AWC お題>「鏡」   KAZ


        
#1020/3137 空中分解2
★タイトル (XPG     )  91/ 7/12  15:54  ( 86)
お題>「鏡」   KAZ
★内容

                  〜対決〜

 「今日こそは、今日こそは奴を倒す!」
 静けさが支配する部屋。装飾などはいっさいなく、簡素だが安眠を約束してくれる
ベッド、彼の持物を全て収めてくれる棚、そして彼にとってもっとも大切な商売道具
を収めてくれるラック以外は何もない。
 強靱な肉体。全てを粉するごとき剣。そして精悍な顔つき。彼はその『時』が来る
のを待ちわびていた。が、その待ち時間は彼にとって気持ちいいものであった。待て
ば待つほどテンションが高くなり、倒す自信が溢れるほど大きくなる。しかしその待
ち時間も不意に終わった。
 「ファルレ、時間だ!」

        *          *          *

 「...やっとこの傷の仇を取る時が来たようだな」
 喧噪。派手に飾り立てられた部屋。その部屋には10数人の男達がそれぞれの思い
を話し、時には笑い、時には怒号が響いていた。そんな中、1人の男は自分の剣の手
入れをしていた。かすかに冷気が覆う剣。男の自慢の一品だった。
 男は細身な体で、その部屋の男達と比べれば貧弱にも見えた。しかしその部屋の中
に居て、彼は他の男達を圧倒していた。肉体的ではなく精神的に。が、圧倒しながら
も彼は冷静にある事を分析していた。その冷静さは自分の命をも計算の要素の1つと
している。しかし彼はその計算を終了せざるえなかった。
 「エルモスさん、時間です! 」

        *          *          *

 やれ〜!
 殺せ〜!
 そんな怒声がその場を支配していた。円形の建物の周りには席が誂えられ、演出の
効果をより高めていた。そんな中、1人の着飾った男が立ち上がり、高々と声を上げ
た。
 「これより本日のメインイベントに移ります! まず左手から登場いたしますのが
巨人殺しのファルレ! そして右手から登場いたいしますのがこの闘技場のチャンピ
オン、アンデッドハンターのエルモス! なお、この対決は以前にも行われ、その勝
負はエルモスの勝利で決着しております! では最高王(ハイ・キング)、ガウウェ
ル3世のお言葉をお聞きください! 」
 その言葉に、特別に誂えられた観覧席にいる真っ赤なローブを見につけた若き人物
が立ち上がった。若いがその顔には威厳が溢れるほど刻まれており、その事が人々を
一層引きつけていた。
 「この試合、勝った方には自由が約束されている! その事を心え、ぜひ全力だ出
して戦ってくれ! 」
 その宣言の後、2人の戦士が正反対の方向から現れた。ファルレは完全武装でその
場に現れた。見るからに重いプレート・アーマー、並の戦士では両手を使っても扱え
ないグレート・ソード(ファルレはこれを片手で持っている)、そして少年位のサイ
ズなら簡単に全身を覆ってしまう程のタワーシールド。『重戦車』という表現が彼に
は最も合っていた。
 一方、エルモスはファルレの剣から見ればオモチャのようなブロード・ソード、そ
して鎧は身軽さを疎外しないレザー・アーマー。盾は持っていない。まさしく一撃必
殺の構えだ。
 壮大なる闘技場の中央で、2人の『男』は向き合っていた。緊張は最高潮にまで達
していた。その緊張を破るかのようにさきほど2人を紹介した男が再び立ち上がった。
見下すかのような視線。しかし2人は完全に無視していた。が、その男の声だけは両
者とも聞いていた。
 「始め! 」
 バ! と2人の剣からオーラが発せられる。エルモスはその予想外の出来事に動揺
させられたが、意を決すと、一気に突っ込んでいった。
 「この傷の仇、討たせてもらう! 」
 な...と今度はファルレの方が動揺した。やられる...と思ったが、ファルレ
の体は動いていた。剣で相手の攻撃を受け流す。が、ここでまたもや意外な事が起こ
った。双方の剣がぶつかったと同時にボロボロに崩れさったのだ。
 「これでは戦えまい...」
 王はこの戦いの一時中断を宣言しようとした。しかし2人はその全ての武装を捨て
去った。上半身の下着も捨て去り、上半身裸の状態で今度は肉弾戦を仕掛けた。
 観客は、王も含めて、完全に沈黙してしまった。闘技場に響くのは肉と骨がぶつか
り合う音のみだ。エルモスはヒット・アンド・アウェイで、そしてファルレは一撃一
撃に渾身の力を込めて。しかし2人は殴り合うにつれ、お互いに共通する物を見てい
た。虚しさ、寂しさ、悲しさ。2人は強さを極めんとした。が、その結果はこれら感
情を生むばかりだった。もう、こんな戦いは止めたい...
 「そろそろこの戦い、終わりにしようじゃないか」
 エルモスはそう言い放った。ファルレはその声に頷き、再び対峙した。最初、この
闘技場に入ってきた時のように。
 その静寂がどれだけ続いただろうか? その時にはすでに、2人の意識はもう無か
ったのかも知れない。しかし『男』としての意地、そしてプライドが体を動かしてい
た。右腕に残り全ての力が流れ込んで行く。大きく振り上げ、一気に前に押し出す。
2人の腕は矢、いや流星の如く放たれた、互いの頬に向けて。
 ガン! 狙いはたがわず、見事に命中した、同時に。2人の『男』はお互いにもた
れかかるように母なる大地へと崩れ落ちた。
 「終わったか」
 王はため息混じりに言った。その声は、あきらかに落胆していた。
 人間には、多数派を支持し、少数派を無視するという性がある。2人の『男』はそ
んな性の犠牲にされた。
 「え〜、次の開催日は...」

                       PC-VAN:   XPG27823
                       WAVE-NET:  WAV012  KA




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