#1202/3137 空中分解2
★タイトル (QYD ) 91/ 9/24 13:29 (131)
青い海
★内容
1
青い海 (1)
品川 博之
冷たいクラクションの響く夜の町を
少年は当ても無く父親を捜して歩いていた。
何軒もの店を回っては見たが、どこにも
その姿は無かった。
歩路には、いつのまにか、人が
溢れる出していて賑やかになっていた。
終電の時間が近付いたのか、人の流は
駅の方に向いていた。少年は、アルコールに
汚染された空気を避けて、細いい路地に
入った。かれは、電柱にもたれかかると、
空を見上げた。先程まで顔を出していた月は、
雲に隠されて、町に散らばる街灯や落ち着く
こと無く動き回るヘッドライトが、暗闇の世
に対抗していた。
歩道は、ますます、活気付いていた。昼間
の緊張感を失った男性や、体中に散りばめた
アクセサリーを光らせて満足そうな
2
姿の大人たちが、幸せそうな表情をを
浮かべて駅の方へ足を進ませていた。少年は、
かれらの流に逆らって川の方向に歩き始めた。
両親は、かれが高校に入学すると同時に
離婚し、それ以来父親の生活は乱れていった。
最近では、家にいても二人が顔を合わせる
ことはめったに無かった。少年は、これまで
暮らして来た家を離れたくはなかったので、
料理や洗濯といった家事は面倒だとは
思いながら、高校生活を過ごしていたので
あった。
人気の無くなった歩道の脇に1台の車が
止められると、1組のカップルが、自動
販売機のジュースを求めて降り立った。
かれらは、気持ちよさそうに夜風を
浴びながら少しずつ液体を食道に流しこんだ。
再び車に乗りこみ、バックミラーには
静まかえった深夜のの風景を写して、
どこへともなく走り去っていった。
3
少年は、川原の叢の中に横たわり、
いつのまにか夢の中に入っていた。水の流に
戯れている幼い子供を岸辺から見守っている
中年の姿が見えていた。しばらくすると
かれらは、川に背を背を向けて土道の方へ
歩いていった。子供は、それに気付くと泣き
出した。大人たちは、どんどんと遠ざかって
いく。子供は、はだしのままでかれらを
おいかけていく。細い車道に丞がった所で、
子供は、大人たちにおいついた。しかし、
かれらの前に回ってみると、30半ばぐらい
だったはずの大人たちは、まだ初々しい
高校生の顔だちをしていた。そして、
子供は、自文の目線がかれらと同じ高さに
あることを知った。かれらは、見たことも
ない同世代の男に目もくれず歩き去って
いった。
微かな話声が、少年を眠りから引き戻した。
耳に意識を集中させると、水音に混じって
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男生と女性が二人でいるようだった。かれは、
四つん這いになると、音を立てないように、
慎重に草をかきわけて、音のする方に
近よっていった。満月の光が、かれに
味方してくれた。灰色の砂の上に、男と女の
姿が浮かび上がっていた。二人は、しばらく
の間、変化することのない水面を見つめて
いたが、男の方は、おもむろに、靴をぬぎ
ジーンズを膝の高さまで上げると、水流に
入っていった。女は、始めは躊躇していたが、
男のしつこい手招きに応じて、男の元へ
近付いていった。顔に笑みを浮かべ、男は
やさしく女の腰に手を回した。月は上空から
かの女を照らし、少年は正面からその顔を
じっと見つめていた。少年は、新造の激しい
動きを感じ、両手の震えを抑え、かの女の
姿を見つめていた。
少年は、他人から命令されて何かをすると
いうことが嫌いだった。高校へなど
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行きたくはなかったのだ。しかし、高卒程度
の最低学歴は作っておけという両親の強い
意見に従う形になってしまったのであった。
母親は、息子の進路が決まると、
安心したのだろう、父親に離婚話を
持ちかけた。大人の心理という物が
根本的に分から無くなってしまった少年は、
ストレスを発散させるために、
バスケットボールを始めた。ストレスの発散
というよりも、1学年上のショートヘアーの
女の子に憧れていたからといった方が当って
いるかもしれない。どの部員に対しても
平等にやさしく、けして美しいという容貌は
していないが、とにかく特別な雰囲気を
持っていた。ある時、かれは、シューズを
選んで欲しいという口実でかの女を誘って
みた。気持ちよくOKしてくれたかの女は、
買い物の行き帰りに、いろんな事を教えて
くれた。少年と同じクラスの女生徒とは
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話す内容は全く違っていた。タレントには
興味が無く、音楽や映画を始め外黒の習慣や
立場についても詳しかった。とにかく、
憧れの存在だったのだ。
そんなかれのヒロインが、今、深夜の
川辺で中年男と星空の下で、抱くき合って
いる。かれは、必至に呼吸を整え、土手を
登り始めた。車道まで来た所で、再び、
二人を見やった。男は、満足そうに、
白い煙の線を作っていた。
路上には、赤いフェアレディーZが
止められていた。それは、現在、学校中の
生徒の話題の中心となっている車体だった。
学校の駐車場にそんな目立つ車が止めて
あれば、だれも気付かないはずはない。
クラブの先輩の話では、それは教頭の
持ち物だということだった。少年は、石を
拾い上げると、ボンネットにラインを引き、
ついでに、バックミラーに地面を写した。
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