AWC お題>「鏡」  レミントン・スティール


        
#1006/3137 空中分解2
★タイトル (RJM     )  91/ 6/28  20:40  ( 97)
お題>「鏡」  レミントン・スティール
★内容

   あいつは、時々鏡に向かって話かけていた。
  また、思い出してしまった。「畜生!ぶっ殺してやる!」
  俺は、呟いた。知らない人が見ると、おかしいと思うかも
  しれない。あいつは、俺から全てを奪った。すべてだっ!
  ほんとうにすべてだ!何のために存在しているのか、まっ
  たくわからない。もう、死にたい、

   昔は俺もスポットライトを浴びてキラキラしていたスタ
  ーのようだった。みんな、私を見て微笑んでくれたし、私
  も同じように、微笑み返して上げた。
   そりゃあ、確かに、怒った顔をしたり、変な顔をした人
  もいた。でも、みんな、僕と正面切って見つめあう時は、
  少しでも、綺麗に観てもらいたい、かわいらしく観てもら
  いたいと内心は思っていたはず。
   確かに、私に気付かぬ人は黙ってとおり過ぎていった。
  でも、それはしょうがないよね。

   それが、あの人に出会ってから変わった。初めて出会っ
  た時は、お互いにドキドキした。僕はみんなから「お高く
  とまっている」って言われてから、彼女も少し迷ったかも
  知れない。ぼくだけじゃなく、他にも候補は居たみたいだ。
   でもっぼくを選んでくれた。彼女には鏡に話かける癖が
  あった。鏡の中の自分に話かけているんだけど、僕は僕に
  話かけているみたいにそういう話を聞くとドキドキした。

   あの人が泣きながら長い髪を切ったことも、長い間苦し
  んでいたことも知っていた。なんとかしてあげたかったの
  にできなかった。あの人が鏡に向かって泣いている顔や、
  悲しんでいる姿を思い浮かべるだけで胸が痛む。

   終わりは突然来た。でもこうなるのは最初からわかって
  いた。彼女は最後まで、迷っていた。でも、結局僕を捨て
  て行ってしまった。きっと彼女は僕のような高級品を手に
  することはできないだろう。彼女が手に入れるには負担が
  大きすぎたのだ。僕は普通とはちょっと違っていた。いい
  意味で。
   僕はそれから何年も苦しんだ。光のない暗い世界でもが
  いていた。僕には次の一歩を踏み出す足がなく、なにかを
  つかむ腕もなかった。僕の手足は僕を支えるだけの存在だ
  った。どんなに、迎えを待ち望んだことか。いつかまた逢
  える。一目だけでいいから。何を考えたろう。憎んだ。寂
  しかった。逢いたかった。


  人生の終わりのほうの残像、残像の
        あなたをいつもスクリーンに描き出していた

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   工事人夫が数人作業をしていた。地下室へ続くドアを開けた。
  そして、彼らは階段を降りていった。

   おしゃべりな棟梁だった。

   「おーら、みんな気をつけっぺよ。しかし、くれぇな。今日は
   この部屋を掃除してなげっぺゃ。誰か懐中電灯もってっか?
    おーし、かせかせ。」

    おしゃべりな棟梁は、懐中電灯で部屋を照らした。

   「おっ高そうな鏡があるぞぉ、だれかいっかぁ。」

    みんなは鏡に注目した。鏡のスクリーンにある物が映った。
   彼らの姿ではなかった。    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

    若い女性の姿だった。鏡に向かって独り言を言っていたよう
   だった。人夫たちはそこまで気がつかなかっただろうが。

    「ひっひっひぃぃーーー!」棟梁は反射的にドタ靴で、鏡を
   割ってしまった。それから、彼らは我先にと逃げ出していた。

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    僕はやっと死ねた。僕の魂は、いでて、天国にのぼるんだ!

   最後に、彼女に逢って行こう。それから、天国に人間に生まれ
   変われたらなぁ!

    あっ!その前に人夫たち、呪いころさなきゃ!

            __
           |@@|      ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
           |<>|      ☆レミントン・スティール☆
             ̄ ̄       ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




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