AWC お題「ミル・フィーユ」  スティール


        
#1066/3137 空中分解2
★タイトル (RJM     )  91/ 8/ 2  13:42  (110)
お題「ミル・フィーユ」  スティール
★内容
    (派手な野郎だ!)俺はそう思った。シャンデリア・・・
    大きく豪華な部屋、取調室にはもったいない部屋だ・・・

    真っ赤なブレザーに、白のズボン、水色っぽいシャツ、だが
   妙に似合っていた。ったく、高い服着やがって、

    俺は奴の向かい側に座っていた。
   「名前は?」調書のイロハのイだ。
   「ミル・フィーユ」

   「ミル・フィーユ?いったいなんのことだ」、と俺は聞いた。
   「千のはっぱ。とても葉が多いってことだ」、と奴は答えた。
   「どうして、そんな名前をつけたんだい。」、と俺は突っ込んだ。
   「中国名は葉千隠というんだ。わかるかい」、と奴はおとぼけだ。
   「そうか、落ち葉は落ち葉の中ってことか」、と俺は尋ねた。
   「その意味もあるが、でも別なのもあるぜ」、と奴は続けて、

   「そう、べつなのがな」と言った
   「やっとペースをくずしたな」俺は退屈を紛らわすように言った。

    奴にはまだ余裕があった。なんとかこっちのペースに持ち込ま
   ねば・・・

   「なにか、言いたいことがあったら言ってみろ、調書にはしない」

    奴はゲラゲラ笑った。それから、ゆっくりと立ち上がり、窓か
   ら、外を見た。こちらをチラッと見てから
   「いや、いい。何も話すことはない」と言った。

   「うじゃうじゃ、来るな、パトカーが。」
   「お前を捕まえにな・・・」

    私は椅子にがんじがらめに縛られていた。刑事の私が・・・。

   「中には入ってこないな、」
   「へたに踏み込むと逃げられるからな、怪盗ミル・フィーユにな」

    都庁の都知事室、都知事はシャワー・ルームに閉じ込められて
   いた。警察は徹底して包囲を固めていた。もちろん、中にも警官
   が、多数入り込んではいる。だが一度入ると、親の死にめでも、
   簡単に出してもらえない。ミル・フィーユの変装かもしれないか
   らだ。都知事が人質では、地方公務員の警官は手がだせまい。

   「大藪春彦なら、いまごろお楽しみだな・・・」
   「対策本部長がそんなこといっていいのか。本気にするぜ。」
   「いや、お前の自由だ。お前のファンが減るがな。」
   「そこまでいうんなら、あんたにしてあげようか」

    というなり、奴は俺のズボンを下ろした。

   「ばかっ、やめろ。やめろ。」
   「おめぇが、大藪春彦って言ったんだろ!」

    いま、午後五時、もう一時間もこうしている。どんどん職員を
   帰宅させてはいるはずだ。しかし、いちいちチェックしているか
   ら、時間がかかっているのか。出入りの市民だって、かなり・・
   「電話させてくれ・・・」俺は言った。だめで、もともとだ。
   「何をするんだ?刑事さん」
   「陣頭指揮するのさ」
   「こっちに筒抜けだぜ」
   「それでもいいさ。あいつらはアホだからおんなじことだ。」
   「お前の顔は割れていない」俺は奴の覆面づらを見ながら続けた。
   「だから、都庁内の人間は全員捕まえる。女子供も含めてな。」
   「そんなことしていいのかい」
   「都庁から一人も出さない、そうすると騒ぎだす、暴動がおきる。
    いや、おこさせる。」
   「じゃあ、やってみな」と奴は言った。

    新宿警察署。対策本部。電話が鳴った。風采の上がらない署長
   に電話が廻された。
   「ああ、署長さんか、オレだ、これから俺の指示通りにしてほしい・・・
   「でも、いま、捕まってるんじゃないんですか?」
   「責任はオレがとる。それじゃぁ、都知事の声もきかせようか!」
    オレは特徴のあるダミ声を出した。
   続いて、都知事の声がした。
   「しょちょうさん、どうか、かれのいうように・・・と声は言った
   「はい、わかりました」と署長は言った。公務員の悲しいさがだ。

   「いいか、まず、都庁を封鎖し、ちょっとでも騒ぎがおこったら
   しょっぴけ。女子供もだ・・・・・・」と細かい指示がなされた。

   半日ほどたった。機動隊まで総動員して、電話の声の指示のもと、
   都庁内の人間は次々と捕まえられ、監禁された。そして、最後に
   とうとう都知事室に到達した。さすがに、一時間ほど前から声の
   連絡は途絶えていた。午前8時半。

    署長のもとに報告が届いた。「いま、都知事室から、ハングラ
   イダーが飛び出しましたぁぁぁ!」報告とともに、都知事室にみ
   んな、なだれ込んだ。対策本部長は椅子に縛られ、都知事はバス
   ルームから救出された。
   「何やってるんだ、ハングライダーを追うんだ」と一喝するなり、
                 本部長は一人で飛び出して行った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆    その頃、俺はハングライダーに乗っていた。
   「アホ署長が・・・」ミル・フィーユが俺と都知事の声色を使っ
   て騙していたのが、わからなかったのか。
    ミル・フィーユの野郎も、ハングライダーで人を窓から突き落
   としやがって・・・

    俺は新宿アルタの上を飛んでいた。下には、人の海がうごめい
   ているのが見えた。俺はふとあるものに気付いた。真っ赤なブレ
   ザー!奴だ!もう着替えたのか!
    飛び下りるには高すぎた。

       俺はミル・フィーユとのやりとりを思い出していた。
      「そうか、落ち葉は落ち葉の中ってことか」    __
      「その意味もあるが、でも別なのもあるぜ」   |@@|
                             |<>|
       人の波の中で奴はひときわ目立っていた。     ̄ ̄
      (派手な野郎だ!)俺はそう思った。     レミントン・スティール




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