AWC CAMPUS> FARTHER (1)  ■ 榊 ■ (50


        
#842/3137 空中分解2
★タイトル (HHF     )  91/ 3/ 9  14:33  (154)
CAMPUS> FARTHER (1)    ■ 榊 ■  (50
★内容




          ★★  CAMPUS CITY 4     ★★

           《 FARTHER 》


                                                by 榊


「はあっ、はあっ、はあっ」
御影は荒くなってきた息を自制し、大きく息をゆっくり吐き出す。
うだる様な暑さが体中の肌に汗をふかせ、頬を、肌を汗が伝っていくのを感じていた。
短い髪の毛にも汗と水滴がつき、走る度に汗が飛び散る。
全神経を張り巡らせ、緊張した面もちで、銃を構えて走っていた。
「しゅっ!」
上層に生えていた木の壁を、軽い呼気と共に沈み込み、その壁を通り抜けると、以前
と変わらぬ早さで欝蒼としたジャングルを走り続けた。
足にまとわりつく草木を物ともせず、御影は低い姿勢で誰もいない広大なジャングル
を走る。
ちょっとした倒木を飛び越えるとき、御影の澄んだ青い目が右にすばやく移動した。
視界の隅で一瞬何かが動いた。
敵?!−−−−−−−
御影は感ずるよりも早く、木の陰に音もなく滑り込み、足を止める。
「フゥ−−−−−−ッ」
一度だけ静かに呼吸すると、御影はその呼吸を止めた。
動きが止まると同時に、じっとりとした汗が吹き出す。
少し破れた迷彩の服からたくましい筋肉がはみ出し、その上を汗がしたたる。
御影は木にもたれながら、ゆっくりと沈み込んだ。
獣のような鋭い瞳と、右手に握られているハンドガンをジャングルの彼方に向ける。
ゆっくりと動く視線の中に、先の動いた〈物〉は見あたらなかった。
ねっとりとした汗でハンドガンのグリップが握りにくい。
軽く、グリップにかけた手に力をいれ、トリガーに指を掛ける。
−−−いる。確かにいる………一人、二人、三人……
   三人だ。
   他に隠れては……いないな。
   偵察かな?
まだ見ぬ敵を気配で察知すると、手をわずかに上げ、スコープに目を合わせた。
ゆっくりスコープを移動させ、10m離れた所にある一本の大木の所までもって行き、
手を止める。
スコープの中の十字に合わせられた大木から、一人の男がゆっくりと体を出した。
きょろきょろ辺りを見渡し、敵がいないことを確認すると後ろに何か合図し、ゆっく
り前進し始める。
続いて一人、二人と姿を現した。
確かに三人だ。
男達は痩せた顔や体を安い薄手の迷彩服で隠していた。
敵だ−−−−−
御影はゆっくりハンドガンを移動させ、先頭の男の肩を狙う。
「ギリッ」
握っていた手に力をいれ、体中の筋肉を硬直させる。
精神が段々高ぶっていく。
心臓の鼓動が激しくなっていき、とうとう最高潮に達したとき、御影はトリガーに掛
けた指に力を入れた。

  ドォン! ドォン! ドォン!

