AWC CAMPUS> 夢のようなもの (1) ■ 榊 ■ (59/75)


        
#866/3137 空中分解2
★タイトル (HHF     )  91/ 3/12   8: 7  (154)
CAMPUS>  夢のようなもの  (1)     ■ 榊 ■  (59/75)
★内容


  京夜綺譚 その壱

  いろいろと内に持っている話を少しずつ、少しずつ書いてみたい………と思い
 たって……………、京夜綺譚、書いてみたいと思います。

  まだこれを書きたいと思っているものはなく五里霧中の状態ですが、ただ、そ
 の自分の話などをいつか懐かしむようにして読んでみたいな、などと思ってのこ
 とですから………、内容はいろいろだろうと思います。時には、ただある歌の題
 名のみ。時には、まるっきり写しだしてきたのみ、なんてのもやりそうですが…
 ………、さて、どんなことになるのかな? などと自分で楽しみにしていたりし
 ます。

  「綺譚」という文字は実際には存在しないようです。ある………と思っていた
 のですが、「奇談」もしくは、「綺談」というものしか調べてみてもありません
 でした。「綺」とはあやのある、巧妙な、などといった意味が。「譚」には話、
 談話といった様な意味があるようです。それを合わせた「綺譚」…………。そん
 な意味をこめた漢字だと、今はとっておいて下さい。

  もっとも、これから書いていこうとしているものは、そんな巧妙なものでもな
 さそうですが…………、なんというか、この「綺譚」という古めかしい語呂が気
 に入ってしまったのです。「寓話」とも違う「談話」とも違う………………「綺
 譚」。そんな思いを、この言葉に、感じたのです。


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  *本当はこの「京夜綺譚」シリーズ、すべて小説でやっていきたいのですが…
 ……、そう簡単には話を作れそうにもなくて………。でも、なにはともあれ今回
 は、頑張って小説にしてみました。なお、キャラクターや設定等は新しいのを作
 るのが面倒でしたので、使い慣れたものを使わせていただきます。知っている方
 は、いままでのイメージを重ねて読んでみて下さいね。





  〈 京夜綺譚 その壱 〉    「 すべては儚く、夢のようなもの 」




 「あちっ」
  配られたコーヒーを一口飲んで、綾はおもわず呟いてしまった。
 「あれ、綾ちゃん猫舌?」
  そのコーヒーを配ったとうの榊がまるでからかうかのように聞いてきたので、
 綾はおもわずぷくっと膨れっ面になった。なにしろ、配られたコーヒーは猫舌か
 を問うにしてはあまりにも熱すぎたのだ。
 「わたし、榊さんがあっつーーいブラックコーヒーが好きだと言うことを、すっ
 かり忘れていました」
  綾が可愛らしくぷいっと顔をそむけると、榊は吹き出しそうになる笑いを必死
 にこらえた。
 「くくっ……、ごめん、ごめん。おこらないで」
  榊がいかにも嬉しそうに綾をなだめているのを見て、横にいた沙羅がカップを
 両手に持ちながら言った。
 「解ってて言ったんでしょ? 会長」
 「わかる?」
  榊の言葉に、沙羅は一つため息をつく。
 「会長ってときどき人を怒らせて、楽しんでるもん」
 「綾ちゃんは素直だからね、顔にすぐ出るんだよ。それが楽しくて……」
  榊が手に持ったポットから熱いコーヒーをカップにそそぐと、そのカップを窓
 際に座っていた未杉に手渡した。
 「ありがとう。しかし、変わった趣味だね。人を怒らせて楽しむなんて……」
 「人を怒らせるのが楽しいんじゃないよ」
  榊は軽く笑いながら、自分のカップにコーヒーをコポコポと注いだ。カップか
 ら熱い蒸気がたち昇る。
 「相手が、人として素直な反応を示してくれるのが楽しいのさ………」
 「その定義でいくと、人じゃない御仁が一人いらっしゃいますね」
  未杉が呟きながら横に座っている御影をみると、とうの御影はあの熱いコーヒ
 ーを一気に飲み干し、しかも平然としてみせていたところだったので、思わず残
 りの4人は笑ってしまった。

  毎日の恒例行事となったこのお茶会は、いつものとおり、ソファーだけしかな
 い奇妙な第12会議室において行なわれていた。今回は、隣の生徒会室から抜け
 でてきた生徒会長の榊、どこにでも顔を出す情報屋・未杉、まだこの学園都市に
 きたばかりの綾、そのルームメイトの沙羅、そして不慣れな綾の案内役…………
 と言うよりは、ボディーガードの御影の5人が集まってきていた。
  いつもなら、隣の生徒会室から書記の中条が来たり、よく暇になって歩き回っ
 ている沖などが突如乱入してきたりするのだが、今回はメインの5人だけのお茶
 会だった。
  時計は6時を回ったところで、南側に面している窓から外の夕焼けが差し込ん
 でいた。5人の持っているカップからゆらゆらと湯気が立ち昇り、部屋はゆっく
 りと静かな夕方を迎えていた。

