#1197/3137 空中分解2
★タイトル (XPG ) 91/ 9/22 11:19 ( 44)
隅に…… KAZ
★内容
とある古ぼけた酒場。痛んではいるが、二階建てでしっかりした木で作られている
らしく壊れるという心配はない。そんな看板に『古代の王都亭』とある酒場はいつも
の様に喧噪に包まれていた。ところ狭しと置かれた丸いテーブルにはそれ以上の数の
人が座っており、みな酒を片手にそれぞれの話しに華を咲かせていた。一日の仕事が
終わった労働者、遊びを生きがいとする遊び人、そして剣で生計を立てている冒険者
……みな、この雰囲気を楽しんでいた。それらの人達を半ば羨みながら従業員達はそ
の店の親父の指示の元、動いていた。
そんな酒場の片隅に、美しい琴を持った男がいた。耳が尖っており、精悍な顔つき
をしている。体は少し細目だが、背丈とちょうどいい具合にマッチしていた。男はそ
の喧噪から少し離れた場所に座っており、その前には帽子が置かれていた。そして男
は華麗なしぐさと共に琴から見事な音を出し始めていた。その音と共に彼の美声もま
た酒場の中を轟き始めていた。
我らが住まうこの世界に
法則は星の数ほど存在する。
その一つにどんな生き物にも
当てはまる法則がある。
鳥達は生の為に地を巡るが
最後には生まれし場所へと帰還する。
魚達もその生涯は大海へと旅立つが
川で生まれし者は
その生まれし地へと戻り
新たなる生をもたらす。
そして木達は生まれ育ちし大地を
生涯一度も捨てず、長い年月の後
生まれし大地へとその体を戻す。
が、この世にはそれを
忘れし生き物もまたいる。
彼らは愚かにもその法則に逆らい
寂しさを紛らわすが為に友や仲間を作る。
法則を守りし者はその魂を神の
手の中へと委ねられるだろう。
しかしその生を自分が生まれし地と
異なる地で終えることを悔やむことになろう。
エルフの吟遊詩人の歌は終わった。そして酒場は先程の喧噪が嘘のように静まりか
っていた。そしてしばらくすると拍手の嵐ではなく、すすり泣きや大きな泣き声が聞
こえてきた。中には声を押し殺し、涙のみ流している者もいた。
そんな状況を横目に、エルフは帽子に詰まった銅貨や銀貨を集め、そして簡単な身
支度をして酒場の入り口へと歩き出した、会心の笑みを浮かべながら。果たしてこれ
はエルフの使った呪歌の効果なんだろうか? それとも……
XPG27823 KAZ