AWC 宗教の自由             クリスチーネ郷田


        
#1203/3137 空中分解2
★タイトル (MEH     )  91/ 9/24  18:38  ( 95)
宗教の自由             クリスチーネ郷田
★内容

「チョットイイデスカ」
と、突然その宗教勧誘員はS氏に問いかけてきた。日本語はあまりうまくないが、日本人らしい顔つきの男性だった。S氏は電車に乗り遅れそうだったので、相手にせずに横切ろうとした。宗教勧誘員男はS氏の耳元で、こんな事を言った。

「アナタハ神ヲシンジマスカー?」
「すみません…急いでいるのでね」

S氏は無視して歩き出した。

「オウ、チョトマテクダサーイ!話ダケデモ聞イテクダサイ」
「駄目です、また今度…」
「ウエイト!ウエイト・ア・ミニッツ!」
「いやです!」
「チョ、チョットマッテクダサーイ」
「やだ!」

S氏は走りだした。
だが、無我夢中で走ったはいいんだが、その宗教勧誘員はS氏にぴったりとついて来るのであった。学生時代には陸上でならしたS氏である。それに追いつくとは、すごい宗教勧誘員もいたものだ。

「ついて来ないでくれ……ゼエゼエ!来るな、来るな!」
「チョ、チョトマテクダサーイ…ホッホッホッ」

「来るなー!ゼエゼエ、ハアハア…」

「チョトマテクダサーイ、ホッホッホッ」


勧誘員の呼吸は全然乱れていなかった。S氏はもう走り疲れてフラフラになっていると言うのに。

「ああ、もう駄目だ…」S氏は走るのをやめ、観念した。
せめて話だけは聞いてやろう…。
そうS氏は思った。

「ハアハア…。何ですか、話ってのは。」
「OK、OK。アナタ、神ヲシンジテマスカ?」
「ううん…そうですね、別に信じてはいません」
「オオ、ソウデスカ。デモ、チョビットクライシンジテイマセンカ」
「そうですね、ちょっとくらいはね」
「ヤハリソウデスカ。ソレハヨカッタ…」

その瞬間、クロロフォルムを染み込ませたハンカチがS氏の顔を覆った。

宗教勧誘員の仕業である。

S氏の意識がどんどん遠のいて行く。
「な、なにをするんだ貴様…ウウ、眠い」

「シバラク眠ッテモライマース、フフフ…」
「ああ、眠い、眠いよ。ああ、もう駄目だ…。オヤスミ、グウー。」

「フフフ、ユックリトネムルガイイ。」


 S氏は、ふと目を覚ました。
すると、全裸で縛られている自分に気付いた。彼のいる部屋は薄暗く、ロウソクの光だけがチラチラと周囲を照らしていた。目が闇に馴れて来ると、自分がどう言う場所にいるのか次第に分かってきた。S氏の周りには円陣が描かれていて、黒装束の者が何人か囲んでいる。なんだか変な呪文を唱えているそいつらは、まるでKKKみたいな格好をしていた。

「な、なんだおまえらは!KKKか?なんでそんな格好してるんだ!」

「フフフ、君には関係の無いことである」

「あっ、その声はさっきの宗教勧誘員!?なんだ、なんで裸で縛られなきゃならないんだ!ヒモをほどけ、ヒモを!」

「フフフ、宗教勧誘員とは仮の姿。その実態は、邪心教の教祖ピポクリその人なのだ。ワハ、ワーッハッハッハ、ワーッハッハッハー!!気の毒だが、心臓を頂く。ワーハッハ!」

「なに!俺の心臓を頂く、だと!冗談はよせ」

「本当だとも…。ワーッハッハ!このナイフで、心臓をえぐり出すのだ!さあ、さっそく心臓をもらおう。」

ピポクリは、ナイフでS氏を力いっぱい突き刺して、グリグリと心臓をえぐり出そうとした。

「ウギャアアア!」と言う悲鳴が響く。

「ワーッハッハッハ!心臓をもらうぞおお……ウム?おかしいな?心臓が無いぞ?やい貴様、心臓をどうした!」ピポクリはS氏の心臓が無いことにハタと気付いた。


「……フン、俺は絶対に改宗しねえからな!ざまみろピポクリ!!ワーッハッハハハ!」と、S氏は大笑いしながら言った。


END




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