#1214/3137 空中分解2
★タイトル (MEH ) 91/ 9/26 23:31 (142)
劇団死期の舞台報告 クリスチーネ郷田
★内容
状況設定:栄作が家に帰ると、妻の知子がニコニコしながら玄関のところに立っていた。どうもいつもと様子が変だぞ、と栄作は思い、ひそかに昨日の夜思い付いたギャグを飛ばした。
(栄作、舞台に登場。拍手入る)
「ただいま、ハニー。聞いてくれ。僕は昨日の夜、ある夢を見た。それはおふくろに関する事だったんだが、どんな夢だと思う?」
「まあダーリン、アメリカンジョークはあとにしてちょうだい」
「ちょっと待ってよ、ここから面白くなるんだから。いいかい、おふくろは言ったよ。おまえのお兄さんがベトナムから帰って来たよ、だってさ!ハーッハッハ」
(笑い声入る)
「ねえダーリン、実はお話があるの。」
「ヘイ、どうしたんだいハニー、そんなにうれしそうにして。何かおめでたい事でもあったのかい?」
「ウン、もう。真面目に聞いてちょうだい。」
「すねるなよハニー、僕はいつだって真面目だよ、ただ1週間に7日は例外だけど」
「まあ、ダーリンたら。」
(笑い声入る)
「ところで、何だい話って?」
「実は、私、今日病院に行てきたの。それで、先生が言うにはね、ゴニョゴニョ…」
(知子、栄作の耳元でささやく。)
「フン、フン…。本当かい?やった!そうか、ついに出来たか!よくやったぞ、知子!」「喜んでもらえてうれしいわ!」
そう、知子は妊娠していたのだった。
「よおし、バリバリ働くぞ。誰だって僕にはかなわないところのものだろう。神に誓って。あと親父にもおふくろにも、親戚のトムにもマイクにもブライアンにも、大五郎にも五衛門にも誓おう。あと便所のフタにも、テレビのリモコンにも、ミミズにも誓おう。そして忘れていけないのは、オケラだ。オケラとハチには是非誓いたい。もちろんスーパーファミコンに誓ってもいい。……これ以上言うのはあほらしいので、カットしよう。シナリオでは、このような「誓い」が5時間に渡って行われるんだ。そう、シナリオライターの大五郎、君のシナリオはいつもこうだ!」
(笑い声。)
「無理しちゃ駄目よ、ダーリン。あなたはいつも無理しすぎるんですもの、心配だわ。この間だって、ダーリンったら胃ガンと脳腫瘍の末期だったと言うのに、無理して会社に行ったりするんですもの…。私は心配で心配で、一晩神様にお祈りを捧げたわ。」
「ハハハ、もうそんな無理はしないよ。でも、部長は誉めてくれたよ。おい栄作、おまえはなかなかホネのある奴だってね。だから僕は言ってやったさ。残念ながら部長、私のホネはすでに真っ黒です、って」
(ブーイング入る)
「ああ、なんて素敵なダーリン!」
(知子、抱きつく)
「ハニー、愛しているよ!」
(ブーイングの嵐。卵やザブトンが飛んでくる。)
「ああ、ダーリン、抱いて」
「いいよハニー」
「…アアッ…ウフン」
(お互い抱き合い、ゆっくりとまさぐりあう。ブーイング止まらず)
「さあ、服を脱いで」
「アアン、みんなの見ている前で、恥しいわ…」
(といいながら脱ぎ始める知子。栄作も脱ぎ、裸になる。栄作、知子に挿入。知子、よがる。栄作、腰を激しく動かす。ブーイング止まらず、暴動寸前。)
「おお、客よ。なぜここまでサービスしていると言うのにブーイングをやめてくれないのだ!私がこんなに一生懸命腰を動かしていると言うのに」
「ダーリン、もっと!もっと腰を動かさなくてはいけないのよ!まだサービスが足りないわ!ああ、もっと!」
「わからない!これ以上何を私に期待するのだろう、客よ…」
(ブーイング止まらず)
「この体勢ではどうだ?では、これはどうだろう。ええい、こんな破廉恥なポーズは滅多に見れないものだが」
「ああっ!ダーリン、すごい」
(ブーイングさらに激しくなる。栄作と知子、完全に自分たちの世界に入り、さんざん楽しんだあと服を着始める。栄作、服を着ながら客に話しかける)
「紳士淑女よ、お許し下さい。この部分は私も反対したんですが、シナリオライターの大五郎がどうしても、と言うので上演致しました。大五郎はいま、舞台の上にいます。さあ大五郎、責任を取って、飛び降りなさい」
「お客様、すみませんでした!アーッ!」
(大五郎、舞台に飛び降り、でかい音を立てて舞台に激突。即死。享年42歳。拍手入る)
「さて、劇を続けます。」
「妊娠おめでとう、知子。今晩は、一晩中飲み明かそうじゃないか。」
「まあ、素敵な考えね。その意見に同意するわ。でも、お腹の赤ちゃんまで酔っぱらうかしら」
(笑い声入る)
「ハニー、飲み過ぎちゃいけないよ。じゃあ、ワインを持って来るからね」
(栄作、ワインを持って来る)
「お待たせ。さあ、乾杯しよう。乾杯!」
「乾杯。ところでハニー、お腹の赤ちゃんに触ってみない?」
「ええっ、いいのかい?」
「ええどうぞ。」
(栄作、知子の性器にズボッと手を突っ込む。ブーイングの嵐。)
「あっ、動いたぞ?」
「そうでしょ、たまに動くでしょう」
「これが僕達の愛の結晶なんだね、ハニー。」
「そうなのよ、これがいわゆるそれなのよ」
(栄作、未熟な赤ん坊を引っ張りだしてしまう。血だらけの赤ん坊、知子の性器から登場。セリフ:「バブー」と言った後、うんともすんとも言わない)
「おお、ダーリン!なんて事を!」
「僕がなにかいけない事を?」
「ああ、何も分かっていないのね?あなたはいま、かわいいわが子を殺したのよ!」
「ほ、本当かい?この僕が、わが子を!?ああっ!何という事をしてしまったのだろう僕と言うやつは…!」
泣き叫ぶ栄作と知子。二人の泣き声が劇場にこだまする。
観客も、この感動的なエンディングで頬を濡らしているのだろう、すすり泣きがあちらこちらで始まった。
壮大な音楽にのって、栄作と知子踊りだす。
以下、リズム感あふれる音楽が続き、幕がおり始める。
オペラ調に会話する二人。
知子、血だらけの赤ん坊のへその緒を持って振り回して、栄作に投げつける。
栄作、それを受け取ってドリブル。そして栄子にパス。以下想像にまかせる
(栄作)オオー、この悲劇 なんという事をしたのだろうー
(知子)この悲しみ この痛み 誰にもわからないわ それはあなたにもわからない
(栄作、知子)悲劇のー せーかーいー
そして物語は幕を閉じる。
(拍手喝采)
END