低い銃声が、3発だけジャングルに響きわたった。
風にたなびく硝煙を越えた向こうで、一度だけ体を硬直させた3人が倒れていくのが
見えた。
銃を胸の辺りに構えたまま、御影は低い姿勢で男達に近付いて行った。
男達のすぐ近くで立ち止まる。
男達は肩や足の腿などを押さえながら、もがき苦しんでいた。
どれも急所には当たっておらず、致命傷には至っていない。
御影はその様子を見、安堵のため息をついて、呼吸を再開した。
−−−生きている。
御影は笑わないまでも、緊張の和らいだ表情を浮かべる。
御影は腰に銃を戻すと、重いリュックを下ろし、側面の袋からタオルと包帯を片手一
杯に取り出した。
包帯一個を残しその場に残りをおいて置くと、一人目の男に近寄って行った。
一人目の男が御影の存在に気づくと、荒い息も絶え絶えに後退しだした。
「はっ……はぁっ、はっ!」
「恐がるな」
御影は静かに呟くと、その男の両手を引っ張り、その両手を足と片手で固め動けない
ようにした。
暴れ回り、必死の男を力で動けないようにし、タオルを口に詰め込む。
御影は足につけてあった細身のナイフを抜き取り、男の顔の方に持っていった。
「ぐ〜〜〜〜〜! ふぐ〜〜〜〜〜〜!」
男は喉元近くにきたナイフに恐れ,必死に逃げようとする。
首だけ必死に延ばし、叫び声を上げようとした。
御影はその細身のナイフを男の肩の傷口に突き刺した。
「ぐ〜〜〜〜〜〜〜〜!」
男は声にならない声を上げ、全身の筋肉を硬直させる。
御影は軽くナイフを回し、引き抜いた。
その傷口から血と共に、弾が飛び出す。
「ぐっ!」
御影はそのナイフを元に戻すと、傷口に吸いついた。
すぐ離れ、ぺっと血を吐き出す。
再度吸いつき、同じ事を繰り返す。
御影は横に置いておいた包帯を取り、傷口に巻き始める。
すこしきつめにぐるぐる巻き、最後、包帯の端をぎゅっと縛った。
だいぶ落ち着いた男の顔を見ながら、御影は男の口からタオルを抜き取った。
「ふ−−−−−ぅ」
長いため息をつき、全身の筋肉がやっと柔らかくなる。
御影は固めていた手と足をどかし、立ち上がった。
楽な形に転がり、地に寝た男に対し、元気付けるように軽く背中を叩いた。
「しばらく、そのままでいろ」
御影は背後の男に一言残し、次の男の所に近寄って行った。

空は紅に染まり、森の中はすでに行動するには不自由な暗さになっていた。
わずかに差し込む赤い光と、空に浮かぶ月からの白い光が、木に岩に不思議な色合い
を出していた。
森の中は夜行性の鳥と昆虫が目を覚まし、静かな音楽を奏でる。
御影は集めてきた木の束に火をつけ、わずかながらの火の元で缶詰を口に運んでいた。
余り味のない、栄養重点の食料が喉を通っていく。
傷の手当が終った3人はいまだに地上に寝ていた。
二人は寝ていたが、一人は数分前に意識が戻ったのを御影は知っている。
先頭にいた男である。
比較的傷が浅かったせいもあるが、リーダーとしての意識がそうさせていたのかもし
れない。
彼らにとって御影は、未だ未知の敵に変わりはしないのだ。
「あんたぁ………」
目を覚ましていた男が、我慢できずに話し出す。
御影は、わずかにスプーンを持っていた手を止めるが、相変わらず口を動かしながら
耳を傾けた。
男は一言いったきり、しばらく沈黙する。
「何者だ?」
御影は最後の一口を口の中につめると、缶を放り投げ、スプーンだけ横のリュックに
戻した。
御影はしばらく男の問に答えようとはしなかった。
ジャングルの夜は長い。
男もしばらく黙って、返事がかえってくるのを待った。
たっぷり5分は過ぎた頃、御影は初めて口を開いた。
「敵さ」
御影は、それだけ言ってまた沈黙してしまった。
「じゃあ、なぜ命を助けた」
男は体を起こし、初めてまともに御影の目を見た。
男の真剣な、何かを問うような瞳に対し、御影の瞳はあくまで優しい、静かなブルー
だった。
「聞きたいことがある」
男は、御影の目に偽りと狂気のないことを確認し、問うた。
「何を?」
御影は、持っていたカップの中のコーヒーを飲み干し、側に置くと初めて男とまとも
に向かい合った。
話す用意のできた御影は、静かに呟いた。
「ファン大佐の事を聞きたい」


第一章 Leaving

「お父さんを捜しに?!」
女子寮館の6階の一室のドアの前で、綾は驚いて声を上げてしまった。
「実は、もうすぐ出発するんだ。少しだけ会ってくれないか?」
榊は親指を立て、エレベーターの方を指さした。
「うっ、うん。ちょっと待って」
綾は急いですぐ後ろにある靴を取り出すと、立ったままはきだした。
ちょっとだけ紐を縛り、軽く爪先を床に当てる。
「行こうか」
「うん………」








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