  綾が何げなく外をみていると、視界に入るか入らないかのところに奇妙なもの
 があることに気付いた。なにやら黒々と夕日の影に包まれた、岩ぐらいの大きさ
 の物体。それは、この校舎に近いところにたたずんでいた。
  岩………ではない、何かの人の手による建造物らしく、時折白くきらきらと光
 る。

 (なんだろう………)

  思わず綾は窓に向かって体をのり出した。
 「………どうしたの? 綾さん」
  窓際に座っていた未杉が綾に気付いて声をかけた。
 「ははぁ、あれに気付いたのかな?」
  榊がポットを端にある机に置きながら言った。ちょうど榊のいる場所からも、
 そのものが見えるのだ。
 「あれって…………、もしかして、あの祠のこと? この近代的な校舎に不釣合
 いな」
  沙羅もカップを持って、体をのり出した。
 「あれって………、祠なんですか…………?」
 「もう暗くなってきたから黒い塊にしか見えないね。本当はけっこう綺麗な祠な
 んだ」
 「…………………」
  綾はしばらくじっとその祠らしき黒い影をみていた。一体なんのための祠なん
 だろうか………と思っていたところに、自分の席に戻ってきた榊が説明してくれ
 た。
 「だいたい同時期に、二人の男女があの祠のところで死んでね。あの祠は供養の
 ために作られた物なんだ……………… 本当に熱いわ、このコーヒー」
  後半はどうやら、自分に向けての言葉のようだった。
 「初めての死者事件ですね。8年前の」
  自称、人間記憶集積回路・未杉がこたえた。情報屋と言うだけあって、彼はよ
 く知っている。長く垂れた前髪を軽くかきあげながら、未杉はすらすらと説明し
 ていった。
 「二人とも創立するまでの工事に立ち会っていた二人で、ともに強力な霊能力者。
 まず女性の方が創立間近に事故死、1カ月後に男性が自殺。二人の場所はまった
 く同じ、あの場所であったためその頃、工事に関係していた理事の一人息子、北
 村惣一さんがその一ヶ月後に祠を造った……。もっと詳しいことは御影くんの方
 が御存知ですよね? その工事に立ち会った内の一人ですから」
  未杉が顔を向けると、まるで初めて気がついたように御影は口を開いた。
 「ん? ああ……………………、あそこには井戸があったんだ…………」
  無口な御影はそれ以上のことを話そうとはしなかったが、その顔には明かに何
 かを懐古している様子が読み取れた。
  綾と沙羅ももとの席に戻ると、榊は待っていましたとばかりに口を開いた。
 「今日はあの祠の話だね。この話は前生徒会長に聞いた話なんだ………」



  この学園を建造するにあたって、綾の叔父にあたる、創立者「北村啓治」は土
 木工事の人達とは別に、吉凶・方角・霊など、いわゆる「その方面」の人達を二
 人ほど雇った。これが後の事件につながる二人なのであるが、男性の方が21才
 で大槻博司、女性の方が20才で沢野井夏美と言った。
  特にこの「沢野井夏美」という女性 −−− その道ではかなり有名な一族
 のうえ力も強く、選ばれたのは当然のような人物であった。美人で、ややプライ
 ドも高かったが、明るく、工事現場でもアイドル的存在であった。
  一方、男の方は、「力だけならば夏美よりも上」と噂されたものの、いかんせ
 ん、その力も突然変異でえた力だったためコントロールもきかず、どちらかと言
 えば、なぜ選ばれたのか? と言わざるおえないような人物であった。そのうえ、
 かなりの人間不信。
  そんな二人であったのだから当然、仲は悪かった。その仲の悪さは、工事に従
 事する人達に
 「顔を見合わせちゃ、飽きるまで喧嘩をしている」
  と言わせるほどのものであった。
  確かにまともな会話と言えば仕事に関することぐらいで、ほかの会話と言えば、
 やれ「力では私の方が上よ」だの、「幼い頃から鍛えれば、俺の方が上だった」
 だのとかなり単純なことを言い争っている様子であった。
  そうはいっても工事の方はどんどんとすすみ、二人は喧嘩しながらも職務をま
 っとうせざるおえなかった。その様子は一見して、ほほえましくも見えた。

  その頃の様子はその二人の唯一の関係者とも呼べる、当時16才であった創立






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