#1049/3137 空中分解2
★タイトル (XPG ) 91/ 7/18 22:26 ( 82)
お題>「鏡」 KAZ
★内容
〜追跡〜
ハァハァハァ...
視界があまりない森の中を男が疾走していた。革のよろいを着、腰にはあまり長く
ない剣を一本さしている。それ以外の荷物は全く見当たらず、どれほど男が急いでい
るかがうかがえる。
その男の後ろからはもう一つの足音が聞こえていた。状況を見ると、男はその足音
の主に追い掛けられているようだが、焦り方は尋常ではない。男はどうしてこんな事
になってしまったかを思い出していた。
* * *
男の名はバーレット。彼は仲間と共に各地を点々とし、商人の護衛などを請け負い、
それで生計を立てている。俗に言う冒険者である。他の冒険者達の中にはは古代王国
の遺跡などを探索する者達もいるが、バーレットとその仲間達は決してそういった仕
事には手を出さないことを信条としていた。派手だが危険がつきまとう冒険より、地
道だが確実に経験を積める方を選んだのだ。
しかし、今回に限って、彼らは何故か人々から「反射宮」と呼ばれる遺跡に来てい
た。彼らが信条を破ってまでこの仕事を受けたのは仲間の一人であるクリスの叔父(
ある国の王の腹心)が奇怪な呪いに襲われた事に端を発していた。クリスの叔父は民
から献上された魔法の指輪を調べるべく、いろいろと試しいた。が、悪影響は見られ
ず、安心しきってその指輪をつけてしまった。すると、叔父の体力は徐々に奪われて
いった。国きっての司祭や魔術師がその呪いを解除しようと全力を上げた。彼が死ん
では国々の間での均衡は破られ、下手をすれば戦争に突入してしまう。しかし逆に、
彼らは瀕死状態に追い込まれた。手だては完全に断たれた...と思われたが、情報
網からこの呪いを打破できる可能性がある物が彼らが行った「反射宮」にあるという
情報を手に入れた。そこでたまたまこの国に泊まっていた彼らはこの仕事を依頼され
た。
彼らは「反射宮」という名は合わないななどど無駄口を叩きつつその遺跡へと入っ
ていった。中は簡素な作りで、中を調べ尽くすのに20分とかからなかった。そして
バーレットが本棚のような物の後ろに隠し扉があるのを見つけた。しかしここで遺跡
探索の経験の無さが出た。普通の冒険者ならばここで不信に陥るはずである。何故、
あまり荒らされていないのだろうか? 何故、隠し扉が簡単にみつかるのだろうか?
が、彼らは迷わず奥へと入っていってしまった。
奥の部屋の壁は全て鏡が取りつけられていた。そして床は一面、色とりどりの花で
覆われていた。
「この花が例の『物』という奴か?」
バーレットの言葉に全員うなずいた。と、この部屋を観察するとどうやら天井から
太陽光が入り込み、鏡がうまくそれを反射して花の成長を助けているようだ。それら
の鏡に囲まれ、一行はおかしなな気持ちになったが、突然、クリスがみなに声をかけ
た。入ってきた扉の向かい側の鏡に奇妙な文字のような物が浮かび上がってきた。仲
間全員がこれを食い入るようにみつめた。
「『悔いを改めよ』?」
古代の知識を少々もったクリスは声を上げ、浮かび上がってきた物に書かれた下位
古代語と呼ばれる文字を読み上げた。が、突如、今度は彼らのシルエットらしき物が
浮かび上がってきた。
「にげろ!」
バーレットは出せるだけの声を振り絞って叫んだ。あっけに取られていた仲間達は
その声に反応し、サッと入ってきた隠し扉から逃げ出した。しかし逃げ出す際、二人
が殺された。そして遺跡から出る前にクリスを含む二人が殺され、残るは一人となっ
てしまった。
* * *
ハァハァハァ...
ついさっき起こった悪夢のような出来事を思い出しつつ、全力で逃げていた。しか
し追っ手は、一人だけになっていたが、疲れを全く見せずに追い掛けてきていた。
「うわっ!」
バーレットは何かにつまずき、倒れた。木の根らしい。その不様さに彼の盗賊とし
てのプライドはズタズタになった。しかし今は恐怖が先行していた。そしてその恐怖
の元が追い着いた。そいつは−−シルエットであるがバーレットには判った−−邪悪
な笑みを浮かべ、短剣を振り上げた。
「俺もやられるのか...」
そんなことを口走っていたが、頭の中では2つの言葉がよぎっていた。『邪悪』、
そして『悔い』。ハッ!
「認める!俺の中にも『悪』はある!」
シルエットはその言葉に敏感に反応した。振り上げた。短剣をピタッと止めた。そ
してすさまじく長い時間−−そうバーレットは感じた−−の後、シルエットはかき消
いえていった。まるで空気と同化するように...
* * *
「ッウ!」
頭が悲鳴を上げていた。が、バーレットは構わずその自分の物でないような体に命
令し、立ち上がらせた。そして今度は眩しさの為に固く貝の閉じていた目を徐々に開
けてゆく。するとそこは、さきほど仲間全員で入った鏡と花の部屋だった。
「あれは...幻影だったのか!?」
そんな希望が浮かび上がった。が、そこには『現実』があった。自分自身を認めら
れなかった者達の...(終)
WAVE-NET: WAV012
PC-VAN: XPG27823 KAZ