいく者の呼吸のように、吹いている。

 不思議なことに、硝子の箱は草原に置かれている。
だから、ぼくの下にはぺちゃんこになってしまった
シロツメクサがある。聞こえてくる風の音から想像
するよりは、実際にはそれほど強くはないのだろう。
白くてまばらなシロツメクサの花は、ふらふらと動
くだけだ。

 光。確かに太陽が出ている。でも、閉ざされた空
間に置かれているぼくでさえ、その熱も感じられな
いほどの弱々しい太陽だ。まるで火星の表面のよう
だろう。想像してみてほしい。

                       《’91.12.23筆》




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