#1264/3137 空中分解2
★タイトル (RJM ) 91/11/10 19:47 (189)
ぶら下がった眼球 第十九章 スティール
★内容
第十九章 呪われている神々
翌朝、私は滑走路の上にいた。このまま、
地球には帰ってくるつもりはなかった。大佐
が見送りに来ていた。私は大佐の顔を二度と
見たくなかった。あのとき、大佐に押さえつ
けられていた手首が、まだ痛んでいた。私は
大佐と目を合わせるのも嫌だった。
「どうして、EVEのことがわかった?」
「あなたはEVEを人工睡眠させて、DOG
でチェックしていたでしょう。DOGのそ
の電波を捉えて分析したのです。」
「わかってみれば、簡単なことだな。」
大佐は腰の拳銃を抜きながら、言った。
「そう、簡単なことです。丸腰のあなたを脅
すようにね。」
大佐は、私に拳銃につきつけたままノア6
号に向かうように指示した。私はいったいど
ういうことかと、大佐に尋ねた。大佐はいき
なり私の腹に蹴りを入れた。「ウッ。」と言
って、私はうずくまった。意識が薄れてきた。
私は、大佐の声を聞いた
「私が運転しますよ。博士。」
私が目覚めたときには、船はもうノア6号
に着いていた。EVEが迎えに来ていた。発
着場の前は研究室だった。
大佐は私とEVEに拳銃を突きつけて、研
究室に座らせ、話し始めた。
「時間はたっぷりある。ゆっくり話をしよう。
博士。」
「何が狙いだ。私のDOGか?」
「DOG? そうだな、君たちを殺したら、
DOGも手にはいるな。俺なら、DOGの
ガードを外せる。」
「殺す? 冗談だろ、大佐。」
「いやっ、もう君は計画に必要ない。むしろ、
じゃまなのだ。君達はノア6号の爆発で、
死ぬ。突然の事故でね。」
大佐は煙草に火を点けた。EVEは何もわ
からず、ただ、私に寄り添っていた。私には
策があった。私のDOGは、バベル博士が造
った特別製で遠隔操作が出来た。頭の中で念
じるだけで、誰にも気付かれず、作動させる
ことが出来た。私はどうすればいいのか、D
OGに相談した。
「もう、そろそろ、正体をあらわしたら、ど
うです。博士。」
「いやっ、まだ、計画は不完全だ。私の力が
要るはずた。遺伝子の正体は・・・。」
大佐は私の命乞いに、口を挟んだ。
「神だろう。知っていたよ。最初から。」
「知っていた。どういうことだ?」
「私は生物エンジニアとして、最初から、第
15号計画に関与していた。そのころは下
っ端だったがね。」
DOGの回答が来た。三つの提案を提示し
てきた。ひとつめは、大佐と和解する案。ふ
たつめは、大佐の要求を聞き入れて、被害を
最小限にするよう努力する案。みっつめは、
電子レーザーのメスで、大佐を溶かす案。但
し、法に触れるおそれがある、ということだ
った。みっつめの案が気に入ったので、私は
電子レーザーの照準を、大佐に合わせて、待
機するよう指示した。
「元々、バビロン計画は、遺伝子対策のため
の計画でした。バビロン計画で創り出され
た人間の遺伝子には、あの呪われた神など
は存在しません。一方が呪われた遺伝子を
親に持つ子供であっても、片親がバビロン
計画で設計された遺伝子であれば、子供の
遺伝子から神を排除することができます。
つまり、ハビロン計画は神を遺伝子から排
除するための計画なのです。」
私は、あの忌まわしい神のことを思い出し
ていた。バベル博士の狙いは本当はそこにあ
ったのかもしれない。
「意志が強ければ、神の呪いに勝つことが出
来ます。あなたもおそらくそういう目に遭
っているでしょうから、わかるでしょう。
まっ、99%の人間は死ぬでしょうな?」
私は大佐を見くびり過ぎていたことを痛感
した。私は彼にいいように利用されていただ
けなのだ。私は彼に皮肉まじりに聞いた。
「人口減少も君の仕業か?」
「いやっ、違う。遺伝子の仕業だ。昔の預言
が実現していると、バベル博士は言ってい
た。ユダヤ人だからな、博士は。」
「博士の悪口を言うな!」私は反射的に抗議
した。
「ははは!ははははは!」大佐は死ぬほど、
笑い転げた。
「『自分の悪口を言うな。』ではないのかね?」
^^
「自分? いったい、どういうことだ?」
大佐は呆れた顔をした。
「まだ、とぼけるつもりか。君の過去はすべ
て調べた。二十歳より前の記録がない。君
が自分で言った話も全部調べた。まったく
の架空の話だ。嘘なのか、それとも、本当
にそう思い込んでいるのかな? 」
「何を言っているんだ、大佐?まったく意味
がわからない。」
大佐は私の言葉を無視して、話を続けた。
「私は君が15号と聞いただけで、人口減少
と指摘したときに、ピンときた。君はバベ
ル博士だとね。」
「何を言っているんだ。大佐。そんな馬鹿な。」
「そこのコンピューターで調べてみたらどう
だ?たぶん、DOGじゃだめだろう」
私は放心状態でコンピューターの前に座っ
た。私が、バベル博士なはずがない。そんな
ことがあるはずがない。
私はコンピューターをいじって、二十歳前
後の記録を呼び出した。二十一歳から、少し
ずつ遡ってみた。少しずつ遡るたびに、少し
ずつ嫌な予感がしてきた。私の心臓の鼓動も
それにつれて高鳴っていった。とうとう二十
歳の誕生日まできた。記録が無かった。私の
記憶の記録が・・・。大佐の声が背後から、
聞こえてきた。
「君の体のことも全部調べた。X線で、君を
隠し撮りした。左脳に影のようなものが、
写っていた。拡大した物がこれだ。見てみ
ろ。」
大佐は私のほうに、それを投げた。私は足
元からそれを拾って、透かして見た。確かに、
その通りだった。
「私の生物エンジニアとしての意見を、はっ
きり言おう。バベル博士は、自分のDOG
の内容を全部コピーしたミニDOGを君の
脳の埋め込んだのだろう。」
「そんなまさか・・・。」
「手術だって、すばらしい芸術品のような凄
いやり方だ。外傷を残していない。左の眼
球を取り出してDOGを埋め込んだようだ。
よく神経がずたずたにならなかったな。」
大佐は私の頭を凝視しながら言った。
「もう、やめてくれ!」
私は、電子メスで大佐を溶かしたい衝動に
襲われた。しかし、いざとなると、出来なか
った。拳銃を溶かしても、その後の攻撃が出
来ないのであれば、意味はなかった。ここを
切り抜けても、大佐が生きている限り、その
うち殺されてしまうだろう。私の心臓の鼓動
はますます激しくなった。突然、私は自分の
左目に激痛を感じ、押さえた。少しずつ、自
分の中に何かが蘇っていた。私は軽い頭痛を
覚え始めた。