AWC                派遣前の出来事( 終) ハロル


        
#1127/3137 空中分解2
★タイトル (GSA     )  91/ 8/23   8:16  (165)
               派遣前の出来事( 終) ハロル
★内容

○ 駅・プラットホーム
      北室と春美が最初に出会った駅のプラットホーム。そ
      こに電車が到着し、北室が降り立つ。北室、横を向く
      とそこに春美の姿。春美は最初出会った時と何もかも
      同じで、いつもの鞄にいつものセーラー服姿。ただ違
      うのは春美の表情で明るく笑っている。
北 室「よお」
春 美「ここにくれば会えると思って……」
北 室「何かいいことがあったって顔だな」
春 美「(笑って)わかりますかあ?」
北 室「何があった?」
春 美「英語のテストで100点とったんです」
北 室「凄い快挙じゃないか」
春 美「それでパパとママが御褒美に何か買ってくれるんですって。
    今日、今から待ち合わせして一緒に買い物に行くんです」
北 室「(驚き)お前さんの両親と一緒に?」
春 美「(きっぱりと)ええ、一緒に……」

○ 同・改札口・外
      北室と春美、歩きながら話している。
北 室「お前さんの親父さんはお母さんのことを許したんだな」
春 美「ええ」
北 室「それで……お前さんも許したのか?」
春 美「父が許したんだから私も許します」
北 室「そうか……いや実は心配してたんだ。はっきり言ってお前
    さんがそう簡単に割り切れるとは思わなかったよ」
春 美「確かにいろいろありましたけど、今はもうどうでもいいん
    です」
北 室「どうでもいいって?」
春 美「北室さんに言われて、私ママやパパの人生を尊重しようっ
    て決めたし……」
北 室「別に俺やあのマスターの言った事なんて気にしなくったっ
    ていいんだよ。それに両親の仲がいいことにこしたことは
    ないじゃないか」
春 美「それはそうよ、もちろん。でも私、立場が逆になったらっ
    て考えたの。もしパパやママが私の人生を尊重せずに、私
    の好きな人を認めたりしなかったらやっぱり嫌だもの」
北 室「(驚き)好きな人が出来たってことかい?」

      春美、頷く。

北 室「もし、お前さんの両親に今の話を聞かせてやったらぶった
    おれるかもな」

      春美、笑う。

北 室「大人の考え方になったんだな」
春 美「(立ち止まって)大人に見えますか?」
北 室「強くなったよ」
春 美「また何かあったら相談にのってくれますか?」
北 室「人に頼るのは子供の証拠だぞ」
春 美「私もう子供じゃありません!」
北 室「そうだ。だからもう俺がいなくても平気な筈だ」
春 美「それどういう意味?」
北 室「……アメリカ行きは明日なんだ」
春 美「(驚き)そんな!……そうなんですか」
北 室「せっかく友達になれたのに残念だな」
春 美「でもアメリカに行っても手紙のやりとりぐらいは出来るで
    しょう?」
北 室「(戸惑い)それは……まあ……ね」
春 美「書きます……私……」

      春美、寂しそうな表情。

春 美「私、北室さんには感謝してるんです」
北 室「俺は大したことはしてないよ」
春 美「(元気良く)私もアメリカに行こうと思ってるんです」
北 室「前はアメリカは嫌いだって言わなかったっけか?」
春 美「(うろたえて)でも好きになったの!」
北 室「どういう心境の変化だい?」
春 美「それは……両親が仲直りしたんだもの。考えだって変わり
    ます」
北 室「アメリカへ行ってどうする?」
春 美「暮らすんですよ。そこで」
北 室「俺の考えじゃアメリカで暮らせる人間2種類しかいない。
    1つはアメリカそのものが好きな事。もう1つはアメリカ
    に、親や兄弟、或いは……(言葉に詰まる)」
春 美「或いは?」
北 室「うん? まあとにかくアメリカに何か目的意識があるかっ
    て事だよ」
春 美「それだったらありますよ」
北 室「どんな目的?」
春 美「アメリカで私のただ一つの夢をかなえたいなあって思って
    ……」
北 室「そういえば前に言ってたな。お前さんのただ一つの夢って
    いうのは確か、本当に……」

      北室、言いかけて言葉につまる。何かを悟ったような
      驚きの表情。春美、恥ずかしそうにうつ向く。

北 室「本当に……それは……アメリカでなくちゃ出来ないことな
    のかい?」
春 美「ええ! その為に今英語を一生懸命勉強してるんです」
北 室「それで英語のテストで百点を?」
春 美「そういうわけじゃないんだけど」
北 室「(おそるおそる)……どんな夢だったっけ?」
春 美「もう教えてあげない!」
北 室「努力は認めるけど、外国で暮らすのは大変な事だぞ。英語
    が出来るだけじゃ駄目だ。その国の習慣や風習になれなく
    ちゃならない。そう簡単にはいかないぞ」
春 美「わかってます。私、馬鹿なマネをしようとして北室さんに
    御迷惑をかけたときから、いい加減な気持ちで行動するの
    はやめようって決めたばかりなんです」
北 室「それなのに簡単にアメリカで暮らすだって?」
春 美「(北室をまっすぐに見つめ)決していい加減な気持ちじゃ
    ありませんから」

      北室、戸惑う。

北 室「(不機嫌そうに)努力が報われるとは限らないぞ」
春 美「(微笑んで)アメリカは努力が報われる国じゃなかったん
    ですか?」
北 室「(うろたえて)大人に向かって揚げ足なんかとりやがって
    ……」
春 美「北室さんは私の人生を尊重してくれないんですか?」
北 室「……いや! それはするさ……勿論……」
春 美「(つめ寄って)ホントに!」
北 室「(うろたえて)いや……だから、それは……」
春 美「(微笑んで)よかったあ!」

      北室、怒り顔で春美を見据える。春美、少しショボン
      とした表情。
北 室「(微笑んで)……まあ、とにかく頑張れ」
春 美「(吹き出して)はい!」
北 室「しっかりな、お前さんの人生はこれからだ」
春 美「北室さんも……お身体に気をつけて」
北 室「それじゃあ、また」

      北室、春美に手を振りながらタクシー乗り場の方に向
      かう。

春 美「向こうについたら手紙下さいね!」

      北室、春美に手を振りながら、その場を去って行く。
      北室、タクシー乗り場につき、もう一度春美の方を見
      ると、春美の父親の伸夫と母親の夏枝が春美のところ
      に来ている。親子三人は幸せそうで楽しく笑っている。
      北室、それを見ながら微笑み、タクシーに乗り込む。
      タクシー、走り出す。北室、タクシーの窓越しに春美
      達を見るとそこには親子三人が幸せそうに肩を並べて
      歩いている姿がある。北室、まだ春美達の方を見てい
      るが、やがて羨望と悲哀の混ざった表情をしながら正
      面を向き、ため息をつく。

      北室を乗せたタクシー、都会の渋滞の中に消えてゆく。
      (スタッフ、キャストの全タイトル)
                           (終)



※作者註

・この作品においてのシナリオの書式はパソコン通信用に独自に考
 えたものであり、一般のそれとは異なっております。
・この作品はフィクションであり、実在の国家、企業、個人等とは
 何の関係もありません。
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 です。この作品の内容と類似する内容の作品を他に見受けられた
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