AWC お題>「鏡」           ふみ


        
#1048/3137 空中分解2
★タイトル (AFD     )  91/ 7/18  19:21  ( 99)
お題>「鏡」           ふみ
★内容
アナ「軍配は東の琴富士に上がりましたが、ほとんど同体だったですね」

解説「貴花田が琴富士を土俵際まで追いつめたんですが、突然ガクッと腰が砕けたん
   ですよね。どうしたんでしょうか」

アナ「あっ物言いです。物言いがつきました。正面の土俵審判の藤島親方が手を上げ
   ました。土俵中央に5人の審判が集まりました。しかし藤島親方は息子さんの
   貴花田の一番に物言いですか。なかなか珍しい場面です」

解説「貴花田は勝ち越しがかかってますからねぇ・・」

<土俵中央にて>

藤島「琴富士は何かやったんじゃねぇか? 俺には見えなかったけどよ。貴花田のケ
   ツをつねったとか・・大事な息子のケツを・・あの野郎」

浪花「そだ、そだ。何か悪さしたんだろ。ちょっと相手が人気があるとすぐこれだ」

塊傑「私は何も見えなかったですよ。貴花田は突然力が抜けたんです。変ですね」

高砂「貴花田は急に眼をつぶった様だったな。汗でも眼に入ったんじゃないか」

藤島「とにかく何かインチキやったんだろうから行司差し違えで貴花田の勝ち、これ
   でいいな」

塊傑「ちょ、ちょっと待ってください。それじゃ無茶苦茶です。せめて取り直しにし
      てください」

行司「・・・お客さんも納得しないじゃろうて」

藤島「うるせぇ、行司は黙ってろ。客は貴花田を見に来ているんだ。ここで勝ち越し
   を決めれば盛り上がるだろうが」

塊傑「しかし、それでは勝負の厳正さが・・」

高砂「塊傑親方、あなたは角界の現状というものを認識しておられない。藤島親方が
   クシャミをすると理事長が風邪をひく時代なんですよ」

浪花「そだ、そだ。藤島部屋あっての俺達という事を忘れちゃいけねぇぜ」

高砂「ま、とにかく本人に事情を聞いてみたらどうでしょう」

藤島「Oh、What a good idea! おい貴花田こっちへ来なさい」

貴花田が土俵に上がり、審判の輪に加わる。

藤島「おまえどうして急に力を抜いたんだ。言ってみなさい」

貴花田「・・・・・・・・・・・・・・・・」

藤島「黙ってちゃ分からないだろ。説明してみなさい」

貴花田「・・・・・・・・・・・・・・・・」

藤島「おい光司。無口も時と場合によりけりだぞ。言うべき時にはちゃんと言わなき
   ゃダメだ。母ちゃんも昔から言っているだろ、オシッコの時はオシッコって言
   いなさいって」

貴花田「・・・・・・・・・・・・・・・・」

塊傑「何か眼に入った様に見えたんだが、どうしたのかな」

高砂「君が勝ち越すかどうかは客の入りに影響します。それは相撲協会の収入に響き
   ます。それがひいては場所後の打ち上げの酒場の選定にも影響します。新宿に
   なるか銀座になるか、私はそれが気がかりです。一言申しておきます」

貴花田「・・・・・・・・・・・・め、眼に」

藤島「ん? 眼にどうしたんだ」

貴花田「・・・・・・・・・光が入ったんす」

藤島「なに? 光? カメラのフラッシュじゃないのか?」

貴花田「・・・・・・いえ、桟敷席の方から」

藤島「どっちだ? 西の方か? 北の方か?」

貴花田は西の方へ顔を向け、アゴで中段の桟敷席を指し示す。

藤島「あそこか。・・ん? 何か変なのがおるな」

浪花「女みたいですね。しかしずいぶんでかい女だ」

藤島「あの女がお前に光を当てたのか」

貴花田「・・・・・・・・そっす。か、鏡で」

高砂「何? 鏡で? そりゃ妨害行為だぞ。野球の走塁妨害、競馬の進路妨害、相撲
   では何というんだろ。取り組み妨害かな」

藤島「く、くそっあの大女、きっとどっかの部屋の回し者に違いねぇ。ニ所ケ関か、
   佐渡ケ嶽か、いや九重かも知れん。必ず調べ出してオトシマエつけたる」

塊傑「とにかくこの取り組みは無効。取り直しでいいですね。親方衆」

一同「うむ」

 (ずっと後に分かった事だが、大女は女装した若花田だったのである)  [完]




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