AWC 芸夢都市 −3−    作 うさぎ猫


        
#1293/3137 空中分解2
★タイトル (CWJ     )  91/11/23  18:11  (197)
芸夢都市 −3−    作 うさぎ猫
★内容
  NeoSystemLadyPart1

  どうも落ちつかない。
ベットに入ったまま、あたしはあの少女の事を考える。
 あれはただのおしゃべりソフトじゃない。
もっとリアルなものだった。
だいいち、駅で出会った少女は実像だ。
それも、恐ろしいくらい強い力をもっていた。
 「YukikOs」
口に出して言ってみる。
 いままでのosの欠点を克服し、次世代CPUと言われるR400
0に完全対応した画期的オペレーションシステム。
その為に、従来のOSとの互換性はまったく無視されている。
 当初、こんなものが商品化されるはずはないと叩かれたが、時代と
いうものはどん欲で、R4000マシンが完成されたとたん一斉に広
まった。
 もともとRISCなどに不満を感じていた企業などが真っ先に飛び
つき、ワークステーションなどのスーパーマシンの標準osとなった。
 あたしの会社のシステムも、半年前に全面的にYukikOsに変
わったのだ。
 「あの少女もYkikOs上で走っているのだろうか?」
 あたしはベットを抜け出すと、机の上のワークステーションを稼働
させた。
 モデムのアクセスランプとともに、オートパイロットのプログラム
が走り出す。
 そして、いつものように自分のボックスに入った。
 「結構仕事溜まってるなぁ」
膨大なデータの山をみて、うんざり。
そんなデータの中に見慣れないファイルネームがあった。
 「DTYUKI.Obj?」
なんだろう。あたし、こんなファイルネーム付けた覚えないのに。
 あたし、マウスでつつく。
64ビットCPUが稼働をはじめ、画面が切り替わる。
そこに映るのは・・・・・・
 「助けてぇ・・・・・・ 助けてぇ・・・・・・」
全裸で震えながらおびえる少女。
あの少女だ。駅であたしに話しかけた女の子だ。
 「デリィートされちゃう・・・・・・ デリィートされちゃうよぉ」
いったいどういう事なの。デリィート!?
この子、生きているんだ。
ただのウィルスなんかじゃない。意志を持った、生きた存在なんだ。
 そう思ったとたん、あたしは部屋を飛び出していた。
なぜなのかわからない。
 「止めなくちゃいけない」
そんな思いだけが、あたしを、あたし自身を動かしていた。

 駅までの下り坂を、ただひたすら走った。
転びそうになる。
体制を立て直し、ふたたび走る。
 「助けなくちゃ」
のバスターミナルに、転がるように駆け込む。
そこでフッと冷静な気持ちになった。
 現在の時刻は深夜の1時を過ぎている。
バスはおろか、電車だって走ってはいない。
奥多摩の情報本部まで、タクシーだといくらかかるのかなぁ。
 「滝沢さん、滝沢優子さん」
背後から、あたしを呼ぶ声。
 振り返ると、そこには黒いスーツを着た2人の男性が立っていた。
深夜だというのに、2人ともおそろいのサングラスをしている。
 「滝沢優子さんですね?」
あたしは聞かれて、コクリとうなずいた。
 「我々は内閣調査室の者です」
そう言って、手帳サイズの身分証明書を見せた。
 「あなたが追っているシステムレディについて、これ以上の干渉は
控えていただきたい」
 しすてむ・・・・・・? なに、なんの事?
あたし、相手の言っている意味がわからず呆然と立ち尽くす。
 「何のお話ですか?」
相手も戸惑っているようだ。
 「とにかく、これ以上の干渉は控えて下さい。そうでないと・・・・・・」
黒服の1人が拳銃を抜いた。
 「ちょっと、やめてよ。あんたたち何者!?」
黒服は銃口をあたしに向け、そして、引金を引いた。
 あたし、なにがどうなったのかわけもわからず、ただわかる事といえ
ば拳銃が恐いぐらい大きな音を立てて破裂した。
そう、あたしには破裂したように見えた。
破裂して、破裂した火の塊があたしに向かって飛んで来て、そして、そ
して・・・・・・


  うさぎが跳ねている。
  うさぎが、焼け野原を跳ねている。
  すべてが消えてなくなった、日本という名の大地。
  一匹の白いうさぎが跳ねている。
  そこへ、地響きとともに大きな戦車がやってきた。
  戦車は、ひたすら前進する。
  何者にも左右される事なく、前進するのだ。
  うさぎが戦車の前へ出ていく。
  それでも戦車は前進する。
  それでも戦車はひるまない。
  それでも戦車は職務を遂行する。
  なぜなら、戦車は強いから。
  うさぎは戦車の前で、赤い塊となる。
  泣き叫び、悶え苦しみながら。


 やわらかい朝の光り。
気づくと、あたしは服を着たまま、自分のベットに横たわっていた。
どうしたんだろ、頭がいたい。
 時計を見て一瞬びっくりしたが、すぐに今日が日曜日である事を
  「滝沢さん、システムクラックの者ですが、機械のメンテナンス
  に伺いました」
インターホンが、まだ半分眠っているあたしの頭を揺さぶる。
 「はい、今出ます」
おそらく会社が雇ったのだろう。昨日の一見で鈴木部長がかなり神
経質になっていたから。
 ドアを開ける。そこにはグレーの作業服を着た3人の男性が立っ
ていた。
 「マシンはどちらですか?」
一人が聞いてくる。
 「あのぉ、名刺頂けますか」
あたしは部屋に入れる前に、小さな声で言った。
 「あぁ、失礼しました」
そう言って一人が名刺を差し出す。それには<(株)システムクラッ
ク システム営業部 技術主任 近藤多一郎>そう書かれていた。
 「こっちですね」
そう言うと3人はずいずいと部屋の奥、ワークステーションを置い
てある机へ向かう。
 「稼働して構いませんか?」
技術主任の人が聞く。
でも、あたしが返事をする前に、マシンのモデムランプは点滅して
いた。
 3人はあーだこーだ言いながら、10分程度で作業を終わる。
 「これで大丈夫です」
なにがどういう風に大丈夫なのかわからないけど、とにかく3人
はにんまり顔でそう言った。
 「はぁ、なんの御構いもしませんで」
あたし、なにがなんだかわからないぼぉっとした表情で言った。
 「では、これで失礼します」
技術主任の人が、他の2人を追い出すように部屋を出ていく。
 あたしぺこりと頭を下げ、3人が出ていくのを見送った。
頭の中が、まだぼぉっとしている。
 「なんだったんだろ」
鍵をしっかりかけて、あたし、ベットに戻る。
 頭の中で一つの言葉が駆け回っている。
 「デリィートされちゃう」
あたしはパッとベットを飛び降りた。
 マシンを稼働させる。モデムのアクセスランプが点滅。
オートパイロットで、あたしのボックスに入った。
 「なくなってる」
DTYUKIファイルは消えていた。
 「デリィートされたんだ」
あたしはそう思った。
明日、プログラムの正体を聞こう。
あの少女が何者なのか・・・・・・


  「何の話しをしているんだ?」
宗形課代の第一声。
 「この間のリアル画像の件です。2人で本部へ行ったじゃないで
すか」
あたし必死に説明する。
 しかし、宗形課代は不思議そうな目であたしを見るばかり。
。とぼけているの? からかっているの?
 むこうから鈴木部長がやってくる。宗形課代、直立不動になって
挨拶をする。
 こんな事する人じゃなかったのに、なにか変。
 「あぁ、おはよう」
鈴木部長が、笑顔で宗形課代の肩をぽんっと叩く。
 「おや、君は新人だね」
鈴木部長、あたしを初めて見たような言い方。
 「優子くんは、部長とは初めてだったね。」
なに言ってるの?
なに言ってるのよ。
この間、本部で会ったじゃないの。
皆、どうしちゃったの?
 「どうなっているの!?」


  お昼休み。
あたたかい木漏れ日の下。
あたしは、一人歩道を歩いている。
 上空を、自衛隊のヘリがせわしく飛んでいる。
そういえば、公園の角に戦車が止まっていたけど。
 「なにかあったのかな」
 野猿街道沿いに、信号待ちのオープンカー。
あたしは、何気なく車を見た。
 心臓が破裂しそうなくらいのショック!
乗っているのは、昨日あたしの部屋に来た3人の技術マンと、あの
リアル画像の、駅で出会った少女。
 少女がこちらに気づく。
一瞬の静寂があたりをつつんだ。
 信号が青になると、オープンカーは再び走り始めた。
後部座席に座っていた少女が、ニコリと微笑んだような気がする。
 あたしは、にこりと微笑む。
そうだ。
そうなのだ。
 真実なんて、他人の誰もしらない。
わかっているのは、あたしが体験したという事実だけ。
それだけ。
 でも、それってどんな真実よりも素敵だと思う。
くらくらするくらいに・・・・・・




                    −fin−




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